表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/13

第5話「学園祭とヒロインの大暴走」

学園祭――それは、貴族の社交デビューであり、才能を披露する舞台であり、そして何より“騒動”が起きやすいイベントです。


フィオナにとってはもちろん、「恋の奇跡が起こる日♡」に他なりません。


常識? 台本? 許可?

そんなものは彼女の辞書にはありません。


氷の公爵令嬢リュシエンヌが、かつてないほど頭を抱える第5話、どうぞお楽しみください。

王立アルセリオ学園における年に一度の一大行事――学園祭。


貴族子女たちが日ごろの成果を披露し、王族や領主の視察も入るこの催しは、格式と伝統に満ちた“社交の試練”でもある。


けれど。


「きゃー! フィオナちゃん、こっち向いて~♡」 「すごい可愛い……ヒロインみたい……いや、ヒロインか……」


今年の学園祭には、かつてない“新風”が吹いていた。


「えへへ~♡ わたし、実行委員にお願いして“恋する喫茶フィオナ♡”って名前の店、やらせてもらってるの!」


「……実行委員の許可?」


「うん、ノリで通しちゃった♪」


――まさかの、非公認恋愛カフェ開店である。


内装は全力で乙女ゲーム風、

衣装はピンク系メイド服(勝手に持参)、

店内には、「ご主人様と運命の出会いを♡」という非常に不穏な手書き看板。


当然ながら、生徒会も教師陣もざわついていた。



---


その日、リュシエンヌは視察に訪れた王太子殿下に随行していた。


「……リュシエンヌ嬢、今年の祭は……なにやら騒がしいようですね」


「わたくしの監視下から、たった一日離れただけの結果です。愚かでした」


王太子の視線の先では、フィオナが“ピンクのティアラ”を頭に乗せて、客席の男子生徒に向かって手を振っている。


「運命のお茶会へようこそ~♡ 本日わたしは、恋の妖精フィオナです♡」


(恋の妖精など、二度と名乗らせない)


リュシエンヌの氷の瞳が一瞬鋭く光る。


「リュシー! 来てくれたの!? ね、ね、一緒にツーショットどう!?」


「断固拒否します。というより、それを撮影する道具をどこから入手したのですか。持ち込み禁止です」


「へへ、前世の知識ってやつ~!」


フィオナが掲げたのは、まさかの魔力駆動式携帯撮影鏡マジカルシャイン


しかも、ちゃっかり“背景エフェクト”付きで、ハートが浮いていた。


「……即刻、使用をやめなさい。没収します」


「えー!? 思い出に残したいのにぃ~!」


「この騒ぎが“思い出”になるのは、わたくしとしては甚だ迷惑です」



---


しかし問題はそれだけでは終わらなかった。


「リュシーっ、次のショー、見に来てほしいの! フィオナの“恋の歌劇”、見てくれる?」


「……それは、台本などの審査を経た正式な出し物でしょうか?」


「許可がないけど大丈夫! 愛があれば、何でも許されるんだよっ♡」


「許されません。少なくとも、この学園では」


実際、ショーの内容は――


フィオナが王子役(生徒役員を強引に巻き込み)と即興で恋愛劇を繰り広げ、最後は観客に「わたしの運命の人、どこかな~?」と問いかけるという、

観客巻き込み型の騒動誘発型演劇であった。


リュシエンヌは舞台袖で額を押さえていた。


(なぜ誰も彼女を止めなかったのか)


……止めようとした人々は、目をうるうるさせながら微笑む彼女の前に言葉を失い、見事に押し切られたらしい。



---


学園祭閉会後。


「リュシー! ねぇねぇ、今日どうだった? わたし、輝いてた?」


「ええ。迷惑の意味で、学園の頂点に立っていました。実に目立っていましたとも」


「わあ♡ 褒められた!」


「褒めていません」


けれど、その口調はいつもより、ほんの少しだけ柔らかかった。


騒がしくて、面倒で、手間がかかって。

それでも、目を離すとすぐどこかへ駆け出してしまう彼女を、なぜか――置いていけない。


リュシエンヌはふと、自分でもよく分からない感情を紅茶に沈めた。


今回もご覧いただきありがとうございました。


ついにフィオナ、お花畑を飛び越えて“恋の精霊”に進化(?)しました。

魔法仕掛けの撮影鏡、即興演劇、そして謎のピンクメイド服。すべて彼女の仕業です。


これまで冷静沈着だったリュシエンヌも、思わず「無言の怒り」を見せるほど、今回の学園祭はかつてない混沌に包まれました。


とはいえ、そのすべてを受け止めてしまうあたり――やはり彼女は、**唯一無二の“親友”**なのでしょうね。


次回は、王子様まで巻き込まれていく予感。

どうぞ引き続き、お付き合いくださいませ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ