連載になるかもしれない、ネタ。6
早いもので、第6弾。
ホントの単発の思いつき。
ボクの姉は超チート。
容姿端麗、頭脳明晰、スポーツ万能。才色兼備を実体化したような人。
でも、どこかおかしい。
そんな姉の弟であるボクはゴクゴク一般人。
十人並みの容姿と、中の上程度の頭脳。飛び抜けて良いわけではない運動神経。
そんなボクが、なぜか姉と一緒に異世界に召還されてしまった!!
いつものように、姉を教室まで迎えに行く。
(迎えに行かないと、いつまでたっても出てこない。ってか、人の輪から抜け出せない。)
先にボクの下駄箱で靴を取り、続いて姉の下駄箱へ。
(少しでも離れると、いつの間にか居なくなる。ってか、連れ去られる。)
手を繋いで校門までの道を歩く。
(繋いでないと、まともに歩けない。ってか、話しかけてくる人間に進行を妨害される。)
何が悲しくて姉と仲良く・・・などと思ってはいけない。
姉を放置したら、確実に帰ってこない。
犯罪とかに巻き込まれるならまだいい。
この姉は、自ら犯罪を無意識に巻き起こす要素を持っている。
野放しにしてはいけない。絶対に。
取り留めの無い会話をしつつ、自宅へ向かう。
犯罪無意識誘発人の姉のため、学校は徒歩圏内。これ、大切。
よし、あの角を曲がったら自宅!! と気を抜いたのが敗因か。
角を曲がったら、まばゆい光に包まれた。
――――――暗転。
「この膨大な魔力量・・・ あなたが勇者様ですね!!」
白いローブに身を包んだ、声から判断するにまだ若いであろう男が。
がしぃっと姉の肩を掴んでいたので。
「ぐほあ?!」
取り敢えず蹴りを一発お見舞いし、姉を保護。
きょとん、としている何とも愛らしい姉の頭を撫でておいて。
「気安く触れないで頂きたい。アナタは犯罪者になりたいのですか? そろはそうと、ココはどこでアナタは誰で一体どういった経由でボクたちはここに居るのか納得できるように詳細かつ簡潔にご説明いただきたいのですが」
ボクたちをグルリと囲む、怪しい団体に声をかけた。
もちろん、姉はボクが大切に腕に囲ってますよ、当然です。
状況が判断できない状態でこの姉を野放しにはできません。
「え、あ、あの、・・・・あなたは?」
さっきお見舞いした蹴りがまだ効いているのか、若干前屈みの男が声を出す。
え? どこを蹴ったかって? 一発で抵抗する気力が無くなる所ですよ。男の身体は便利ですね。
「問い質しているのはボクです。言葉は通じていると判断したのですが、通じていなかったようですね。それとも、理解ができなかったのでしょうか。もう一度言います。ココはどこでアナタは誰で一体どういった経由でボクたちはここに居るのか納得できるように詳細かつ簡潔にご説明いただきたいのですが」
これだけ解り易く丁寧に尋ねているというのに、どうしてわからないのか。
こっちが理解に苦しみますね。
いい加減に何か進展させないと、この姉がそろそろ我慢の限界なのですが。
「も、申し訳ございません勇者様。わたしはこの国の大神殿の大神官を務め―――」
「簡潔にとお願いしたはずですが」
「え、あ・・・」
「ふぅ。もういいです。アナタとの言語交流は諦めました。言葉は通じますね? ボクの質問にだけ簡潔に答えて下さい。余計なことはしゃべらなくて結構です。いいですね?」
時間の無駄は勘弁願いたいのです。
今にもこの姉が動き出しそうなのですから。
ボクの言葉にコクコク頷く白ローブの男。
初めからこうすれば良かったですね。
「ココ、はどこですか?」
「大神殿の魔法陣の間です!」
そういえば、オクたちの座っている石の床の上には、何やら描いてありますね。
「アナタは誰ですか?」
「大神官です!」
どちらかと言えば、魔導師のように見受けられますが、人を見かけで判断してはいけないでしょう。
「どうしてボクたちはココに居るのですか?」
「勇者様召還を行ったからです!」
王道展開ですね。突っ込む気力も起きないのですが。
「何のためにですか?」
「魔王を討伐していただくためです!」
王道第二段ですね。しかし、これは突っ込むべきでしょう。
「・・・魔王、ですか?」
「魔王です!」
言い切られましたが。
「討伐・・・要するに、殺すための人材が勇者、という認識で間違いありませんか?」
「そうです!! 極悪非道のあの魔王を殺していただきたいのです!!」
力説されました。回避ルートは用意されているんでしょうか?
「その勇者、というのは、ボクたち・・・いえ、この方で間違いは無いのですか?」
「そうです!! この魔力量・・・ 間違いありません!!」
確認したのはボクですが、あんまり見ないで頂けますかね。姉が減ります。
「何かの間違いでしょう。この方はただの女子高生でボクの姉です。勇者などではありません」
「いえ、この方こそ―――」
ただでさえ誘拐などという犯罪なのですから。
これに殺人教唆などというのを付加しないでいただきたいのですが。
「ねえ、おうちゃん。どうせなら私、勇者じゃなくて魔王がいい」
穏便に話し合いでの解決を図っていたボクの努力を無駄にする声が、腕の中から発せられた。
「勇者様?!」
白ローブの男もビックリだ。
「うん、決めた。私、魔王になる。だから、勇者はおうちゃんがやってね」
一人で何かを納得し、そのうえ決意し、ニコーと見上げてくる姉は可愛らしい。
しかし。
「そうしたら、ボクが姉さんと戦うことになるよ?」
「え、イヤ。おうちゃんは、私と一緒じゃなきゃね、ダメ」
「勇者様ーーー!!」
コテン、と首をかしげる愛らしすぎる姉と。
大絶叫の白ローブの男。
そして、すっかり忘れていたが、周りを囲む怪しい集団。
犯罪無意識誘発人の姉の被害を最小限に抑えるために、ボクには一体何が出来るのか。
世間様より斜め上(下?)いくチートな姉と、しっかり者の普通の弟。
これは、そんな弟の苦労話・・・かもしれない。
どうでしょう?
連載、いけそう??