4話 職業
賢者マーリンが杖を掲げる。
「さあ、神の加護を受ける準備はよいか?」
6人は緊張した面持ちで頷いた。
マーリンが呪文を唱え始めると、部屋中が神秘的な光に包まれる。
「うわっ...」遥斗が思わず声を上げる。
光が収まると、マーリンが静かに告げた。
「神の加護により、君たちに職業が与えられた。そして、この世界での能力を示すステータスも付与されている」
「ステータス?」美咲が首を傾げる。
マーリンは微笑む。「そう。力量や知性、敏捷性などを示す指標だ。S、A、B、C、D、E、Fの7段階で評価される」
「へぇ...」涼介が興味深そうに聞き入る。
「では、順番に確認していこう」
マーリンは大輔に目を向けた。
「中村大輔。君の職業は...竜騎士だ」
「竜騎士!?」大輔が驚いて声を上げる。
マーリンが説明を続ける。「竜を操り、空からの攻撃を得意とする職業だ。ドラゴンの魂と共鳴し、その力を借りることができる」
大輔のステータスが空中に浮かび上がる。
「力量S、敏捷性A、知性B...おお、素晴らしい適性だ」
周囲から歓声が上がる。
「すごいぞ、竜騎士様!」
「我が国に竜騎士が!」
次は千夏の番だ。
「鈴木千夏。君はハイモンクだ」
「ハイモンク?」千夏が首を傾げる。
「精神と肉体を極限まで鍛え上げた者だ。気を操り、強力な打撃と防御を繰り出せる」
千夏のステータスを見たマーリンは目を見開いた。
「筋力A、敏捷性S、精神力S...これは稀に見る才能だ」
「千夏、すごいじゃん!」涼介が声をかける。
続いてさくらの番。
「伊藤さくら。君の職業はモンスターテイマーだ」
「へぇ...面白そう」さくらが少し興味を示す。
「モンスターと心を通わせ、味方につける能力を持つ。多様な特性を持つモンスターを操ることで、あらゆる状況に対応できる」
さくらのステータスを確認したマーリンは満足げに頷いた。
「知性A、精神力A、魅力S...素晴らしい適性だ」
兵士たちの間でざわめきが起こる。
「モンスターを操れるなんて...」
「これは心強い!」
美咲の番になった。
「山田美咲。君はマジックキャスターだ」
美咲の目が輝く。「魔法使いってことですか?」
「ああ、それも最上級のな。あらゆる属性の魔法を操り、複数の魔法を組み合わせた高度な詠唱が可能だ」
美咲のステータスを見たマーリンは感嘆の声を上げた。
「魔力S、知性S、精神力A...驚異的な才能だ」
「さすが美咲!」千夏が喜ぶ。
王も満足げに頷いている。
そして、遥斗の番が来た。
「佐倉遥斗。君の職業は...アイテム士だ」
「え?」遥斗は聞き慣れない職業名に戸惑う。
マーリンは少し困ったような表情で説明を始める。
「アイテムを生成する能力を持つ職業だ。そして...」
遥斗のステータスを見たマーリンの表情が曇る。
「力量F、敏捷性E、知性E...」
周囲から失笑が漏れる。
「なんだよ、それ」
「前の4人と比べて...」
王が咳払いをして、周囲を諫める。
「慎めよ。全ての職業に意味があるのだ」
姫エリアナも優しく微笑みかける。
「きっと素晴らしい才能が眠っているはずです」
遥斗は顔を赤らめ、俯いてしまう。
(やっぱり、僕なんか...)
最後は涼介だ。
「高橋涼介。君の職業は...」
マーリンの目が大きく見開かれる。
「なんと...勇者だ!」
場が静まり返る。
「勇者だと!?」
「伝説の職業が...」
涼介のステータスが現れる。
「ほとんど全てのステータスがS! 前代未聞の才能だ!」
歓声が沸き起こる。
「万歳! 勇者様!」
「我らに希望が!」
千夏も美咲も、うっとりとした表情で涼介を見つめている。
遥斗は複雑な思いで涼介を見た。
(やっぱり涼介か...)
現実世界でも常に周囲の注目を集めていた涼介。この異世界でも、彼は特別な存在なのだ。
遥斗は自分の非力さを痛感し、複雑な思いに包まれた。
(僕は...何ができるんだろう)
そんな遥斗をよそに、部屋は勇者の出現に沸き立っていた。