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【アニメーションMV有】最弱アイテム士は世界を科学する〜最弱の職業と呼ばれ誰にも期待されなかったけれど、気づけば現代知識で異世界の常識を変え無双していました〜  作者: 東雲 寛則
第4章 エルフの呪詛編

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247話 魔法都市

 アルマグラードを後にした「ファラウェイ・ブレイブ」一行は、ソフィア共和国の首都アルカディアに向かっていた。

 長旅の途中、彼らは珍しい光景を目にしていた。

 街道のいたるところにエーテルライトを上回る魔力結晶が埋め込まれ、その柔らかな光が道を照らしている。

 他国よりも発展した魔法技術の一端が、そこかしこに垣間見えた。


 ミラージュリヴァイアスの背に乗った一行は、遠くに見える都市を目指して進んでいく。

 巨獣は地面を水のように変え、その波間を泳ぐように移動した。

 その姿は巨大な白鯨が陸上を優雅に進むようで、周囲の旅人たちも驚嘆の声を上げていた。


 やがて、彼らの前にソフィア共和国の首都「アルカディア」の姿が現れた。

 晴れ渡った青空の下、太陽の光を浴びて輝く巨大な城壁。

 その壁面は無数の魔力鉱石で装飾され、優美な虹色の光を放っていた。


「あれが......ソフィア共和国の首都アルカディア」


 美咲は思わず息を呑んだ。

 街並みは基本的には石造りの中世ヨーロッパ風だが、そこかしこに見られる装飾や細部には洗練された魔法技術が組み込まれていた。

 街灯は魔力結晶で淡く光り、一部の建物には透明なガラスのような素材が使われ、明るく開放的な印象を与えている。


「すごい......これが魔法の都と呼ばれる理由ね」

「ただのこけおどしだ。意味があるとは思えん」

 涼介は美咲にそっけなく言い放った。

 彼の目は、アルカディアを戦闘力で判断しているようだった。


 街の入口では、優雅な服装の人々が行き交っていた。

 男性の多くは洗練された燕尾服のような上着に、女性は単色ではあるが流れるような生地のドレスを身につけ、全体的に美咲たちの世界の近代を思わせる。


「みんな、ここからは歩いて行きましょう。神獣をこのまま連れていくと、向こうで大騒ぎになるわ」


 美咲の言葉に、るなの耳がピクリと動いた。

 さくらは安心させるように、るなの頭を撫でる。

 そして、巨獣に向かって何かを呟く。


「ここで待機して。私たちが戻るまで隠れていてくれる?」


 ミラージュリヴァイアスは丁寧に美咲達を地面に下す。

 巨獣はさくらの命令を理解したようで、城壁から離れた林の中に姿を隠した。


「おぉ!さくらやるじゃん!完全に言うこと聞くようになったんだね!」

 千夏が喜びの声を上げる。


「……当然」

 さくらの返事はいつもの通り素っ気なかったが、その横顔には微かな誇らしさが浮かんでいた。


 デミットは物思いにふけるように城壁を見つめている。

 なぜ彼がここにいるのか。


 アルマグラードを出発する前、彼は美咲のために空間魔法の魔導書について情報を集めていた。

 ノヴァテラ連邦中を探し回ったが、残念ながら「虚空の扉」の手がかりは見つからなかった。


 しかし、ギルドで集めた情報の中に、ソフィア共和国の王立図書館が関係するとの言及があった。

 魔法研究が盛んなこの国なら、空間魔法についての知識も蓄積されているはずだ。

 デミットは美咲のために同行することを決めたのだった。


「さて、行きましょうか皆さん」

 デミットが一行に向き直った。

「美咲さん、この国の王立図書館には、探している魔導書についての情報があるかもしれません。ノヴァテラでの調査は残念な結果でしたが、ここなら希望があります」

「本当にありがとうございます、デミットさん!」

 美咲の顔が明るくなる。


「まーそのくらいはやってもらわないとね!結構足止め食らったしー。涼介の時間を無駄にした罪は重いよ?ギルティ!」

 千夏が笑顔で言った。

 デミットが引きつった笑顔で千夏に答える。


 入国ゲートへと向かう道すがら、美咲は周囲の人々に興味を示した。

 ソフィア共和国の市民は他国より優雅で、教養があるように見えた。

 街の入口には、魔法使いと思われる者たちがいくつかのグループで話し込んでいた。

 彼らの手には専門書や精緻な杖が握られ、その佇まいから高レベル魔術師である事が見て取れる。


「この国には魔法使いが多いのね」

 美咲が呟いた。


「ええ、そうです」

 美咲の言葉にデミットが返す。

「ソフィア共和国は魔法研究に力を入れており、各地から才能ある魔術師が集まってくるのですよ。その研究結果は各国に持ち帰られ、生活の役に立ったり、モンスター討伐に活用されたりします」


 ゲートに到着すると、そこには整然とした列ができていた。

 審査は淡い青の制服を着た職員たちによって行われ、彼らの中にも魔力量が多い者の存在が感じられる。


「次の方、どうぞ」

 順番が回ってきた美咲達は、優雅に装飾された審査室へと案内された。

 そこには知的な雰囲気の若い女性が座っていた。

 彼女は美咲たちの姿を見て、やや目を細める。


「この国にはどういったご用件で?」

 涼介が答える前に、突如として警報が鳴り響いた。


「強力な魔力反応を検知しました。直ちに確認を行います」

 拡声器から流れる声に、審査室の職員たちが素早く動き始める。


「おい!これ、やばいんじゃないのか?何が起きている?」

 大輔が警戒を強め、状況の把握につとめる。


「強力な魔力源を検知しました」

 審査官が緊張した面持ちで告げる。

「あなた方の中に、危険な装備を持ち込んでいる方がいるようですね」


 その瞬間、彼女の視線が涼介の腰に下げられた「無双ノ剣」に向けられた。

「その剣……一体どのような意図で持ち込まれたのでしょうか?ご説明していただけますか?」


 涼介は冷静に対応しようとしたが、既に審査室の周囲には青い上着の制服を着た警備員が集まり始めていた。

 彼らは敵愾心を隠す事なく、涼介たちに懐疑の視線を向けている。


「……俺たちは......ただの冒険者だ……それなりの装備は持っている」

 涼介の声は静かだったが、その瞳には既に鋭い光が宿っていた。


「申し訳ありません。検査が必要です」

 審査官の背後から、より格式高い制服を着た男性が現れる。

「武器を一時的にお預かりすることになります」


 涼介の表情から感情が消えうせた。

 彼は静かに「無双ノ剣」に手をかける。

 剣を数センチだけ鞘から引き抜くと、すさまじい魔力が放出された。

 部屋の温度が一瞬で下降し、空気が震えるような感覚を全員が覚えた。


「貴様!反乱分子か!」

 審査官は顔色を失った。

 圧倒的な力の前に、警備員たちは思わず後ずさる。


「待ってください!」

 デミットが慌てて仲裁を行う。

 彼は穏やかな笑みを浮かべながら、内ポケットから何かを取り出した。


「これをご覧ください」

 差し出されたのは、ノヴァテラ連邦の公式印章が押された文書だった。

 その文面を目にした審査官の表情が急変する。


「『ファラウェイ・ブレイブ』......勇者様の一行......!」


 彼女の声は震えていた。

 別の警備員が駆けつけてきたが、審査官の女性が説明を行う。


「異常な魔力が確認されましたが、危険はないと判断されました。ご安心ください」


 緊張した空気がようやく和らぎ始めたその時、厳かな足音が響いた。

 警備員たちが敬礼する中、一人の男性が姿を現した。


「何事か?」

 彼の声は低く、しかし力強く響く。

 上質な布地で仕立てられた深紺の上着に、肩から腰にかけて赤と白の飾り帯が斜めに掛けられていた。

 腰には精巧な杖が下げられ、高位の魔術師だと一目でわかった。

 肌に刻まれた細い傷跡、鋭い眼光を放つ瞳から歴戦の猛者の風格が漂う。


「バレーン魔術総監、こちらは……」

 審査官が慌てて説明を始める。

「話は聞いている」


 バレーンと呼ばれた男は、デミットの方を向いた。

「ラスコーリ殿、ご無事で何よりです」

「久しぶりです、バレーン殿」

 デミットは優雅に会釈する。


「早速首相閣下にお取り次ぎします」

 バレーンは美咎たちを見て続けた。

「ファラウェイ・ブレイブの皆様、アルカディアへようこそ。エレノア・シルヴァーン首相がお待ちです」


 涼介はしばらくバレーンを観察した後、剣を完全に鞘に収めた。

「わかった。案内してもらおう」

「では、こちらへ」


 馬車で首都の中心部へ向かう道中、美咲は街の構造に心を奪われていた。

 建物は石造りの伝統的なものが基本だが、魔力結晶を用いた照明や装飾が施され、全体的に優美で洗練された印象を与えていた。

 街の中央には大きな広場があり、そこでは魔法使いたちが若い生徒に魔術を教えている姿も見られた。


「これが魔法都市アルカディア……綺麗」

 美咲は思わず呟いた。

「そうでしょう」バレーンが誇らしげに答える。

「我が国は魔力と機械の融合を追求してきました。他国では重労働とする作業も、魔力の応用で効率化されているのです」


 中央広場に到着すると、そこには優雅な魔力結晶のモニュメントが聳え立っていた。

 その周囲を取り巻くように立つ建物の一つこそが、首相官邸だった。


「皆様、こちらへどうぞ」

 バレーンの案内に従い、一行は官邸の中へと足を踏み入れた。

 厳かな雰囲気の中、首相の謁見室へと美咲らを導いた。


「首相閣下、お連れしました」

 扉が静かに開き、そこには謁見室の壮麗な光景が広がっている。

 そして室内の窓際には、一人の気品ある女性が佇んでいた。


「ようこそ、アルカディアへ」

 年齢を感じさせない優美な声が室内に響く。

 赤褐色の髪は肩のあたりで切り揃えられ、その一部が緑色の宝石をあしらったヘアピンで留められていた。

 深い緑色のドレスは身体のラインに沿うようにデザインされ、胸元には魔力を帯びた鉱石のブローチが輝いている。

 琥珀色の瞳は、穏やかながらも鋭い観察眼を感じさせた。


 こうして、エレノア・シルヴァーン首相との謁見が始まろうとしていた。

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