3話 王の謁見
「こちらへどうぞ」
銀髪の魔法使いに導かれ、6人は巨大な扉の前に立った。
「おい、マジで王様に会うのか?」大輔が不安そうに呟く。
「ふふ、大丈夫よ」千夏が涼介の腕にしがみつく。「涼介がいるから」
「うっ...」遥斗は思わず目をそらした。
涼介が咳払いをする。「みんな、緊張するのは分かるが、しっかりしろよ」
「ええ、礼儀正しく振る舞いましょう」美咲が付け加える。
さくらはため息をつく。「まったく、面倒な事になったわね」
重々しい音を立てて扉が開く。そこには...。
「ようこそ、異世界より来たる戦士たちよ」
威厳のある声が響き渡った。王座に座る初老の男性——アストラリア王国の王エドガー3世だ。
その隣には若い女性が立っている。
「畏まる必要はございません。どうぞごゆっくりお寛ぎください」
優しい微笑みを浮かべる姫エリアナ。そして、二人の後ろには長い白髪と髭を蓄えた老人が控えていた。鋭い眼光を放つ賢者マーリンだ。
「えーと...」大輔が小さな声で言う。「お初にお目にかかります...」
「儀式ばった挨拶はいいぞ」エドガー王が笑みを浮かべる。「さて、君たちを呼び寄せた理由だが...」
王の表情が一変する。
「我々の世界は、今まさに危機に瀕しているのだ」
「危機、ですか?」美咲が聞き返す。
姫エリアナが一歩前に出る。
「はい。世界の果てから『闇』と呼ばれる異常な現象が広がっています。そして、その闇からは無数の魔物が湧き出ているのです」
「魔物!?」涼介が声を上げる。「冗談じゃないよな...」
賢者マーリンが口を開く。「残念ながら、真実だ。そして我々には、もはや闇を押し戻す力が残されていない」
「そこで、異世界の戦士である君たちを召喚したのだ」エドガー王が続ける。「我々に力を貸してはくれまいか」
6人は息を呑んだ。
大輔が震える声で話す。「しかし、私たちにそんな力が...」
「心配するな」マーリンが言う。「君たちには、この世界で特別な力が与えられる。それを使って世界を救ってほしいのだ」
「ちょ、ちょっと待ってよ」さくらが困惑した表情で言う。「私たち、帰れるんでしょ?」
エドガー王が深くため息をつく。
「ああ、もちろんだ。君たちを強制的にここに留めるつもりはない。だが...」
「できる限りの助けをいただきたい」姫エリアナが切実な表情で言う。「お願いします」
「でも...」千夏が不安そうに言う。「私たちの家族は...」
その時、マーリンが重々しい声で言った。
「警告しておこう。君たちの世界もいずれは闇に飲み込まれる。それが私の見た未来だ」
「えっ!?」
6人の間に動揺が広がる。
「どういうことだ...」涼介が眉をひそめる。
「つまり」マーリンが続ける。「君たちがここで闇を止めなければ、君たちの世界もまた危険に晒されるということだ」
沈黙が降りる。
「どうすればいいの?」美咲が小さな声で言う。
大輔が深呼吸をする。「みんな、ちょっと話し合おう」
6人は輪になって、小声で相談を始めた。
「私は...帰りたい」さくらが言う。
「うん、私も」千夏が同意する。
「でも、このまま帰って大丈夫かな...」美咲が心配そうに言う。
涼介は腕を組んで考え込んでいる。「確かに、このまま見過ごすのは...」
その時、大輔が決意を込めて言った。
「みんな、助けてあげないか?」
「えっ?」
「だって、俺たちにしかできないんだろ? それに、自分たちの世界も危険なんだ。ここで止めなきゃ」
涼介が頷く。「...そう...だな」
美咲も同意する。「私もそう思います」
さくらはため息をつく。「しょうがないわね...」
千夏も渋々頷く。
その間、遥斗はずっと黙っていた。本当は、この異世界にワクワクしている自分がいる。でも、それを口に出すのは...。
「遥斗はどう思う?」大輔が聞いてきた。
「え? あ、その...」遥斗は言葉に詰まる。「うん、みんなの言う通りかな...」
大輔が王の方を向く。
「分かりました。私たちに何ができるか分かりませんが...協力させていただきます」
エドガー王の顔が明るくなる。
「ありがとう! 君たちの協力に、心から感謝する」
姫エリアナも嬉しそうに微笑む。「本当にありがとうございます」
マーリンは満足げに頷いた。「さて、それでは早速、君たちの力を覚醒させよう」
6人は不安と期待が入り混じった表情で顔を見合わせた。