弁明
「おにいちゃんちょっといい?」
「お兄様は大変によろしくない状態にあります」
言葉からもわかるように相当焦っている。
イリスをどうしよう。クローゼットに行かせるほど時間は残されていないようだ。
「おにいちゃん開けていい」
「いや、ダメだ」
「……じゃあ出てきて」
「それもダメだ」
「うっ……なんか隠してるのお兄ちゃん。一旦入るよ」
隠しているかもしれないなら入っていいものなのかな妹よ。
そんなことよりもどうすればいい?
意味もなく左右を見渡してみて――
よし、布団に被せてやり過ごそう。
俺には布団に入れと言う暇もなかったので、無理矢理ふとんをかぶせようと迫った。
しかし、俺の咄嗟の判断は逆に自分の首を絞めることになった。
「何を隠してるのおにいちゃん。観念して――」
『観念』ぐらいで気が付いたのだろう。
俺もゆかりも一瞬息をするのを忘れていた。
呼吸を整えた俺たちには重い空気が圧し掛かる。
この沈黙を破ったのは作り出した張本人だった。
「ゆかりさんどうしたのですか」
「い、いや、ちょっとおにいちゃんに用事があったので」
「あ、そ、そうか。…それで、何の用事だ?今すぐ聞かなきゃならないならここでもいいが一旦下に降りないか」
「あ、う、うん」
普通だったら怒鳴られていたりしただろう。
でもこの空気の中そんな事はゆかりにはできなかったようだ。
小5がこの状況にしっかりと対処できた方が問題だと思うが。
俺の提案の通り俺たち3人はリビングに降りた。
「それで、用事はなんだ。ゆかりが俺より早く起きてるのは珍しいがそれと関係あるのか?」
「……関係はないよ。ただ早く目覚めて、ふと気になったことがあったから、おにいちゃんはもう起きているだろうから聞こうとと思っただけ」
「そ、そうか。それで、気になったことはなんだ?」
「今はそっちよりも、なんでおにいちゃんの部屋にイリスさんがいて、パジャマのボタンががかなり開いていて、ふたりともベットの上に見つめ合うような形でいたか、という方が気になるな」
せっかく話題を変えたのにまた戻してきやがった。
ところどころ区切って読んいるのが怒っているように感じた。
いや、絶対怒ってるし、誤解してるだろうな。
口調だけでなく、心は顔にもにじみ出ていた。
笑っているように見えるが、目が笑っていないというやつなのだろう。
主人公が恐いとか言っていた気持ちがよく伝わってきた。
「えっと~その~…それはですね」
言葉を濁すしかなかった。
「おにいちゃん、はっきり言いて下さい」
「は、はい」
もう後には引けないな。まだ考えがまとまっていに………けど
やってやる!喋りながらでも考えろ!
「俺はイリスと寝てはいない。俺は知っている情報をすべて開示する意思がある!」
「何言ってるの、おにいちゃん」
ゆかりに可哀想な人を見る目で見られた。
可笑しいな。巨人のいる世界では通じたのに。
それでもやることに変わりわない。
「俺が朝起きたらイリスが俺のベットにいた」
「……それで」
「パジャマのボタンを留めて出ていけと言ったが寝ぼけていて言う事を聞かなかった」
「ふ~ん……それで」
「無理矢理追い出そうと思ったところにゆかりが来たから慌てて布団をかぶせてやり過ごそうとした」
「……終わり?」
「ああ……以上だ」
しっかりと全部話した。これで大丈夫なはず。
さあ前回の反省を生かしました。
ペースが速いという感想は受け付けません。
ある程度は形になっているので、それまで出してからのんびりやります。
まだ、先の話ですが。