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【完結】最弱アイテム士は世界を科学する〜最弱の職業と呼ばれ誰にも期待されなかったけれど、気づけば現代知識で異世界の常識を変え無双していました〜  作者: 東雲 寛則
第7章 終焉の血戦編

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469話 和解

「大丈夫? さくらさん」


 優しい声。

 先ほどまでの冷徹さは微塵もない。

 まるで別人のような、穏やかな表情。


「うん……」

 さくらが、微笑む。

 涙の跡が残る頬を、そっと拭う。


「みんな……帰ったよ」


「……そう。全部さくらさんのおかげだよ」


 その光景を見て、大輔の中で違和感が生まれていた。

 遥斗のあの冷酷さ。

 機械のような。

 そして感情の欠落。


 疑惑が浮かんだ。


 さくらをわざと危険に晒して、神人を倒す道具にしたのではないか。

 最初から計算していたのではないか。


「遥斗」

 大輔の声が、低く響く。

「お前……さくらを利用したんじゃないよな?」


 静寂。

 空気が、ヒリ付く。


「俺の時もそうだったけどさ……あの戦い方……普通じゃねーよ。どうなっちまったんだよ!なあ、遥斗!」

 大輔の拳が、震える。


 遥斗が深々と頭を下げた。

「……ごめん。利用するつもりはなかったんだ。だけど僕の力だけじゃ、完勝するのは難しかった……それは事実だよ」

「さくらさんのテイムした神獣の心が、ずっと残っているのは感じてた。モンスターテイマーの力を考えれば……これがベストだと思った」


 正直な告白。


「でも!それでもよ!クラスメイトを……友達を危険に晒すような真似……許されることじゃないだろ!」


 正義感。

 それが、大輔の根幹をなすものだった。


 仲間を守る。

 弱い者を守る。

 それが、彼の信念であり誓い。


「そうだね。大輔のいう事は正しいと……思う」


 遥斗は、ただそれだけを言った。


 言い訳はない。

 弁解もしない。


 ただ——

「さくらさん。本当にごめん」

 もう一度、頭を下げる。



「……違うよ」


 さくらの声が、静かに響いた。

「遥斗君は、あの状況で出来ることをやっただけ」

「おかげで……ミラにもお別れが言えた」

「もし遥斗君が力だけで解決しようとしてたら……きっと、ミラの魂は救われなかったよ」


 さくらが、大輔を見つめる。


「友達を危険に晒したのは、私たちも同じでしょ?」

「どういうことだよ……」

「ちょっと!遥斗君をお尋ね者にしたの……忘れたの?」


 大輔が、言葉に詰まる。


「弱いからって王都に置いて行って、エリアナ姫の言われるままに反逆者と決めつけて……」

 さくらの声が、震える。

「私たちの方が酷くない?」


「でもさ……それは涼介が……」

「言い訳でしょ?誰かのせいにして。でも……それって、卑怯だよ」


 大輔が、黙り込む。


「それに」

 さくらが、優しく微笑んだ。

「私たちは仲間なんだから。頼って当然でしょ?」


 るなが、しっぽを振りながら遥斗に近づいた。

 遥斗の足元にまとわりつき、クゥンクゥンと鳴いて感謝を示す。


 遥斗の手を、鼻先で押す。


「……るなが、ありがとうって言ってる」



 大輔が深く息を吐いた。


「……そっか、ごめんな、遥斗」

 頭を下げる。


「俺、勘違いしてたわ。都合の良い時だけお前に頼って……利用して……ダチのやる事じゃなかったわ!すまん!」

「え、いや、そんな!別に、大輔が悪いわけじゃないよ!」


 遥斗が、大慌てで手を振る。

「むしろ僕が……その、しっかりしてないのが悪いんだし……」


 しどろもどろ。

 まるで、昔の遥斗そのもの。


 そこにいたのは冷徹な戦士ではなく——

 普通の、少し気弱な少年。


 大輔が、それを見て笑った。


「……別人じゃねーわ!やっぱ遥斗だぜ!安心した!戦ってる時のお前、マジで怖かったからさ」

「あ、あはは……」


 遥斗が、照れくさそうに頭を掻く。

 その姿に、さくらも笑顔になる。


 わだかまりが、氷解していく。

 ここにいるのは、普通の高校生。

 同じクラスの友人同士。



 その時——


 さくらが、何かに気づいた。

 いつのまにか、手の中に何かがある。


 ルドルフの持っていた死霊の杖だ。


「……これ」

 人骨で出来た不気味な代物。

 ルドルフと一緒に飲み込まれてたのだ。

 神人が消滅した今、それだけが残っていた。


「……うーん、どうしよ?気味悪いし捨てた方がいいのかな?」

「ちょ、ちょっと待って!」

「え?」

「それ必要なんだ」

「これが?呪われそうだけど……まぁ遥斗君が欲しいなら……」


 遥斗が、杖を受け取る。


「ありがとう。これで、みんなを救えるかも知れない」



 ***



 三人は、エレナの元へ向かった。

 シエルを抱えるエレナが、嬉しそうに微笑む。


「遥斗くん!良かった!勝ったのね!」


 笑顔。

 互いに無事を確認し合う。


「シエルは……」

「まだ……意識が戻らないの。身体へのダメージとかじゃなくて、魔法を酷使したせいで消耗しちゃったんだと思う」


 シエルは、静かに眠っている。

 呼吸は安定しているが、目を覚ます気配はない。


「……今は休ませてあげないと」


 その時——

 マリエラとヘスティアが、恐る恐る近づいてきた。

 マリエラは、グランディスを背負っている。

 助け出してくれていたのだ。


「あ、あの……」

 ヘスティアが、オドオドと言葉を探す。

「た、助けて……いただき……ありがとう……ございました」


 頭を下げる。


 マリエラも、感謝を告げる。

「遥斗君お強かったのね~びっくりしちゃった~。グランに代わってお礼を言わせてもらうわ~」


 遥斗が、笑顔で応える。

「とんでもない!みんなが来てくれなかったら、どうなってたか……こちらこそ、本当に助かりました」


 その言葉に、二人が顔を見合わせた。

 先ほどまでの、殺戮マシーンのような遥斗ではない。

 ごく普通の少年に見える。


「あの、グランディスは……」

「ええ、気を失ってるけど~無事よ~力を使いすぎただけね~」

「……よかった」


 遥斗は、意識を失っているグランディスの寝顔を見て安堵した。


「それにしても、さすがです!」

 ヘスティアが、目を輝かせる。

「アマテラス様に勝ったのは伊達ではありませんね……本当に、感服いたしました!」

「えっ……アマテラス様?」


 これにはマリエラも驚きの声を上げる。


「太陽神アマテラス様のことよね~?エルフ族最強の~。人族が……アマテラス様に勝つなんてすごいわ~」


 エルフにとって、アマテラスは神に等しい。

 女三傑であるマリエラでさえ雲の上の存在だ。

 それに勝つなど、考えられないこと。


「え、いや……その、そんな……あれは、まぐれで……」

 遥斗が、言葉を濁す。



 その時——


 エルウィラインたちが、駆けつけてきた。

 アレクスが、ゲイブとケヴィンを両肩に担いでいる。

 二人とも意識は戻っていない。


「遥斗殿!見事だった!素晴らしい戦いだったぞ!……本当に凄い。あんな化物を一人で……」

 エルウィラインが、笑顔で賛辞を送った。


「いえ、みんなのおかげですよ。一人じゃ無理でした」

 遥斗も笑顔で返した。


 エルウィラインが、真剣な表情になる。

「それで……この後、どうする?」


 その問いに——

 全員の視線が、遥斗に集まる。


 皆が、気になっていた事だ。


 この街は、まだ混沌としている。

 戦いは、全く終わっていない。


「まずは……現状を何とかします」


 遥斗が、辺りを見渡した。

 あちこちで、戦闘が続いている気配が充満している。


 アリアとマーガスが、かなりの数を鎮圧している。

 それでも、兵士同士の殺し合いは、今なお収まる気配はない。

 それに、鎮圧といっても束縛してるだけで、根本的問題解決にはなってない。


 遥斗が、死霊の杖を握る。


「これを使って!」


 遥斗が、杖を地面に突き立てた。


 そして——


 魔力を注ぎ込む。


 ありったけの。

 全力で。

 限界まで。


 遥斗の体が光り始める。

 青白い魔力が全身を包む。


 杖が反応した。


 黒い光が杖から放たれ、空間を埋め尽くし、徐々に広がっていく。


 まるで波紋のように。


 そして、瞬く間に都市全体へと——


 魔力フィールドが形成された。


「これは……」

 エルウィラインが、息を呑む。

「まさか……都市全体に魔法を……?」


 信じられない光景。

 個人の魔力で、こんな広範囲に魔法を展開するなどあり得ない。


 しかし、遥斗はやってのける。

 死霊の杖の力を借りて。


「遥斗……」

 大輔が、心配そうに見つめる。


 遥斗の額には、大量の汗が浮かんでいる。

 相当な負荷がかかっているのだろう。


 それでも——


 遥斗は、止めない。


 杖に、魔力を注ぎ続ける。


「マリオネイトエイジ・ラビリンス!」

 マリオネイター最大スキルが発動した。

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