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【完結】最弱アイテム士は世界を科学する〜最弱の職業と呼ばれ誰にも期待されなかったけれど、気づけば現代知識で異世界の常識を変え無双していました〜  作者: 東雲 寛則
最終章 そして、

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500/588

500話 疑惑の壁、絶対の壁

 キィィィィィィン!!


 上空を切り裂く轟音と共に、VTOLのハッチが開かれた。

 そこから飛び出したのは、一柱の白き神獣。


「うおおおおおおおおおおっ!!」

「きゃあああああああああっ!!」


 大輔とさくらの絶叫が、ソニックブームにかき消される。

 無理もない。

 彼らが飛び出した時の初速は、マッハ2。


 慣性の法則に従い、彼らは弾丸のような速度で水平に投げ出された形になる。

 このままでは、目標地点を遥か彼方に通り過ぎてしまう。


「るな!ブレーキだ!ブレーキ!」

「ウォン!」


 るなが空中で身を捻った。

 直線運動から、強引な回転運動へと移行する。

 降下地点を中心に、急速旋回を行う。


 空中で発生する白き竜巻。

 凄まじい遠心力。


「おごごごごごごご!」

「目がぁぁぁ!目が回るぅぅぅぅ!」


 背中にしがみついている大輔とさくらはたまったものではない。

 世界が高速で回転し、上下の感覚が消失する。


 一方、地上。

 ソフィア共和国軍務総監、セリカ・ヴォーンクライは、上空の異変を冷徹に見据えていた。


「超高速で旋回する物体を確認……生物?」


 怪しい。

 あまりにも怪しい。

 ラグナロクの上空で、あのような不可解な動きをする存在を許すわけにはいかない。


「撃ち落としなさい」


 セリカの命令一下。

 数千の魔法が、雨あられと降り注ぐ。


 爆炎が空を染める。


 しかし——


 るなが展開した神獣の結界は、通常魔法程度では傷一つ付かない。

 独楽のように旋回を続けながら高度を下げ、ついに地面へと降り立った。


 ズンッ!!


 着地の衝撃で、周囲にいた兵士たちが木の葉のように吹き飛ぶ。


 土煙が晴れたそこには、ふらふらと千鳥足の男女が二人。


「うっぷ……き、気持ち悪い……」

「……お、俺は今……洗濯物の気持ちが分かった気がする……」


 大輔とさくらは目を回し、地面にへたり込んでいた。


「囲め!!」

「動くな!!」


 即座に、数百人の魔導士たちが杖を向け、完全包囲する。

 魔力は満ち、いつでも呪文を唱える準備はなされている。


 大輔は頭を振り、無理やり意識を覚醒させた。


 今は酔っている場合ではない。


「……涼介は!いや、勇者はどこだ!」


 大輔が吠える。


 その前に、青白い軍服の女性が立ちはだかった。


 セリカだ。

 彼女は氷のような視線で二人を見下ろす。


「……勇者パーティの、大輔様ですね」


「あんたは……」


 大輔はセリカの顔に見覚えはあったが、名前が出てこない。

 横からさくらが小声で囁く。


「……セリカさんだよ。ソフィアの軍務総監。軍の偉い人」

「あ、ああ、そうだった」


 大輔は居住まいを正し、訴えかける。


「セリカ総監!涼介に話があるんだ!エレノアさんでもいい!繋いでくれ!」


 しかし、セリカは杖を下ろさない。

 完全に警戒態勢を取っている。


「大輔殿、さくら殿。ご健勝で何よりです。……ところで、なぜこのような場所に?貴方がたの任務は、エルフ国での陽動だったはずですが」

「だから、重要な話があるんだって!緊急事態なんだ!」

「緊急事態?……では、私がお聞きしましょう。お二人は今、突入準備でお忙しいので」


 セリカが、冷ややかに遮る。

 何かがおかしい。

 大輔は食い下がる。


「いや、直接話さないと意味がないんだ!頼む、通してくれ!」

「なりません。それほど重要なら、尚の事私が聞かせていただきます」


 譲らない。

 鉄壁の拒絶。


 さくらは、この時点で「妙だ」と感じた。

 周囲の殺気もそうだが、何よりこのセリカという人物の態度だ。


 さくらが知る限り、彼女は「完璧な副官」であり、自分で独断の決定を下すことは滅多にない。

 この状況になれば、真っ先に上司であるエレノアの判断を仰ぐはずだ。


 それが無いということは——


「……ねえ。もしかして、エレノアさんはいないの?」


 さくらが、思わず呟いた。


「ってことは……もしかして、涼介君も?」


 セリカの眉が、ピクリと動く。

 図星だ。


 大輔がハッとする。


「おい嘘だろ……!?まさか決死隊は、もう出ちまったっていうのかよ!?」

「……」

「やばいぞ!遅かった!止められなかった!」


 大輔が「闇」の方角へ走り出そうとする。


 その瞬間、セリカの瞳に明確な敵意が宿った。


「……『止められなかった』と、言いましたね?」

「えっ?」

「暁の遂行は絶対。勇者パーティであれば知らぬはずがない。敵対する意思ありと判断します」


 セリカが杖を振り上げた。


「この者達を捕えよ!抵抗するなら、最悪殺しても構わん!」


「なっ!?」


 真偽の程は分からない。

 だが、暁を邪魔する意思が見えた以上、彼らは敵だ。


 セリカの判断は早かった。


 ザッ!


 包囲していた魔導士たちが、一気に距離を取る。

 魔術師が距離を取る意図はたった一つ。

 巻き込みを気にせず、広範囲の「大魔法」を使う為だ。


 つまりは——本気。


「くそっ!まずい!」


 大輔の力は戻っていない。

 さくら自身にも戦闘能力はない。


 るなの結界頼みだが、四方八方からの連続攻撃を受ければ、どこかで力尽きる。


 その時——


『大輔様!さくら様!』


 頭の中に、少女の声が響いた。

 ハルカだ。

 ヤタの鏡を通じた念話。


『状況は大体把握しました!お二人とも、すぐに戻って来てください!離脱します!』


 轟音。

 上空から、銀色の機体が舞い戻って来た。


 VTOLは大輔たちの上で一時的にホバリングし、その場に留まる。


「逃がすな!撃てぇぇぇッ!!」


 セリカが叫ぶ。


 無数の極大魔法が、大輔たちと上空のVTOLへ向けて放たれる。

 回避不能の暴力の嵐。


 しかし、VTOLのハッチが開き、小さな人影が飛び出した。


「ゴッドアイ・オーバーロード!!」


 戦場に、幼くも凛とした声が響き渡る。

 神々しい純白のオーラが、森を照らし出した。


 エーデルガッシュ。


 彼女は空中で聖剣を掲げ、高らかに詠唱した。


「我が剣に宿りし聖なる光よ、天より降り注ぎし神威の息吹よ、今此処に顕現せよ!聖剣奥義・極光輪!」


 聖剣サンクチュアリの絶対防御スキルが発動する。

 薄桃色の光がドーム状に展開され、あらゆる魔法を弾き返し、霧散させた。


「なっ……あれは……!?」


 セリカが目を見開く。

 彼女はソフィア共和国の軍事責任者。

 あの姿、あの剣を知らないはずがない。


「ヴァルハラ帝国皇帝……エーデルガッシュ!?」


 なぜ、彼女がここにいる?

 なぜ、勇者の仲間を助ける?

 クロノス教団に組したという噂だったのに?


 セリカが混乱している隙に、VTOLから遥斗が叫ぶ。


「早く乗って!」


 大輔とさくらは大急ぎでるなに跨り、るなの跳躍力で機内へと飛び込んだ。

 エーデルガッシュも、ふわりと浮遊して機内へ戻る。


「行くよ!」


 遥斗の声と共に、VTOLはアフターバーナーを点火。

 セリカたちが第二射を放つ前に、彼らは彼方へ向かって急加速した。


「……総監!追いますか!?」

「いえ……無駄でしょう。あれには追いつけない」


 セリカは、飛び去る銀色の翼を見つめながら、拳を握りしめた。

 疑念は深まるばかり。

 だが、今はここを守るしかない。


「警備をさらに厳重にしなさい!!」


 一方、VTOLの機内。

 飛び込んできた大輔が叫んだ。


「遥斗!涼介たちはもう行っちまったようだ!暁は始まっている!」


 遥斗が絶句する。

 手遅れだった。


「でも、諦めるわけにはいかない……!みんな、バハムスさんに合流するよ!全開で行くから準備して!」


 VTOLは世界を救うべく加速していく。

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