ギルティ―!
しっかりと全部話した。これで大丈夫なはず。
……なにも考えないで話したな。
やっぱり彼女と俺には頭の回転に差があるようだ。
手を顎にあてなにか考え事をしている。
審議でも考えているのかな。
「……とりあえずお母さんに報告しよ」
「有罪は確定なのかよ!」
「うん…ギルティー!」
そんないきいきとした笑顔で言わないで、さっきの様子と全く違うよ。
そもそも元々有罪なら話を聞かなくてもよかったじゃん。
もうここは言い訳よりもどうやって逃れるかを考えよう。
『流れに身を任せて後は野となれ山となれ』
『話を変え、違う方に意識をもっていかせる』
『強硬突破~脅して何もなかったことにさせよう~』
選択肢が頭をよぎる。
三番には言いたい事がたくさんあるな。
中学生の目標決めのスタイルか!
……今学校の年間目標を考える時期だからか。
去年はなにも考えないで周りにいたやつの目標をパクったけ。
それにしては酷過ぎる。
しかも犯罪すれすれだし自分の犯行を認めているようなものだ。
それだけは絶対にダメだ。
それじゃあ残った二つか。
多分二番目は意味がないと思う。さっきだって聞く気がなかったし。
それに言い訳だって言われたら自分の首をさらに絞めることになるだろう。
一番にするか。
………身をどうやって任せよう?
なにもできないと思った俺は黙秘権の行使に移った。
「なに黙ってるのおにいちゃん」
「……………………」
「認めるの?」
「違う!話した通りだ!疑うならイリスにも話を聞けよ!」
行使の中断は早かった。
取り調べ室に行かされたらカツ丼出てくる前にはきそう。
やっぱり誠実なちょっとズレた青少年の心は汚れてないって。
ゆかりの方がアウトだと思います。
「……それもそうか」
ゆかりは一旦俺への視線を外し隣にいるイリスに向けた。
「おにいちゃんに襲われたのイリスさん?」
「違うわ!」
「被疑者は黙って。あなたに今発言権はありません」
だんだん母さんに似てきたな。
別に検事や弁護士をやっているわけではないが、きついことを言うようになった。
「それでイリスさん。どうですか?」
「なにもされてませんよ。ただお腹が空いたので海斗さんに朝食を作ってもらおうと思っていたのですが、眠くなって海斗さんの隣で寝てしまいました。そしたら急に二人が騒ぎ始めてこうなっていたわけです」
お腹が空いていたことを示そうとイリスは腹に手を当てる。
その姿にゆかりは呆れた表情を浮かべ、
「その前の事は何も覚えていないのですか?」
「……はい。私寝ぼけているときの記憶はあまりないんですよね。でも、海斗さんに何もされていないのは確かです」
「そうですか……それなら仕方ありませんね。おにいちゃん、優しい被害者兼弁護士に感謝してくださいね」
「なんか釈然としないな……まあいいか。じゃあイリスの希望通り朝飯にするからちょっと待ってろ」
色々と言ってやりたかったが時間がないので諦める。
数十分と経ち、リビングのテーブルには朝食が並ぶ。
「先に食べていいぞ。一応母さんにも声を掛けてくる。昨日、一昨日と忙しそうだったから多分いらないって言われるだろうけど」
「は~い」
「わかった」
二人の返事を聞き、俺は母さんの寝室に向かった。
部屋の前まで来て、ノックをする。
「母さん、朝食できたけどどうする?」
「いらない。疲れている人への配慮はないの?いいから寝かせて」
「わかった。いつものようにラップしておくから気が向いた時にでも食べて」
やっぱいらなかったか。
リビングに戻り朝食を食べ終えた俺は食休みを挟んだのち学校に向かった。
信用ないな海斗君。
こんな素晴らしい状況なら俺は十年の懲役でもいいぜ。
むしろ、懲役されてやるからお願いします。
まだ、俺のスピードは止まらない。