推薦Ⅰ
昨日同様に先生が入ってくる。
――否
後ろからもう一人黒髪の美少女がいた。
緊張している様子は見当たらない。
かなり小さく見えるが、隣に斎藤先生がいるから相対的に小さく見えるからであって、実際の所平均身長より数センチ小さいぐらいだろう。
その割には愛らしい顔に見えるが許容範囲、いや、むしろそこがプラスになっている。
事前に美少女転校生が来るって知っていてもかなり驚いた。
俺の想像を遥かに上回っていた。
…………………落ち着け、落ち着け、落ち着け。
驚く表現を重ねなくてもいい。一回落ち着くんだ。
・直樹が言っていた転校生が来た
・転校生は美人と言ってたのは真実だった
・担任の顔が若干にやけているのは俺の脳内補正によるものであって決して現実ではないはずだ
ここから出る結果。
………………………………………………………俺には関係なし、対応に変化なし
転校生イベントなんてそれこ昨日やったギャルゲーで十分だし、ありえない。
昨日まではそう思い込んでいたことは天使降臨(段ボールに)によってなくなってしまった。
それでもこの転校生は昨日休みだと思い込んでいた席に座わる予定らしいので俺と全く接点が出来ないため俺向けのイベントではないと判断。
関係ないなら無理矢理頭に入れない。
絶対記憶能力を持っていたとしても脳が圧迫されることはないと聞いたことがあるがそれでもこれは気分の問題だ。
テスト前にこの記憶は失ってもいいからその分漢字を覚えさせてと願うことに似ている子も知れない。
先程寝られなかった分寝てやろうかとも思ったが、先生に目をつけられるのは御免なので真面目に朝学活を受けることにした。
一時間目は学活の授業、二時間目も学活で通常授業は三時間目以降となっている。
学活はただボーっと過ごしていてもちょっと注意されるだけですむ簡単な授業で中学生からの人気はかなり高い。
何もやらないで自由にしていたい俺にとっては通常授業ほど束縛されないため俺にとっても嬉しい話だ。
他人と無理矢理会話させられるという欠点が存在するがいつものようにみんなに優しい俺のままでいればそれほど苦労はしない。
『学活は楽活だ!』とか叫ぶ直樹の気持ちもわかるってものだ。
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴り一旦休憩に入る。
朝学活何も聞いていなかったのでどんな内容か直樹に聞くことにしよう。
「おいマゾ、これからなにやるんだ」
「人をマゾ呼ばわりする奴に教えたくないね」
「直樹これからなにやるんだ」
「委員会決めとか係り決め、一年間の予定の説明だったかな」
「あーなるほど。了解した。つまり俺には関係ない別の世界の出来事が起きるというわけか」
「キミニハソウダロウネ」
「お前もそうだろ。委員会とか入らないだろ。係りなんて適当に決めるし」
「そういえばそうだな~俺もそうだった。でも今回元学級委員の奴がいないからお前が学級委員とかになるかもしれないな」
「断固拒否するし、そうなるならお前に楽しい学園ライフをプレゼントしてやるよ。さいこーだろ」
「いらねーよ!」
「まあそれは仮定の話だし、なるようになるさ」
「…………ああ」
話も終わったから鞄から筆箱を取り出し授業準備を整えた。
キーンコーンカーンコーン
5分ほどたち、チャイムが鳴る。
「じゃあ号令。……っと号令係は決めてなかったか。……じゃあ出席番号1番…相川、学級委員が決まるまで号令やってくれ」
「はい……気を付け……礼」
「「「お願いします」」」
名も知らないクラスメイトの号令で一時間目が始まった。
「じゃあさっきも言ったように委員会決めを始める。最初に学級委員を決めたらその後の議事進行役は学級委員に任せる」
委員会の数は7つ。図書委員、生活委員、放送委員、環境委員、保健委員、新聞委員、学級委員。
生活委員は少し珍しいらしく、風紀委員と似たような役割だ。
去年度は前期だけ生活委員をやっていたが、委員会は小学校よりもはるかに面倒だと知り後期はただの係りをやった。
今回も委員会決めの後に決められるであろう係りのどこかに手を挙げ、楽しく楽な日々を過ごせる。
「学級委員に関してだが立候補制にする。やりたい奴はいるか?」
手が挙がる気配が全くない。
「立候補がいないようだから推薦制にする。推薦での拒みはできないが嫌なら自分より会いそうな人を推薦しろよ。推薦するときは理由も追加してもらう。冷やかしで挙げられるのは困るからな。挙げられた人は推薦した奴を恨むなよ。信頼されていると思い逆に誇れ!……では、誰か推薦はあるか?」
この時点では自分には関係ないと思っていた。
早くもⅠも利用。これから乱用させていただきます。
書いていて学級委員をやっていた日々が頭に浮かびました。
勿論知名度の低いあのころは立候補で内申ねらいでしたね。
多分……。
ではそろそろ気分な暗くなりそうなので今度はⅡをよろしくお願いします。