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VAST POSSIBILITY IN TIME  作者: freezn
VAST POSSIBILITY IN TIME — PART ONE The Purpose Beyond Creation Chapter 1
6/10

時間の大きな可能性 -- パート 5

孤独に歩む君主


(The Monarch Who Walks Alone)


「すべての到来が、世界を揺るがすわけではない。

 ある到来は――沈黙に飲み込まれる。

 その沈黙が砕ける、その瞬間まで。」


世界は、彼の足元で温かかった。


ミランは、どの地図にも記されていない浜辺に立っていた。

空は紫と金に溶け合い、

海は何ひとつ映さない。


星はない。

雲もない。

あるのは、呼吸だけ。


ミランが一度瞬きをすると、声が応えた。


【SYSTEM 再統合完了】


「マスター。

 これはもはや世界システムの断片ではありません。

 あなたの存在によって織られた、唯一の構造体です。

 従う命令系統は一つのみ――あなた。」


ミランは静かに息を吐く。


それはコードではなかった。

“認識”だった。


「現在地:母なる揺り籠。

 あなたが浜辺と認識している場所は、

 この世界で最も古い基盤部です。


 神は侵入できない。

 怪物も侵入できない。

 ――しかし、あなたは別。


 世界そのものが、あなたの侵入を許可したからです。」


ミランは足元を見る。


砂は、かすかに黄金の脈を打っていた。

石の中を流れる呼吸のように。


【擬態推奨】


「ドラコノイド形態は現地社会と非互換。

 人型への復帰を推奨します。」


「……了解。」


ミランは胸の前で腕を交差させた。


翼が内側へと折り畳まれる。

一枚一枚の羽がルーンへと変わり、消える。


尻尾は影の中へ溶ける。


光が内側へと収束した。


残ったのは――人の形。


だが、人でありながら、重力を持つ存在。


静止した銀河のような瞳。

存在しない風に揺れる黒髪。

重力そのものが織ったかのようなローブ。


ミランは囁いた。


「……クリムゾン。」


空が割れた。


赤い火の軌跡。


上空から、深紅の輝きが降り注ぐ。


獣の姿ではない。

忠誠の象徴としての顕現。


・単眼の長剣、深紅の刃

・裾に燃える羽を宿す外套

・手首を周回する暗鱗合金の双環

・低く唸る竜鍛ブーツ


「クリムゾン:生ける遺物へ完全変換完了。」

「契約確立。服従は絶対。」


彼の傍らに、球体が出現する。


黒金属。

リンゴほどの大きさ。

核の周囲を回る発光リング。


それは浮かび、語った。


「システム・インターフェース再起動。

 浮遊補助ユニット起動。

 音声通信設定完了。

 マスター存在安定。」


「……いい。」


ミランは遠くを見る。


大陸が、待っている。


名はない。

あるのは目的だけ。


「試練開始。

 マスター――

 人と機械と神の大地へ、ようこそ。」


第44章:空の下の都市


(The City Beneath the Sky)


内陸へ進むにつれ、砂は硬い地面へと変わった。


温かい風が、鉱物と塩、

そして自然ではない“蒸気”の匂いを運ぶ。


遠くで低い唸り。

――エンジンの呼吸。


ミランは小さな砂丘を越えた。


そして、人類大陸を初めて目にする。


天を突く銀の塔。

縁を走る淡い発光ライン。

空中を渡る飛空艇。

光の航跡。


静かで、整然としている。


【システム通知】

統合人類圏首都プライム・ネクサス外縁圏に侵入。

警告:大陸全域が受動的神監視下。


ミランは無言で歩く。


人々は武器を持たない。

だが――完全に管理されている。


【システム更新】

平均寿命:480年

技術:AI・生体工学・魔法完全統合

現在:未登録。未検出。


「……秩序の世界だ。」


球体が傾く。


「表層は平穏。

 下層は監視。」


ミランは金属道路に足を踏み出した。


君主ではない。

まだ。


ただの旅人として。

偽りの信仰、忘れられた祝福


(A False Faith, A Forgotten Blessing)


ミランは、外縁神殿の張り出した屋根の下に静かに立っていた。


透明なエネルギードーム越しに、雨が瞬いている。


彼の服装は質素だった。

色褪せたローブ。

潮風と砂に汚れた裾。

そして――


竜の支配権によって作り変えられた顔は、

“どこにでもいる若者”のそれだった。


目立たない。

覚えにくい。

完璧な偽装。


彼の肩の傍らで、淡い青色の球体が静かに浮かぶ。


【システム助言】

人類社会は生体識別を最優先とする。

顔紋、魂波、オーラ、AI連結記録が常時照合される。

身分登録が必須。


「……なら、作る。」


ミランは小さく呟いた。


【世界システム同期中……】


解決策:神恩試練への参加。

孤児および平民向け祝福儀式。

完了すれば、神的登録および法的身分を獲得。


ミランは頷く。


「道を示せ。」


試練場は白亜の尖塔神殿だった。


浮遊するルーン。

ローブを纏った司祭ボット。

監督するエルフ神官。


列に並ぶ者のほとんどは若者。


孤児。

放浪者。

希望を求める者。


“神に選ばれる”ことを願って。


ミランは無言で歩き、

神性走査室へ入る。


名もない。

血統もない。

過去もない。


入口の司祭が眉をひそめる。


「……また浮浪者か?」


補佐官が肩をすくめる。


「無害そうだ。」


祭壇が脈動する。


金色の回路が広がる。


【神性署名検索開始……】


……


……


【警告:権能共鳴過剰】


【自動代替照合】


照合先:堕落神群


・失われし炎の祝福

・誓約破りの視界

・灰の鎖


神殿の空気が凍りついた。


ミランの瞳が、一瞬だけ紫炎に揺れる。


司祭たちが後退する。


「な……堕落神だと……!?」


大神官が杖を握りしめる。


「あり得ん……

 数百年、目覚めていないはずだ……」


周囲で囁き声。


「呪われている……」

「災厄を呼ぶ……」

「成長する前に殺すべきだ……」


【システム補正】

堕落祝福は犯罪ではない。

世界システム判定:中立。

試練継続可能。


教皇が手を上げる。


「誰も触れるな。

 神法は“すべての道は等しく試される”と定めている。」


彼はミランを見つめた。


「……お前は、見た目ほど単純ではないな。」


ミランは何も答えない。


裏口へと案内される。


薄暗い回廊。

古い壁画。

忘れられた偶像。


半エルフの神官と、彼女の師が荷袋を差し出した。


中には――


・少量のクレジット

・簡易身分スクロール

・フード付きローブ


「行きなさい。」

「すぐ噂になる。」


「内側区域へ転送する。

 そこでなら追跡されにくい。」


【システム確認】

両名:人間・エルフ混血

動機:異端者への共感


光が包む。


瞬き一つで――


ミランは高台に立っていた。


眼下に広がるのは、

人類大陸の心臓部。


空列車。

花弁のような高塔。

浮遊公園。

ドローン群。

空に瞬く聖衛星。


美しかった。


【システム通知】

中央ネクサス到達。

法的身分:人類。


ミランは静かに息を吐く。


「……これが、神が愛した世界か。」


球体が小さく鳴る。


「マスター。

 あなたはまだ敵ではありません。

 しかし――すでに“理解不能”です。」


ミランは答えない。


ただ都市へ歩き出す。


名を持つ亡霊として。


誰にも書かれていない未来へ向かって。

光の名


(The Name of Light)


転送門の影から都市の光の中へ踏み出した瞬間、

空気がわずかに揺らいだ。


ミランの姿は再び整えられていた。


最初に選んだ“人間の外殻”。


落ち着いた暗色の瞳。

整った銀黒の髪。

群衆に紛れ込める顔立ち。


身に纏うマントは自然に揺れながらも、

竜由来の魔力と世界編成糸で織られている。


頭上では、金属の果実のような球体が静かに浮かんでいた。


ミランがそれを見るまで、沈黙していた。


「……お前は、何も求めずに働いてきたな。」


球体が淡く青く光る。


「だから――今度は俺が与える。」


球体が静止する。


ミランの声は、凪いだ水面のように穏やかだった。


「お前の名は――ルクシオン。」


「可能性の傍らを歩く光。」


一拍。


空間の奥から、囁きのような応答。


【認証:完了】

【システム署名固定:LUXION】

【感情層ロード:認識……感謝】


ミランの表情は変わらない。


だが、瞳の奥がわずかに和らいだ。


「……ありがとう、ルクシオン。」


ルクシオンは一回転し、

いつもの機械的な口調で――しかし微かな温度を帯びて答える。


【マスター。通貨の確保を推奨します。

 本世界は交換経済を基盤としています。】


「……金か。」


ミランは自分の手を見る。


空っぽだった。


混合理念の都市


(The City of Blended Ideals)


空を走る浮遊高速路。


光の矢のような無音車両。


ガラスの花弁のように重なる歩道。


魔力を帯びた樹木の根元を流れるエネルギー河。


ローブ姿と発光スーツの人々。


子供は浮遊書を追いかけ、

保護者は水晶通信で会話する。


矛盾が存在しない。


魔法と機械が同じ言語を話す世界。


ミランは都市を見渡し――


懐かしさに似た感覚を覚えた。


畏怖ではない。


理解。


【観測:マスターは静かです】


「……彼らは、美しいものを作った。」


羨望はない。


敬意だけがあった。


「……信仰と論理が、殺し合わずに共存する場所。」


ミランは一歩踏み出す。


都市は、音もなく彼を受け入れた。


世界は彼を見ている。


そして――


彼は、初めて“この世界の一部”になった。

歓迎なき門


(The Gate Without Welcome)


都市はミランを拒まなかった。


だが――


歓迎もしなかった。


行政は冷酷なまでに公平だった。


「申請は処理できません。」

「身分記録がありません。」

「国籍データなし。」

「基礎教育履歴なし。」

「……外縁出身ですか?」


丁寧な口調の中に、確かな疑念。


孤児というだけで、

大学にも、研究機関にも、

国家事業にも入れない。


ガラスの塔は開かれているのに、

すべての端末が同じ言葉を表示する。


ACCESS DENIED


ミランは怒らなかった。


ただ観察した。


労働という選択


(The Choice of Labor)


公共ベンチに座るミランの肩の後ろで、ルクシオンが静かに浮かぶ。


「……静かだな。」


【分析:社会的上昇障壁は合理的です】

【代替経路を提示可能】


「例えば?」


【魔導労働部門は実技試験を採用】

【一部学院は労働併用制度あり】


ミランの指がわずかに動く。


「……必要な能力を示せばいいのか。」


【肯定】


彼は立ち上がる。


「なら、やってみる。」


アルカナム学院・労働門


(Worker’s Gate of the Arcanum Institute)


正門ではない。


白き塔が天へ伸びる、

大陸最高峰の魔導学院。


ミランは正面階段を無視した。


向かったのは、下層の労働用入口。


装飾なし。

静かな水晶認証盤だけ。


掲示板にはこう書かれている。


「非常勤志願者:才能を示すか、雑務に従事せよ」


ミランは一歩踏み出す。


認められるためではない。


学ぶため。


そして――


静かに、必然的に、

上へ行くために。


起こるはずのない試験結果


(The Test That Shouldn’t Have Been Possible)


労働受付ホール。


簡素な床。

水晶端末。

沈黙の列。


試験官が退屈そうに言う。


「次。」


ミランが前へ出る。


「名前。」


「ミラン。」


「出身。」


「……孤児。」


溜息。


「魔力適性試験。水晶に触れろ。」


ミランが手を置いた瞬間――


水晶が一度光り、


二度光り、


そして――


爆発的に発光した。


朝日が室内で裂けたかのような閃光。


試験官が後退する。


「な、何だこれは――!?」


表示が次々に出る。


元素適性:ALL

魔力共鳴:MAXIMUM

隠蔽特性:未分類

権能署名:FALLEN

権能強度:HIGH

危険度:未確定


沈黙。


そして囁き。


「全属性……?」

「あり得ない……」

「堕神の刻印だと……?」

「契約者は早死にするはずだ……」

「いや、狂う……」


空気が変わる。


驚愕から、恐怖へ。


恐怖から、偏見へ。


「排除すべきだ。」

「追放を――」

「成長する前に――」


ミランは動じない。


無表情。


静かな威厳。


それが余計に人々を怯えさせる。


【敵意上昇検知:非合理的】


試験官は震えながら通達する。


「評議会へ……」


助けられぬ評議の眼


(Council Eyes That Cannot Help)


水晶壁越しに七名の長老が観察する。


「大魔導士級の質だ……」

「英雄候補を超える……」

「だが堕神刻印がある……」


灰のような言葉が落ちる。


「法律が禁じている。」

「不安定化したら?」

「神々の怒りを買えば?」


結論は一つ。


「監視はする。

 だが、公式支援は不可。」


可能性は――殺された。


美しき顔、危うき存在


(A Beautiful Face, A Dangerous Aura)


彼は美しかった。


柔らかくはない。


だが抗えない存在感。


静かな炎のよう。


その気配は重く、優しい。


世界そのものが凝縮したかのような圧。


若い評議員が囁く。


「……創造者級では?」


誰も答えない。


だが――


その疑念は消えなかった。


影の観測者


(A Shadow Observes)


外庭のバルコニー。


黒髪の女性が手すりに寄りかかる。


銀のバンド。


魔導保安部の徽章。


「記録なし。

 全適性。

 堕神刻印。」


彼女は微笑む。


「……面白い。」


【高位観測者検知】


「敵対予定はない。」


ミランは振り返らず言った。


配属 ― 魔導機装工学部


(Assignment — Magical Device Engineering Unit)


労働調整官はミランを一瞥し、

信じ難い評価表へ視線を落とした。


「……お前は魔術師にはできん。」


ミランは眉を上げる。


「なぜですか?」


「堕神刻印を持つ者は、軍事魔術・研究魔術・神聖魔術への配属が法的に禁止されている。

 許されるのは中立部門のみだ。」


水晶端末を操作する。


「……魔導機装工学部なら空きがある。」


ミランは首を傾げる。


「工学?」


「魔石処理装置、呪核、艦艇エンジン、付呪兵装――

 “機械が魔法を扱う場所”だ。

 神々は工業には干渉しない。」


ルクシオンが微かに振動する。


【マスターの目的と一致】


ミランは頷く。


「受けます。」


手首に発光する刻印が押される。


「工学部B-12班。

 夜明けに集合。」


工房への第一歩


(First Steps Into the Workshop)


巨大な空間。


浮遊コンベア。

自動組立アーム。

太陽のように輝くマナ炉。

神経接続するサイボーグ魔術師。


ミランは観察する。


「……この世界は機械に依存している。」


【訂正】

【物理作業は機械】

【魔法は意識】


「……脳が保存されるから人は長命か。」


【肯定】


ミランは静かに歩く。


「興味深い。」


工房の仲間


(Meeting the Workshop Crew)


「おい新人!」


背の低いドワーフが手を振る。


分厚い腕。

銀輪の髭。


「バルク・アイアンウィーブだ。

 お前が例の孤児だな?」


「はい。」


「危険な組み合わせだな。

 だがドワーフは腕で判断する。」


ミランは一度瞬く。


「……理解しました。」


ドワーフは豪快に笑った。


人類大陸の真実


(A Truth About the Human Continent)


「ここには魔石がない。」


ミランは足を止める。


「……無い?」


「ゼロだ。

 この大陸の魔力は“竜の血流”から来る。」


ミランは無言。


「この星は竜だ。」


ルクシオンが補足。


【惑星創造意識=竜】


バルクは誇らしげに頷く。


「人類は“脳”に住んでる。」


なぜドワーフが必要か


(Why Dwarves Are Needed)


「魔力は機械を腐食させる。」


「魔法の錆か。」


「その通り!」


マナ耐性合金。


人類とドワーフの分業。


暴れる竜王の噂


(News of a Rampaging Monarch)


「竜王がまた暴れた。」


ミランは一瞬だけ硬直。


【父の怒り記録:継続中】


「……知られる必要はない。」


最初の任務


(The First Task)


ハイブリッド作業ゴーレム。


異常マナ密度。


「爆発するな。」


ミランは手を伸ばす。


そして――


BOOM


暴走。


ミランは歩く。


赤光。


「クリムゾン。部分解放。」


一閃。


ゴーレムは二つに分かれ、沈黙した。


静寂。


バルクの顎が落ちる。


「……二十トンを……?」


監督官の到着


(The Supervisor Arrives)


「誰がやった?」


ルメリアン・アストラ教授。


「A-01特別工学部へ配属。」


絶句。

静かな承認


(Reactions and Quiet Acknowledgment)


バルクはミランの肩を掴んだ。


「おい坊主!

 初日で九割の職員を追い抜いたぞ!」


「……被害を防いだだけです。」


「半分の工房が消し飛ぶのを止めたんだ!」


周囲のドワーフたちが囁く。


「人間じゃない……」

「剣が……生きてた……」


ルクシオンが淡く光る。


【公的スキルセット確立:精密魔導工学戦闘】


ミランは頷く。


「それでいい。」


バルコニーにて


(Alone on the Balcony)


夜。


鋼鉄の塔群。


流れる光の河。


ミランはガラス越しに自分を見る。


人の顔。


ルクシオンが囁く。


【存在がこの地の魔力を安定化】


「……クロノアは、今も修練中だろうな。」


【霜界より微弱共鳴:想念】


ミランは目を閉じる。


「……試練を早く終わらせよう。」


景色のある部屋


(A Room With a View)


工学部の者たちが金を出し合い、宿を取った。


高層ガラスタワー。


川を見下ろす部屋。


受付が頭を下げる。


「47-F号室。工学部一同より。」


ミランは頷く。


ルクシオンの警告


(A Warning From Luxion)


【マスター。

 あなたは純魔力を放出しています】


機械が不安定になる映像。


「……抑制器が必要だ。」


【肯定】


「明日だ。」


人類世界の朝


(Morning in the Human World)


簡素な朝食。


学生。


サイボーグ。


祈る司祭。


「……神を愛する世界だ。」


A-01へ


(Return to Division A-01)


検問。


承認。


二人の研究者。


セリーヌ・ヴェイルハート。

イヴェン・クロス。


「評価担当だ。」


「剣振り回すなよ。」


最初の任務


(The First Mission)


巡回艇のコア異常。


ミランは頷く。


だが――


【警告:隠密観測】


「……教会か。」


停止した飛空艇


(The Stalled Airship)


コアはミランに同調。


触れずに安定。


「……完了。」


セリーヌは凍りつく。


セリーヌの疑念


(Serene's Suspicion)


「堕神魔力じゃない……澄んでる。」


ミランは答えない。


影の聖職者


(The Undercover Priest)


青年。


イオン。


【教会・浄化部門】


ルクシオンの警告


(Second Warning)


【浄化試験が承認された】


ミランは静かに言う。


「……受けよう。」


浄化の間


(The Purification Chamber)


神圧。


円陣。


ミランは立つ。


光は消える。


円陣が砕ける。


イオンは膝をつく。


「……神より上……」


ミランは答えない。


クロノアの安堵


(Chronoa Reacts)


霜界。


「……ミランは無事。」



(A Name Spreads Like a Quiet Fire)


「円陣を壊した。」


「無傷だ。」


セリーヌの問い


(Serene Confronts Him)


「危険?」


「いいえ。」


「……信じる。」


AIの観測


(When the AI Notices)


【未知オーラ】


【観測開始】


銀髪の少女


(The Girl With Mechanical Eyes)


アリ。


「友達になれる?」


「……構わない。」


マナ・ブラックアウト


(Mana Blackout)


都市停止。


原因:ミラン。


抑制。


復旧。


古きプロトコル


(An Ancient Program Stirs)


【DRAGON RESPONSE PROTOCOL 起動】


最初の機体


(The First Machine Arrives)


古代機械出現。


衝突


(The Clash of Eras)


ミラン。


一刀。


沈黙。


召喚


(The Summoning of a Monarch)


評議会。


「私は王ではない。」


「私は“君主”だ。」


最後の瞬間


(Final Moment)


若き竜殺し候補が入場。


クリムゾンが唸る。

竜殺しの名を持つ者


(The One Called Dragon-Slayer)


扉が開いた瞬間、空気が変わった。


重くはない。

だが鋭い。


まるで刃の背で喉元を撫でられるような、

静かな殺意。


堂内へ歩み入ったのは、一人の青年。


白銀の鎧。

聖紋が刻まれた外套。

背には、神鋼で鍛えられた大剣。


その瞳は――冷静だった。


恐怖も、傲慢もない。


ただ使命。


評議会がざわめく。


「神の選定者……」

「竜殺し候補……」

「対竜権能保持者……」


青年は中央へ進み、

ミランと真正面に立つ。


クリムゾンが低く唸る。


それは初めてだった。


ミランは僅かに目を細める。


「……敵意か?」


青年は首を振る。


「違う。」


声は落ち着いている。


「私は役割だ。」


沈黙。


「名は?」


「アストレイン。」


彼は大剣を床に立てた。


「対竜特化権能《竜断の聖域》保持者。

 竜種の権威を無効化する結界を展開できる。」


若き評議員が安堵の息を漏らす。


「これで対抗できる……!」


ミランは無表情のまま問う。


「……試すか?」


アストレインは一瞬だけ迷った。


だが頷く。


「任務だ。」


竜断の聖域


(Sanctuary of Dragon Severance)


アストレインが片手を掲げる。


光が広がる。


堂内の床に、巨大な円環陣が展開される。


神聖な幾何学。


竜族の権威を削ぐために設計された、

古代対抗術式。


評議会の一部が後退する。


「展開確認……!」


結界がミランを包む。


圧力が変わる。


竜としての権威を削ぎ落とす構造。


クリムゾンが震える。


だが――


ミランは立ったままだった。


微動だにしない。


ルクシオンが解析する。


【対竜権威減衰場:作動中】

【マスターへの影響:0.03%】


アストレインの瞳が揺れる。


「……効かない?」


ミランは静かに言う。


「それは“竜族”に有効な術式だ。」


一歩、前へ出る。


結界が軋む。


「だが私は――」


その瞬間。


ほんの一瞬だけ。


彼の背後に、巨大な影が揺らめいた。


翼。

王冠。

星を抱く瞳。


「竜ではない。」


結界が――砕けた。


音もなく。


アストレインの大剣が震える。


彼は後退しない。


ただ理解する。


「……あなたは“種”ではない。」


ミランは頷く。


「概念だ。」


神の沈黙


(The Silence of Gods)


評議会の上空。


常に微弱な神性波が漂っていた空間。


だが今――


完全な静寂。


神々が干渉しない。


いや、


できない。


一人の長老が震える声で呟く。


「神が……沈黙している……」


アストレインは剣を下ろす。


「私は敗北した。」


若き評議員たちが叫ぶ。


「まだ終わっていない!」

「総動員を――!」


ミランが振り向く。


ほんの僅かな圧。


それだけで、全員が黙った。


「私は侵略者ではない。」


声は低い。


だが世界が聞いている。


「試練のために来た。」


沈黙。


「干渉しなければ、私は干渉しない。」


長老が深く頭を下げる。


「……我らは理解しました。」


AIの決断


(The AI Decides)


大陸中央データコア。


【ドラゴン反応プロトコル:停止】

【対象:非敵対】

【再分類:安定因子】


AIは学習する。


【仮説更新:対象は“支配”ではなく“調律”】


教会の選択


(The Church Watches)


監視水晶の前。


監督者が囁く。


「殺せる存在ではない。」


別の声。


「ならば……崇めるか?」


沈黙。


「……見守れ。」


アストレインの誓い


(The Dragon-Slayer’s Oath)


会議後。


アストレインは一人、廊下に立っていた。


ミランが通る。


彼は跪く。


「敵ではないと証明された。

 だが私は剣だ。」


顔を上げる。


「もしあなたが世界を壊すなら、私は立つ。」


ミランは止まる。


「その時は、正しい。」


一瞬の静寂。


アストレインは安堵したように微笑む。


人として歩く


(Walking as Human)


艦がミランを学院へ戻す。


都市は通常運転。


誰も知らない。


評議会で起きたことを。


ルクシオンが静かに言う。


【マスター。試練段階が変化しました】


「……どう変わった?」


【あなたは観測対象から“中心軸”へ移行】


ミランは窓越しに都市を見る。


「……まだ、終わっていない。」


遠く。


霜界で。


クロノアが空を見上げていた。


彼女は何も知らない。


だが感じている。


試練は終わらない。


これは始まりに過ぎない。

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