8話 初めての生成
では、前列から順番に自己紹介をしてください」
アルフレッド先生の言葉に、教室内に緊張が走る。
次々と生徒たちが立ち上がり、名前と魔道具科を選んだ理由を述べていく。貴族の子息たちは、家柄や将来の抱負を誇らしげに語る。
そんな中、ひときわ目を引く少女が立ち上がった。
「エレナ・ファーンウッドと申します」
凛とした声に、教室全体が静まり返る。
「私は上級錬金術師の家系に生まれ、幼い頃から魔道具に囲まれて育ちました。将来は、錬金術を応用した新たな魔道具の開発に携わりたいと考えています」
エレナの堂々とした態度に、クラスメイトたちから感嘆の声が上がる。
(すごいな...)遥斗も思わず見とれてしまった。
順番が進み、ついに遥斗の隣の席の男子が立ち上がった。
彼は少し緊張した様子で話し始めた。
「トム・スミスです。特に目立った才能はないんですが、魔道具の研究に興味があって...」
トムは自己紹介を終えると、さりげなく遥斗の方をちらりと見た。
そして、ついに遥斗の番が来た。
「え、えっと...佐倉遥斗です」遥斗は震える声で話し始めた。
「僕は...異世界から来ました」
その言葉に、教室中がざわついた。
「本当に異世界の人なの?」
「どんな世界なんだ?」
「なんで魔道具科に?」
質問が飛び交う中、アルフレッド先生が手を挙げて静粛を求めた。
「はい、質問は後ほど。では、実際の授業に入りましょう」
先生は机の上にポーションを置いた。
「まずは、基本の復習としてアイテムの生成について確認します」
先生の言葉に、生徒たちはやや退屈そうな表情を浮かべる。遥斗だけが真剣に聞き入っていた。
「ご存知の通り、アイテムの鑑定は視界に入れば可能です。鑑定したアイテムは登録でき、その後生成することができます」
生徒たちは当たり前のことを聞かされているかのように、軽くうなずいている。
「では、遥斗くん。あなたはアイテム士だそうですね。このポーションを鑑定し、生成してみてください」
突然指名された遥斗は、驚いて立ち上がった。
(え、僕が? でも、やったことないのに...)
戸惑いながらも、遥斗はポーションに目を向ける。すると突然、頭の中に情報が流れ込んできた。
『最下級HP回復ポーション:傷を癒しHPを30回復させる。効果はポーションの中では最も低い』
(わっ! これが鑑定...?)
遥斗は驚きを隠せない様子だった。クラスメイトたちは、そんな遥斗の反応を不思議そうに見ていた。
アルフレッド先生が説明を加えた。
「鑑定したアイテムの情報が頭に流れ込んできましたね。理解したアイテムだけが登録可能となります。登録は任意で出来ますが、レベルに対して1つのみとなります。レベル10なら10種類になります。不必要なものを登録すると後で困りますので注意してください。」
遥斗は必死に頷いた。
「はい、では生成してみてください」先生の声が遥斗の耳に届く。
遥斗は目を閉じ、さっきのポーションを思い出し心に浮かんだ呪文を唱える。
「ポップ!」
目の前に、小さな青い瓶が現れた。
「わっ!」思わず声が出る。
教室中が静まり返った。遥斗の大げさな反応に、クラスメイトたちは困惑の表情を浮かべている。
アルフレッド先生は、遥斗の反応に少し呆れたような、そして少し失望したような表情を浮かべた。
「やりましたね、遥斗くん」先生の声には、わずかに皮肉な調子が混じっていた。
「まぁこれは魔道具科の学生なら誰でも当たり前にできることですがね」
その言葉に、遥斗は顔を赤らめた。周りの生徒たちからは、くすくすと笑い声が聞こえる。
(みんな...こんなの簡単にできるんだ、すごい)
遥斗は自分が初めて生成したポーションを見つめていた。