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第5話 アンソニー

 皆さんどうも。平山です。

今、ソフィアと一緒に家電量販店に来ています。

最近、暑くなりましたね〜。

外に出ると太陽の直射日光に熱風のビル風、アスファルトからの照り返しがキツイです。

お店の中は逆に寒いくらいです。

お店のスタッフ全員防寒着来てます…。

店内にあった温度計に目をやると…〈−2℃〉。

馬鹿だよ!いくら外が暑いからって店内を氷点下にするなんて聞いた事が無いよ!

しかも、お客さん歯をガタガタ言わせながらクーラーとか見てるし。


 「こ…これは、い…いくらなん…ですか?」

 「こちらの商品は自動清掃機能が付いておりますので、8万円ですね」


 スタッフはにこやかに営業スマイルを振舞っているけど、スタッフは防寒着着用。

客は半袖にハーフパンツ、サンダルという格好だ。

どの国に行ってもこんなアンバランスな接客の様子は無いよな…。


俺らはというと、淡い暖色系のオーラに包まれていくらか寒さを凌げている。

これがソフィアの魔法の力だそうだ。

大学の時といい、なんか凄い違和感と好奇心が沸いてくる。

それよりも、周りの反応が気になったけど、ソフィア曰く、

「外側からは普通にしか見えないんですよ〜」らしい。


 「孝宏さん〜…。寒いですぅ…」

 「ガマンだガマン。お前もうまいご飯が食いたいだろ」

 「食べたいですけど…。ぅぅ…」


こりゃソフィアの方が先に参ってしまいそうだな。

ちゃっちゃと炊飯器を買って帰るか。


数分後、俺らはある事に気付いた。

実はここ……クーラー専門店だった!

地上5階あるスペースが全部クーラーもしくは扇風機しか置いてなかった。

骨折り損じゃん。


クレイジー店から戻った俺たちは街頭でもらった団扇をパタパタ仰ぎながら

日本一萎える街『肋原』(通称:アバラ)を散策した。


 とある兎耳ナースのコスプレをした…お爺ちゃん。

 メイド服を着た…お婆ちゃん。

 ゴスロリな格好をした…今にもはちきれそうな女性。

 路上では街頭プロレスが行われ、そのリングの周りには血溜まりが

できている。


 …普通に見てて怖いよ。

しかも、この街頭プロレスにソフィアも出ると言い出したからもう大変!


 「私もこれにでたいですぅ〜!」

 「いや…普通に無理だろ…」

 「こんなキモい場所に連れて来られてフラストレーション溜まりまくりです!」


 フラストレーションってあーた…。

俺の制止を振り切ってリングに上がるソフィア。

その第一声が、


 「ヨロシクお願いしま〜す♪てへっ☆」


なんて言ったもんだから回りの男どもは狂喜乱舞。

中にはウェーブまでしてくる連中まで出てきた。

それにしても、猫被るとこんなにも可愛くなるなんて…。


…はっ!


俺は今何を考えていたんだ!


 「お、男のリングに女が上がってくるんじゃねぇ!!」


対戦相手(?)は酷くご立腹のようで…。

ソフィアはそんな事お構いなしで男どもに愛嬌たっぷりの笑顔を振り撒いていた。

あ、プロレスラーの肩がプルプル震えてる。


 「チェストォォォォ!!」


え!?この人鹿児島生まれ!?

何て考えているとレスラーは後ろのロープをバネの様に使いソフィアに突進してくる!

まずい!あいつはまだ男どもに手を振っている最中だ!


 「ソフィア!危ない!」


そう言いきる前にソフィアはタンッ!と後ろへ飛んだ。

背後を取られたレスラーは強張った表情だ。

何があったの?

リングの真横へ場所を変える。

そこには…。


 「そんな攻撃が我輩に通用すると思ったか。若造が!身動ぎ一つでもすればこの《アンソニー》で蜂の巣にするぞ」


レスラーにガトリングを突きつけているソフィアがいました。

っちゅうか、プロレスに銃器は反則だろ!

それに、そのガトリングって名前あったの!?


死の宣告を受けたレスラーはその場に立ったまま失神して失禁していた。


 「はぁ〜、少しスッキリしました♪」


だろうね…。

あそこまですれば気分もスッキリするだろうさ…。


 「そのガトリングってアンソニーって言うんだな」

 「はいっ!知り合って間もないですけど、私の一番信頼できる相棒です♪ね、アンソニー」


そう言うとアンソニーに頬擦りをする。


『…少しくすぐったいのだが…』


…今の声誰?


何かドラゴン○ールの○ルみたいな声したような気が…。


 「何言ってるんですか!私とあなたの仲でしょう?。いいじゃないですか、これくらい♪」

『恥しいのだが…』

 「…お前、さっきから何独り言言ってるんだ?」


声の出所が分からない…。

こいつどっからこんな声出してるんだ?


 「え?一人じゃないですけど?」


と言われる。

俺とソフィアの他に誰がいる?


 「アンソニー、ご挨拶しなさい」

『平山孝宏殿。お初にお目にかかる。我はアンソニー。我が主の使い魔也』


ガトリングが喋ったぁぁぁぁ!

……って、何となく予想は付いたさ。

でも、あまりにもベタなので口に出すのは即却下したけど。


 「所で、さっき《私の一番信頼できる相棒》って言ったよな?じゃあ俺は?」


ちょっと気になったので聴いてみる。


 「ん〜…。下僕の中では一番信用しますよ?」


…俺はガトリング以下なのですか?ソフィアさん…。


 そして今日からまた新たな居候が増えました…。

誰か主役変わってくんない?

もう疲れたよ…。パ(以下自主規制)。



ガタンゴトン…。

夕暮れ時の電車。結構風情があります。

夕日が窓から差し込み、電車の照明なんていらないくらい車内は明るく、静かです。

はぁ…。何か黄昏たい気分になってきちゃう。

俺たちは今、アバラから家に帰る途中です。


ソフィアは俺の肩に寄りかかってお休み中。

新たに居候になったアンソニーは無口なところから、機能を停止しているのだろう。


 ふと横目でソフィアを見る。

くぅくぅと寝息を立てていた。

こうしていれば可愛いのになぁ…。

シャンプーの匂いもまた…。

…俺は変質者か!


帰って、夕食の買出しに行って、それから…。


そんな事を考えている内に俺の意識は睡魔に誘われ、深い闇へと落ちていった。

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