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【アニメーションMV有】最弱アイテム士は世界を科学する〜最弱の職業と呼ばれ誰にも期待されなかったけれど、気づけば現代知識で異世界の常識を変え無双していました〜  作者: 東雲 寛則
第2章 ヴァルハラ帝国編

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73話  野営地にて

挿絵(By みてみん)

 グラニト・ストーンから逃れた直後、重装備の足音が地面を震わせながら近づいてくる。鎧のこすれる音と共に、急いで駆けてくる息遣いが聞こえた。


「姫様、ご無事でしたか!」

 ガイラス隊が全速力で駆けつけてきた。その鎧は汗と土埃で曇っていたが、表情には安堵の色が浮かんでいる。日差しを受けて、兜の隙間から汗が光っていた。


 エリアナは優雅に会釈をしながら答えた。

「はい、モンスターに襲われましたが、遥斗様のおかげで助かりました」

 その仕草には、いかなる場面でも失われない気品が漂っていた。


「遥斗!大丈夫だった?」エレナが心配そうに駆け寄る。彼女の緑の瞳には、遥斗への深い心配の色が宿っていた。

「怪我はない?」トムも続いて声をかける。


「よくやってくれた。礼を言う」

 ガイラスは遥斗に向かって深々と頭を下げた。

「い、いえ!マーガスが来てくれたおかげで...」

 遥斗は慌てて手を振る。その表情には照れくささが浮かんでいた。


「当然です!」

 マーガスが突然割って入る。彼は華麗なポーズを取りながら続けた。まるで舞台の主役のように立っている。


「エリアナ姫の危機とあらば、このマーガス、どこへでも駆けつけましょうとも!」

 その言葉を聞いた遥斗は、先ほどの転げ回るマーガスの姿を思い出し、思わず噴き出しそうになる。歪んだハンマーの姿が、まざまざと蘇ってきた。


「なんなんだ貴様!何か言いたいことでもあるのか!」

 マーガスが眉をひそめて詰め寄る。その表情には、わずかな赤みが差していた。


「な、なんでもないよ」

 遥斗は笑いをこらえながら答える。


 その様子を見ていたトムが首を傾げる。

「あの二人って、あんなに仲良かったっけ?」

「さぁ?」エレナも不思議そうに見つめる。


 ナッシュが真剣な表情で口を開いた。

「しかし、気になることがある。このような場所に高レベルモンスターが出現するとは...どういうことだろうか」


 エリアナは表情を引き締めて説明を始めた。その声には、指導者としての責任感が滲んでいた。

「スタンピードの影響かと思われます。恐らく魔物の軍勢から逃げ出して、生息地域が変わってしまったのでしょう。現在、王国軍と冒険者の皆様で対応していただいております」


(なるほど、だからエリアナ姫の護衛がこれほど少ないのか。他の兵士たちは、モンスター対策に回されているんだ)

 遥斗は状況を素早く理解していた。


 オルティガが周囲を見回しながら提案する。

「早く安全な場所まで移動しましょう。日も昇りきってしまいました」


 全員が頷き、急いで馬車に乗り込む。車輪が地面を踏みしめる音が、静かに響く。

 馬車は森を抜け、広大な平原へと出る。


 太陽に照らされた草原が、黄金色に輝いている。

 遥斗は馬車の性能の高さに驚かされていた。


 馬車を引く馬は明らかに強化されており、その走行速度は通常の馬をはるかに上回る。

 筋肉の隆起が目立ち、目には知的な光が宿っていた。

 さらに馬車本体にも魔力が付与されており、驚くほど揺れが少ない。

 車輪の周りには、かすかな魔力の光が漂っていた。


(これなら国境を超えるのにも、それほど時間はかからないかもしれないな)

 遥斗は分析的な目で馬車の構造を観察していた。

 彼の頭の中では、すでにいくつもの仮説が組み立てられていた。


 夕陽が地平線に沈みかける頃、見晴らしの良い場所で馬車が停まる。辺りは夕暮れ特有の柔らかな光に包まれていた。

「今日はこのあたりで野営のようですな」

 ガイラスの言葉に、遥斗は驚いた表情を見せる。

(こんなところに姫を泊めさせるの?)


 しかし御者は手慣れた様子で、馬車の荷台から調理器具を取り出し始めた。金属の道具が、夕陽に照らされて輝いている。

 さらに大型のマジックバックから、新鮮な食材が次々と取り出される。野菜の瑞々しさに、遥斗は目を見張った。


 遥斗は興味深そうにその準備を見つめていた。

 特に、火の代わりに置かれた石のようなカケラに注目する。御者が魔力を流すと、それらは淡い青白い光を放ちながら熱を発し始めた。

 その光は、次第に濃くなっていく夕闇の中で、一層神秘的に見えた。


「これは何ですか?」

 好奇心に駆られた遥斗が御者に尋ねる。その目には、純粋な探究心が輝いていた。


「エーテルライトの欠片ですよ」

「エーテルライトって...」

「魔力銃にも使われているものよ。覚えてない?」

 エレナが説明を加える。


「エーテルライトは大きなものしか安定して使えないの。小さな欠片はクズエーテルライトとして、こういった燃料代わりになるわ。それでもかなり高価なものよ」

 彼女の説明は、いつも遥斗の理解しやすい言葉で語られていた。


 御者は微笑みながら一つの欠片を遥斗に差し出した。青白い光を放つその欠片は、宝石のように美しかった。

「良かったらどうぞ」

「い、いいんですか!」

 遥斗は子供のように目を輝かせる。その表情には、純粋な喜びが溢れていた。


「変わった方ですね」

 御者は優しく笑う。その笑顔には、遥斗の反応を楽しむような温かさがあった。

「ええ、まぁ...変わり者なので」

 エレナは苦笑いしながら答える。しかし、その声音には明らかな愛着が感じられた。


 遥斗は受け取ったエーテルライトの欠片を夕暮れの空に掲げ、その輝きを観察していた。彼の瞳には純粋な探究心が宿っていた。夕陽の光とエーテルライトの青白い輝きが交差し、幻想的な光景を作り出している。

 その光景を見つめる一行の表情には、それぞれ異なる思いが浮かんでいた。彼らを包む夕暮れは、穏やかで心地良いものだった。

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