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【アニメーションMV有】最弱アイテム士は世界を科学する〜最弱の職業と呼ばれ誰にも期待されなかったけれど、気づけば現代知識で異世界の常識を変え無双していました〜  作者: 東雲 寛則
第4章 エルフの呪詛編

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233話 金と銀、そして

 暗く湿った石室に、ローブを纏った二人のエルフが佇んでいた。


 片や金色の輝きを放つ髪と、太陽のように燃える赤い瞳を持つ男性エルフ。

 その姿は荘厳で威厳に満ちており、周囲の空気までもが萎縮しているようだった。


 もう一方は、月光のような銀髪に、海よりも深い青の瞳を持つ女性エルフ。

 その美しさは神々しく、見る者の魂をも魅了する不思議な輝きを放っていた。


 彼らの前には、同じく黒いローブを身にまとった、壮年の男と少年が畏まって跪いていた。

 クロノス教団の一員、宰相ゲオルグの部下——ダクソ・リスカーグとイグナス・プロット。

 彼らはモンスターテイマーの力を使い、レギアス・ソルを混沌に陥れた教団の幹部だった。


「ゲオルグはどうなったの?」


 女性エルフの声は優雅でありながらも、どこか冷たく響いた。

 その問いかけに、ダクソは頭を下げたまま答える。


「はっ、残念ながら...死んだものと思われます」


 その言葉に、金髪のエルフが眉を寄せた。


「神獣の力は使わなかったのか?」


 重厚な声が石室に響き渡る。

 ダクソは恐る恐る顔を上げ、説明を始めた。


「アラクネイアの力を最初に使う予定はありませんでした。しかし最悪の事態、軍務尚書ブリードと対峙すれば使わざるを得ないと語っておりましたが」


 ダクソは一瞬言葉を切り、慎重に続ける。


「アラクネイアの力を使えば、人間であるゲオルグは死に、精神もいずれは神獣と一体化して人格を維持できなくなってしまいます。神子である皇帝を抹殺してから、神獣の力で帝都の人間を殲滅するはずでした。結局皇帝も殺せていないので、作戦はほぼ失敗です」


 女性エルフは深いため息をついた。


「モンスターフューザーの力を使うことなく敗れたのでしょうね...アレを放てば止められる者などいないのですから」


「用意したモンスター共はどうなった?」


 男性エルフの鋭い問いに、イグナスがびくりと体を震わせる。

 彼は頭を下げたまま、おずおずと口を開く。


「ク、クマタローは殺されちゃった...」


 幼さの残る声で絞り出すように答える。


「たぶん、ダクソのおっちゃんのとこ以外は...全滅だと思う...」


 女性エルフは失望と苛立ちを隠せない様子で、冷ややかな視線を二人に向けた。


「酷い有様ね。あれだけ時間と労力をかけた結果がこれですか」

「やはり人族に任せるべきではなかったのかもしれません」


 男性エルフは手を振り、諦めたように言う。


「今さら言っても仕方あるまい。ダンジョンがあれば補充はいくらでも出来る」

「でも強い個体を作るには時間がかかるわよ?モンスターを操れる子も減ってしまったし...最初から強いモンスターを作る計画も進めてるけど、すぐに実用化は無理ね」


 女性エルフは眉を寄せる。


「何故そんなに焦ったのかしら?あの子らしくもない」


 その問いにダクソが慌てて答える。


「はっ、それには理由がございます。異世界から召喚されし者にモンスターテイマーがいました。その者はテイムの上書きを行い、あまつさえ神獣を2体同時に操りました」


「異世界人か...」


 男性エルフの顔に影が差す。


「やはりこちらの世界の常識が通用しないか。ゲオルグが計画を繰り上げたのは仕方あるまい」


 ダクソは続けた。


「今回召喚されたメンバーは6人。その中に勇者もいました...」


「勇者!」


 女性エルフの青い瞳が見開かれる。


「厄介ね。伝説では神子以上の力を持という。はぁ、この世界が一気に終焉を迎えなければいいけど...」


「闇は確実に広がり続けている。オカートだけが我らに残された希望だ。一刻も早く、神の力を振るう者共を消し去らねば!」


 男性エルフは静かに、しかし力強く語る。


 床に跪いたままのイグナスが、突然声を上げた。

「俺に!俺に新しい力を貰えないかな!」

「ゲオルグのおっさんやバートラムみたいな力があれば!そうすれば俺だって!」


「バートラムは死んだぞ?」


 エルフの男の言葉に、ダクソとイグナスは息を呑んだ。

 二人の顔から血の気が引いていくのを見て取れる。


「まさか...バートラム殿まで...」

 ダクソが絶句する。

 バートラムは戦闘能力では、ある意味ゲオルグよりも遥かに上だった。

 ネクロマンサーの能力がクロノス教団にとって有益だったため、帝都殲滅作戦に参加していなかっただけだ。


「一体誰に...」

「マテリアルシーカーという冒険者パーティらしいわね。帝都から来たそうよ」

「まさか...」


 震える声でダクソが呟くと、男性エルフも物憂げに頷いた。


「ゲオルグが死んだことと無関係ではないかもしれん。いやその可能性の方が高いだろう」

「そのパーティ、今はエルフの国に来ているんですって」


 女性エルフは冷たい微笑みを浮かべた。

「偶然...じゃない。我々教団を追っていると見るべきね」


 一瞬の静寂が室内を支配した後、ダクソが覚悟を持って口を開く。


「やはり私も新たな力をいただけませんでしょうか?」

「俺も!お願いします!」

 イグナスも必死に訴えかける。


「命の保証はないわよ?モンスターテイマーの力を得ただけでも奇跡だったんだから」


「承知の上です!」

 ダクソは力強く答えた。

 その眼差しには、覚悟と決意が燃えていた。

「この世界を救うためならば!」


 男性エルフは二人をじっと見つめ、やがて静かに頷いた。


「分かった。幸い冒険者はまだいる。バートラムが十分働いていてくれていたからな」


 そして彼は重々しく告げた。

「転生の儀を執り行う!」


 男性エルフに連れられ、ダクソとイグナスは石室を後にした。

 ドアが閉まる音が、重くこだまする。


 残された女性エルフは、静かに溜息をついた。


「折角助かった命を...馬鹿な子たち」


「あの方たちも世界を救いたいのです。尊い魂に導きあれ」


 カーテンの陰から柔らかな声が響いた。

 それは若い女性の声だった。


「ツクヨミ。どうかあの二人の力になってあげてください」


 ツクヨミと呼ばれた銀髪のエルフはカーテンの方へ向き直り、深々と頭を下げた。


「承知いたしました。メシア」


 メシアと呼ばれたのは、クロノス教団の教祖だった。

 彼女の存在は、この世界に何をもたらすのだろうか——

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