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第二話 静かな昼休みと、壊れかけの現実

日常は、いつも静かに始まる。

けれど、その静けさの中には、気づかれない歪みが潜んでいる。

クラスの生徒たちは、一人ずつ名前を呼ばれていった。

出席確認が終わると、ヤドウ先生は出席簿を閉じる。

「よし。出席は終わった。次の授業の準備をしなさい」

「はい!」

教室に、揃った返事が響く。

しばらくして、数学の教師が入ってきた。

授業はいつも通りに進む。黒板に書かれる数式、チョークの音、説明の合間に聞こえる小さな囁き声。

僕は、窓の外を眺めていた。

雨は、まだ降り続いている。

なぜかその景色を見ていると、思考が遠くへ流れていく。

そして——

ジリリリッ——

昼休みを告げるチャイムが鳴った。

僕は、ユメが作ってくれた弁当を取り出し、机の上に置く。

そのとき、セラがこちらを向いた。

「ねえ、ラフリ君。一緒に食べてもいい?」

「僕も」

ヨヨが、気の抜けた声で続ける。

「……いいよ」

短く答えると、セラは嬉しそうに微笑んだ。

彼女とヨヨは机を回し、僕の机と向かい合うように並べる。

すべてが整いかけた、その瞬間——

一人の少女が、僕の隣に立った。

黒い髪。

赤い瞳。

ユナ。

両手で弁当箱を抱え、静かに言う。

「……一緒に食べても、いいですか?」

一瞬、言葉に詰まった。

どうして、ユナさんのような人が、僕たちと一緒に座ろうとするのか分からなかったからだ。

答えようとした、その前に——

セラが先に微笑んだ。

「もちろん」

ユナさんは椅子を引き、僕の隣に座る。

僕たちは、食事を始めた。

ふと、視線がユナさんの弁当に向く。

……妙な配置だった。

まるで、三つの顔のように見える。

一つは、僕の顔。

一つは、漆黒の髪をした幼い少女——どこか、見覚えのある瞳。

そして、もう一つ——

「……落ち着いて、ユナ」

頭の奥で、誰かが囁いた。

「たとえ、世界が壊れても——」

急に、視界が揺れた。

頭が重くなり、思わず拳を強く握る。

(今のは……?)

(夢? それとも——)

「フリ?」

「ラフリ?」

「ラフリ!!」

声に呼ばれ、僕ははっとする。

「……あ、ごめん。どうしたの、セラ?」

心配そうに、彼女は僕を見ていた。

「さっきから、全然お弁当食べてないよ?」

「あ……ごめん。ちょっと考え事してた」

慌てて食べ物を口に運ぶ。

……早すぎた。

「っ——! げほっ……!」

むせた。

(み、水……どこだ?)

その瞬間、目の前に一本のボトルが差し出される。

僕は急いでそれを飲み干した。

「……はぁ。助かりました。ありがとうございます、ユナさん」

「どういたしまして」

その声は、どこか親しげに聞こえた。

……いや、きっと気のせいだ。

僕は、思い切って尋ねる。

「あの……ユナさん。僕たち、どこかで会ったこと、ありませんか?」

ユナさんは、少し長く僕を見つめたあと——

ふいっと顔を背ける。

「さあ……どうでしょう」

小さく頬を膨らませ、また弁当に視線を戻した。

(……余計に気になるじゃないか)

僕は小さく息を吐き、残りの弁当を食べ終えた。

それから、授業は淡々と続いていく。

その日一日、特別な出来事はなかった——

ただ、このクラスが、あまりにも奇妙で、謎めいた人間ばかりだという事実を除いては。

家に帰る。

カチャ。

ドアが開く。

「おかえりなさい、フリお兄ちゃん〜」

ユメが、笑顔で立っていた。

張りつめていた思考が、少しだけほどける。

「ただいま、ユメ」

物語の外で——

「きっと、この話と次の話を待っていたよね」

ヨヨが、小さく笑う。

「でも残念。作者は今、とんでもない未来を考えているところなんだ」

「だから、読み続けてほしい。理由は二つ」

「一つ——もう君たちは、この物語に縛られている」

「そして二つ——」

彼の視線が、まっすぐこちらを射抜く。

「僕は、いつでも見ている。

読者も……作者も」

——SHARP

静かな昼休みは、終わった。

けれど、本当に壊れ始めたのは——このあとだ。

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