5話 レベルとステータス
謁見の間は勇者の出現に沸き立っていた。
「勇者様だ!」
「我らに希望が!」
歓声が鳴り止まない中、涼介は少し困惑した表情を浮かべていた。
「俺そんなにすごいのか?」
「ふふ、さすが涼介!」千夏が嬉しそうに腕にしがみつく。
その様子を見て、遥斗は複雑な表情を浮かべた。
(やっぱり、涼介は特別なんだ...)
そんな中、一人の騎士が前に進み出た。
「陛下、一言よろしいでしょうか」
厳めしい雰囲気を纏った騎士に、王は頷いた。
「ああ、アレクサンダー卿。何かあるのか?」
「はい」アレクサンダーは6人に向き直った。「私はアレクサンダー・ブレイブハート。王直属の騎士にして、現在の王国最強と呼ばれる者です」
場の空気が一変する。
「確かに、皆さんの職業とステータスは素晴らしい」アレクサンダーは続けた。
「しかし、それだけでは戦えません」
「え? どういうことですか?」美咲が首を傾げる。
アレクサンダーは静かに説明を始めた。
「皆さんは今、全員レベル1です。いかに優れた職業や高いステータスを持っていても、レベル1では戦闘能力はほとんどありません」
「レベル...」大輔が眉をひそめる。
「ゲームみたいですね」
アレクサンダーは続けて話した。
「この世界では、経験を積んでレベルを上げなければ、本当の力は発揮できません」
「じゃあ、俺たちはまだ無力ってことか?」
涼介が少し落胆した様子で聞く。
「そうです。しかし」アレクサンダーは微笑んだ。
「皆さんのステータスには大きな意味があります。まず、ステータスの項目について説明しましょう」
アレクサンダーは空中に魔法で文字を浮かび上がらせた。
1. 体力(HP):生命力と耐久力を表す
2. 魔力(MP):魔法や特殊能力の使用に必要なエネルギー
3. 力量:物理攻撃力と筋力を表す
4. 敏捷性:移動速度や回避能力を表す
5. 知性:魔法攻撃力と知識の深さを表す
6. 精神力:精神攻撃への耐性と集中力を表す
7. 器用さ:技能の習得速度と精密な動作の成功率を表す
8. 防御力:物理攻撃や魔法攻撃からのダメージ軽減能力を表す
9. 幸運:クリティカルヒットや稀少アイテムの出現率に影響
10. 魅力:他者への影響力や交渉能力を表す
「これらのステータスは、S、A、B、C、D、E、Fの7段階で評価されます」アレクサンダーは続けた。「そして、このランクがレベルアップ時の成長率を決めるのです」
「成長率?」
遥斗が小さな声で聞いた。
「そう」アレクサンダーは頷く。「例えば、力量がSランクの場合、レベルアップごとに力量が4〜5ポイント上昇します。一方、Fランクだと0〜1ポイントしか上昇しません」
「なるほど...」大輔が腕を組む。
「つまり、初期ステータスが高いほど、レベルが上がった時の恩恵が大きいということですね」
「その通りです」
「じゃあ、俺たちはどうすればいいんだ?」涼介が尋ねる。
アレクサンダーは説明を続ける。
「レベルを上げるには経験値が必要です。モンスター、魔物、人間、他種族を倒すことで経験値が溜まります。より強い相手を倒すほど、多くの経験値を得られます」
「へぇ...」さくらが感心したように聞いている。
「じゃあ、強いやつとバンバン戦えばいいんだな」涼介が意気込む。
「いや、そう単純ではありません」アレクサンダーは首を振る。
「レベル差が大きすぎると、勝てないどころか返り討ちに遭います」
「なるほど...じゃあ、少しずつレベルを上げていく必要があるんですね」大輔が頷く。
「その通りです」
「あの、質問していいですか?」美咲が手を挙げる。
「この世界の最高レベルはいくつなんですか?」
アレクサンダーは少し考え込んだ後、答えた。
「正確なところは分かりませんが、現在確認されている最強の者のレベルは628です」
「え!?」全員が驚きの声を上げる。
「そ、そんな高レベルまであるんですか...」遥斗が呟く。
「この世界では、レベル999まであると言われています」
アレクサンダーは王に向き直る。
「陛下、彼らにはまず訓練所で基礎を学んでもらうのはいかがでしょうか。レベルを上げつつ、この世界の常識を身につける必要があります」
王は頷き、6人に向かって言った。
「どうかな? 訓練所で修行するのは」
6人は顔を見合わせる。
大輔が声をかけた。
「みんな、どう思う?」
「うーん、確かに今のままじゃ心もとないよね」千夏が言う。
「そうですね。この世界のことをもっと知る必要がありそうです」美咲も同意する。
「俺は構わないぜ。強くなりたいしな」涼介がにやりと笑う。
「まあ、仕方ないわね」さくらはため息をつく。
遥斗は黙ったままだった。
(僕には...追いつける可能性はあるのかな)
大輔は全員の反応を見て、王に向き直った。
「陛下、私たちは訓練所での修行を受け入れさせていただきます」
王は満足げに頷いた。
「よかろう。では、明日から訓練所での生活が始まる。しっかり学び、強くなってくれ」