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【アニメーションMV有】最弱アイテム士は世界を科学する〜最弱の職業と呼ばれ誰にも期待されなかったけれど、気づけば現代知識で異世界の常識を変え無双していました〜  作者: 東雲 寛則
第5章 クロノス教団編

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313話 英雄帰還

 遥斗の視力が回復した事実を告げると、皆が驚愕に包まれた。

 まるで天地がひっくり返ったかのような、信じがたい光景に帝国陣営は大騒ぎ。

 呪いの絶対性を信じて疑わなかった者たちにとって、それは奇跡以外の何物でもなかった。


「理外の刃の呪いが解けるなんて……聞いた事ねぇよ」

 グランディスが呟く。

 彼の顔は蒼白になっており、自身の常識が覆されたことへの混乱が見て取れた。

「こんなことあり得んのかぁ?もうオカートなんて意味ねーじゃん!」


「遥斗くんのバカ!」

 突然、エレナが声を上げた。

 怒ったような声だったが、その瞳には涙が浮かんでいる。


「心配したんだからぁ!でも……良かったー!」

 そう言って、彼女は遥斗に強く抱きつく。

 その温かさに、遥斗の胸が締め付けられる。

 エレナの遥斗への想いが、痛いほど伝わってきた。


「師匠……治せるなら先に言っといて欲しかったっす。酷いっす……寿命が縮んだっすよ」

 シエルが魔導士の帽子で隠しながら、複雑な表情を見せる。

 その声は少し拗ねたようでもあり、安堵したようでもあった。


「ご、ごめん。でも確実だった訳じゃ……」

 遥斗は弟子に責められ、しどろもどろになっていた。


「それにしても前代未聞だよ……理外の刃の呪いを自力で解除するとは」

 ルシウスが驚嘆する。

「ちょっと信じられないね。私が何十年もかけて研究しても、全くどうにもならなかったというのに……」


「何が起きてんだよー?さっぱり分からねぇ」

 アリアが首をかしげる。

 数多の戦闘の経験者である彼女にとっても、この状況は理解の範疇を超えていた。


 そして、エーデルガッシュが厳しい口調で問い詰める。

「佐倉遥斗、説明してほしい。お主は最初からこの結果を求めていたのではないのか?何故そのような危険な行為に及んだのだ」


「オカートを解除する方法が必要だったんだ」

 遥斗は答える。

 極めて冷静で、まるで当然のことを述べているかのようだ。


「確かにオカートの解呪法が分かれば、それに越したことはない。だが何故今なのだ?」

 エーデルガッシュがさらに追及する。

 理由が分からなければ、遥斗の行動を許すことはできなかった。


「この戦いに……勝つため」

 遥斗の回答は明快だった。

 その一言に込められた意志の強さに、一同が息を呑んだ。


「勝つため?意味が分かりません」

 イザベラが困惑しながら口を挟む。

「どういうことだ?俺達にも分かるように説明してくれないか?」

 ケヴィンが促す。


 皆、純粋な好奇心と、回答への期待が込められていた。


 遥斗が一呼吸間をおいて、詳しい説明を始める。


「まず最初に、呪いを除去するために生成素材にすることは、早期に思いついていました」

「でも実態がないので、素材としてイメージできなかったんです」

 彼は続ける。

「だから自分で呪いを受けて、オカートの感覚をつかむ必要があった」


「そっか!それで2回戦でわざと……」

 グランディスの表情に、遥斗の計画の深さへの驚愕が浮かんでいた。


「もちろん勝てれば最良だった。けど勝算は限りなく低かった」

「運良く理外の刃を使ってくれたのは幸運だったよ。これは本当に賭けだった。普通に戦っていれば、僕たちの敗北は確定していた」


「いくら何でも無茶がすぎるだろ……」

 ガルスが呆れ声を上げる。


「で、なんでそこまでしたんだ?」

 ゲイブが核心を問う。

「呪いの解除方法が分かったところで、俺達に勝ち目はあるのか?」

 その問いに、一同の視線が遥斗に集中した。


 遥斗が立ち上がる。


「ここまでした理由は……」

 その瞳に、強い決意が宿った。


「アマテラスとツクヨミに勝てる人は、今現在、ここにはいないからです」


「確かに……それが厳しい現実だ」

 ブリードが認める。

 雷神と呼ばれる剣聖でさえ、その事実を否定できなかった。


 しかし遥斗が宣言する。



「……でも、勝てる可能性のある人は……もうすぐ現れます」



 全く意味が分からない。

 その言葉に、皆が遥斗の意図を測りかねていた。


「エレナ、もう一つのシャドウサイズを出してもらえる?」

 エレナが困惑しながらも、黒いチャクラムを遥斗に差し出した。


 皆が注目する中、遥斗がルシウスに近づく。

 

 そして彼の前で立ち止まり、シャドウサイズを掲げる。

 その瞳には、確信に満ちた力強さがあった。


「ポップ!」

 遥斗が生成の呪文を唱える。

 シャドウサイズを素材に、新たなデスペアが完成した。


 その瞬間——


 突然、ルシウスの体から膨大な魔力が立ち昇り始める。


 空気が振動し、周囲の者たちが息を呑んだ。


 それは今まで感じたことのない、圧倒的な魔力の奔流。


「こ、これは……私の魔力が……」


 ルシウスが震える。

 長年失われていた力が、体の奥から湧き上がってくる感覚。

 ルシウスにかかっていたオカートの呪いが、今、完全に解除されたのだ。


「3人目の代表はあなたです、英雄ルシウス」

 遥斗が告げる。

「アマテラスが不意打ちで呪いをかけたということは、正面からやり合えば不利と感じていたからでは?」


「元シルバーファングのリーダー、アリアさんの師とも呼べる人。僕達が勝利する可能性があるのは、過去のルシウスさんだけです」



 アリアが小さくガッツポーズを取る。


 ルシウスが呪いを受けた時、一緒にいたのは彼女だった。

 誰よりもルシウスを尊敬していたのも、彼女。

 ルシウスの呪いが解けて、元の強さを感じられた喜びは誰より強い。


「やったぜ、くそっ!……ルシウス……戻ってきやがった……」


 遥斗の命を懸けた戦略がここに結実した。

 最後の希望、アストラリア国王の神子、銀髪の英雄ルシウスが帰ってきたのだ。

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