第一章〜???????〜
ローロロは喋らない。
喋ることが出来ないのではなく、喋らない。
生まれた時さえ産声を上げず、ただじっと、見えているのかもわからない目で、抱き上げた助産師を見つめた。
更に輪をかけて彼の容姿は特殊だった。
全身の毛は白く、太陽の光を反射する。
そして目は血のように赤い。
物心ついた時、両親に連れて行かれた病院で医者は彼を恐る恐る診察しながらアルビノだと診断した。
幼少期はそれ故に同世代の子供から虐められたし、大人たちからは気味悪がられた。
一言も話さず感情も見せぬ我が子に、いつからか両親さえ距離を置き始めた。
ローロロはそれでも喋らない。
周りの人間たちが発する上辺だけの音になんの価値があるというのだろうか。
彼が18歳になった頃、不運にも両親が事故で他界した。
勿論泣くことなんてなかったが、この後どう生活して行くかは少し悩んだ。
喋らない自分が金を稼ぐにはどうしたら良いだろうか。
あてもなくふらふらと路地裏を歩いていると、1人の男に声をかけられた。
50代ぐらいの恰幅も身なりも良いその男性は、ローロロを見るや否や側にいた従者と思しき青年に耳打ちをした。
ローロロにとってその光景はもはや日常だった。
きっと彼らは物珍しいものを、自分より立場が下のものを嘲笑っているだけなのだ。
薄暗い路地裏にはいないタイプの男たちに、少なからず興味が湧いていたものの、その興味も失せた。
ローロロがその場を立ち去ろうと彼らに背を向けると、左手に圧力を感じた。
振り返ると、青年に腕を掴まれているということがわかった。
青年に力一杯引っ張られ、もう1人の男性の目の前で跪く。
青年は尚ローロロの腕を掴み自由を与えない。
圧倒的な力の差。ローロロの精一杯の抵抗は青年の力の前にはなんの意味もなさなかった。
自分はここで殺されるのか?
なぜ自分が?
こいつらは一体何者なんだ?
湧き出す疑問に答えが出ることはない。
男性は持っていた杖をローロロの顎に当て、顔を上げさせる。
豊かに蓄えられた顎鬚を触りながら、モノクルの奥で目を細め品定めするかのようにローロロを見た後、彼は口を開いた。
「実に良い。君は実に良いね」
まとわりつくような声が耳に残る。
連れて行けと男性が命令すると、青年はローロロを肩に担いだ。
もはや抵抗しても無駄だとローロロは諦めた。
このまま生きていても良い事なんてない。むしろ死んだ方が何も考えず悩まず済むのかもしれない。
なぜ自分は生まれてきたのか。
そんな青臭い疑問がふと頭に浮かんだが、答えは出ない。
路地裏を抜け、止まっていた馬車に雑に放り込まれた後、ローロロは考えることをやめた。




