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【アニメーションMV有】最弱アイテム士は世界を科学する〜最弱の職業と呼ばれ誰にも期待されなかったけれど、気づけば現代知識で異世界の常識を変え無双していました〜  作者: 東雲 寛則
第5章 クロノス教団編

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261話 炎の来訪者

 遠くの空に立ち上った炎の柱を、一行は固唾を呑んで見つめていた。


「あれって、さっきグランティスの言ってた亡霊っすか……?」


 シエルの小さな声が、張り詰めた空気の中で震えている。

 彼女は思わず遥斗の腕を掴み、その背後に隠れるように立つ。


 炎の柱はまるで意思を持つかのようにうねり、空中を滑るように彼らの野営地へと迫ってきた。


「ひぃぃい。どう見ても、自然現象じゃないっすーーー!」


 シエルの言葉が終わると同時に、炎の塊が一行から10メートルほどの地点に降下する。

 オレンジ色の灼熱が木々を照らし、長い影を地面に落とす。

 炎は徐々にその形を変え、人へと変形していく。


 炎を纏う赤い人影が、そこに出現した。


「こいつぁ一体なんだぁ……?」


 グランディスがディスチャージャーを構えたその時、炎の男の傍らに別の人物も姿を現した。

 全身をフルプレートの鎧で覆い、巨大な斧を手にしている男。

 漆黒の甲冑は、炎に照らされて不気味な輝きを放っている。


「……お前たちがマテリアルシーカーか」


 鎧の男の声は鎧に籠っているが、森全体に響き渡るような不気味な響きがあった。


 異様な気配に一行が身構える中、マーガスが一歩前に出る。

 普段、情けない一面もあるが、こういう時には頼れる男だ。


「然り!俺達は名高きマテリアルシーカー!そして、この俺様がパーティリーダー、マーガス・ダスクブリッジだ!貴様は何だ!」


 鎧の男の態度が一瞬で変わった。

「マーガス・ダスクブリッジ?」


 炎の男が鎧の男に目配せをする。

「あの男の事じゃねーの?」

「ああ、恐らくな……アタリだ」

 鎧の男が低い声で答えた。


 マーガスを値踏みするように上から下へと眺める。


 二人の奇妙なやり取りに、遥斗は違和感を覚える。

 彼らは明らかに目的を持って現れた。

 しかもマーガスを狙っている。

 遥斗は僅かな情報も漏らすまいと、二人を懸命に観察していた。


 マーガスは自分に対する視線に一瞬怯んだものの、すぐに胸を張り直し詰問する。

「俺がマーガスなら何だってんだ!お前らこそ何者かさっさと答えろ!でないとどうなっても知らんぞ!」

「くくくっ……噂通りの大口だな」

 鎧の男が笑った。

 その声には明らかな侮蔑が込められている。


 遥斗は状況を分析しながら、マジックバックに手を伸ばす。

 魔力銃を取り出すつもりだ。

 しかし、その動きは全て看破されていた。


 ガンッ!


 鎧の男は、威嚇するかのように斧を地面に突き立て答える。

「我々はお前たち追う者だ。聞きたいことがある」


 隣の男も炎を収め、フードの姿になる。

 その姿は想像していたよりも、はるかに小さい。

 少年と言っても過言ではないだろう。


 しかし、その出で立ちは、確かにどこかで見た記憶がある。


「お前たち……ゲオルグという男を知っているな?」

 その名前を聞いた瞬間、遥斗の警戒心が頂点に達した。

(この姿!フロストウルフを操っていたモンスターテイマーと同じだ!なぜゲオルグのことを?彼らはクロノス教団か?)


 その言葉を聞き、エレナとユーディも戦闘態勢を取った。


 そして、ユーディが居合の構えで間合いを詰める。

 小柄な彼女だが、その剣からは殺気が漏れ始めていた。


「ゲオルグの仲間か?説明してもらおうか……」


 ユーディの冷ややかな声が、二人の男を明らかに動揺させた。


「この小娘……ヴァルハラ帝国皇帝か!?」

 鎧の男の態度が一変する。

 その鎧の隙間から覗く目が、狂気に満ちて輝いている。

「なんという好機!こんな所にエーデルガッシュ・ユーディ・ヴァルハラが……」


 フードの男も、ふたたび身体から炎を強く立ち上らせる。

「皇帝を見つけるなんて……これは運命だな」


 鎧の男が狂気じみた声で続ける。

「神子暗殺……帝都では果たせなかった任務……今ここで……」


 その言葉に確信を得た遥斗は断言した。

「お前たち、クロノス教団だな!」


 鎧の男は大きく頷く。

「くくっ……見抜いたか……。だが遅すぎだ!」


 炎の男は翼を展開させ、上空へと舞い上がる。

「もう隠す必要もないよね。ゲオルグのおっちゃんの仇取らせてもらうよ!」


「あの時逃げた刺客か!お前たちは……モンスターテイマーだったはず」

 遥斗が疑問を呈する。


 彼の記憶では、帝都を襲ったゲオルグの部下たちはモンスターを使役していた。

 だが目の前の二人は、明らかに違う能力の持ち主だった。


 鎧の男はそれを聞いて高笑いを上げた。

「モンスターテイマー……そうだったな……だが我々は生まれ変わった!」

「もはや以前の俺ではないぞ!新たな力を見せてくれるわ!グハハハハ!」

 彼は斧を高く掲げ、その刃が炎を受けて不気味に光る。


「余計なことを喋んな!」

 炎の男が鎧の男を窘める。

 しかし聞く耳を持たない。

「全員始末すれば良かろう?どこにも漏れることはないぞ!」


 エレナが遥斗に囁いた。

「こんな連中あの時いたかしら……もっと慎重で狡猾なイメージだったけど……」


 グランティスもデスペアを腰から取り出し、クルクルと回しながら構える。

「まっ、俺は誰だか知らないけど敵ってことでいいよね?」

 彼の表情は普段の軽薄さは消えていないが、目つきは真剣そのものだった。


 シエルが不安げに遥斗を見上げる。

「まだ魔力が回復してないっす……飛べないっす……」


 その時、鎧の男が突如として巨大な斧を振り下す。


「皇帝も、取り巻きどもも、今ここで終わらせてやるわ!フハハハハハ!」


 彼の笑い声と同時に、斧が大地に叩きつけられる。


 轟音と共に地面が割れ、衝撃波が森を震わせた。

 木々が軋む音、地面が裂ける音、そして炎の唸り声が混じり合う。

 遥斗たちはバランスを崩して、逃げだすことも出来ない。


「絶対に逃がさねーよ……逃げ場は……失くしてやる!」

 炎の男が両手を広げると、周囲の森に火の粉が降り注ぎ、次々と燃え上がっていく。


「下がって!」遥斗が叫ぶと同時に、斧が再び振り下ろされ、野営地に向かって衝撃波が襲いかかる。


 テントが吹き飛び、地面が隆起し、一行は衝撃で吹き飛ばされた。


 森が炎に包まれ、逃げ場を失った。

 立ちはだかるは、狂気に満ちたクロノス教団。


「待たせたな、今すぐゲオルグ様の所に送ってやるぞ!」

 ダクソが斧を構え直す。


「アルケミック!」

 遥斗とエレナは魔力銃を構え、マーガスはミスリルの槍を錬成した。

 ダクソとイグナス……生まれ変わったふたりとの戦いが、今始まる。

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― 新着の感想 ―
過去の戦闘も含めてですが 「何しとんねん?さっさとポーション作らんかいや!愚図やなコイツは」 と思う場面が多々あり…
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