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【アニメーションMV有】最弱アイテム士は世界を科学する〜最弱の職業と呼ばれ誰にも期待されなかったけれど、気づけば現代知識で異世界の常識を変え無双していました〜  作者: 東雲 寛則
第4章 エルフの呪詛編

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198話 エルフの国への同行者

 シルヴァリス山脈からの朝日が大地を照らす中、馬車は深い森の中を進んでいた。

 揺れる車内には商人とその護衛を務める四人組のパーティ、そして別の五人組冒険者パーティが乗り合わせている。


 マーガスは窓際の席で、豪快に寝息を立てていた。

「昨日は徹夜で遊んでたから...」

 遥斗は苦笑しながら呟く。


「これは...これは。マテリアルシーカーの皆様でございますか!?」

 中年の男性商人が、興奮気味に声をかけてきた。

「昨晩、宿でご一緒できたことは本当に光栄です!」


「あ、いえ...そんな」

 遥斗は曖昧に笑みを返す。


「失礼ながら、エルフの国ではどのような素材をお求めで?」

 商人は、まるで商売の話でも持ちかけるかのような口調だった。


「え?なぜ素材採取だと思われたんですか?」

「マテリアルシーカーというお名前に、エルフの国ときたら、誰でも分かることでございますよ!」

「そうなんですか?」

「ええ!エルフの国には希少な魔力鉱石があり、珍しいモンスターも生息しておりますから」


 商人の話は講義でもするかのように続く。

「あそこは素材採取やレベルアップには最高の地なのです!」

「レベルアップなら、僕たちも目的は同じです!」

 若々しい声が割って入る。

 五人組パーティの一人が、笑顔で手を挙げた。

 遥斗たちと同年代に見える。


 その元気な声を聞きつけ、クスクスという忍び笑いが聞こえる。

 商人のガードを務める四人組、明らかにベテランの雰囲気を漂わせるパーティからだ。


「なんだよ、何がおかしいんだ!」

 若手パーティのメンバーが食ってかかる。

「いや...別に」

 ベテランパーティの一人が、余裕の表情で受け流す。


「お前たち、ランクはどれくらいなんだ?」

 別のメンバーが、やや挑発的な口調で尋ねる。

「Dランクだけど!」

 堂々と答える若者に、遥斗は思わず目を見開いた。

(僕たちは...確かFランクだったよね...)


「おい!聞いたか!Dだってよ?はっはっは!」

 ベテランパーティが声を上げて笑う。

「俺らはBランクだが、それでもエルフの国でレベルアップなんぞ夢のまた夢だ」


「どういう...意味なんですか?」

 遥斗がおずおずと問いかける。


「あそこにはとんでもないレベルのモンスターが紛れている。命がいくつあっても足りんよ」

 リーダーらしき男が、真剣な表情で告げる。

「我々も安全地帯での護衛が精一杯さ」


「ごくり...」

 遥斗の喉が鳴る。

 その瞬間、エレナと目が合った。

 彼女の瞳にも、不安の色が浮かんでいる。

 その間もマーガスは呑気に寝息を立てていた。


「生きて帰れるうちに帰った方がいい...」

 ベテランパーティのリーダーが忠告を口にしかけた時、若手パーティの一人の声が響く。


「ノヴァテラ連邦からここまで来たんだ、今さら引けるわけないだろ!」


「ノヴァテラ...?」

 遥斗が驚いた声を上げる。

 大陸の反対側からはるばる来ていたとは。


「へい、リーダー、レベルはどれくらいなんだ?」

 ベテランの一人が、少し興味を示しながら尋ねた。


「51だ!」

「ほう...」

 ベテランたちの表情が、僅かに変化する。

「その年齢にしては、なかなかだな」


 しかし、次の言葉は容赦なかった。

「だが、エルフの国に入って安全に帰るにはな...レベル100相当が必要だ」


「え...」

 若手パーティメンバーの顔から、血の気が失せる。


「ちなみに俺はレベル87。それでも、深部には近づかない」

 ベテランのリーダーが、淡々と告げる。


「そ、それは...」

 若者たちの表情が、みるみる青ざめていく。

 一緒に遥斗の顔も青ざめた。


「まぁ、マテリアルシーカーなら問題ないだろうがな」

 ベテランのリーダーが、マーガスの寝顔を見つめながら言う。

「ゲイブさんを倒したパーティ...噂では一騎打ちで勝ったとか」


「マーガス様を見てください」

 もう一人のベテランが声を潜める。

「こんな危険な場所で、ここまで余裕で眠れる者がどれだけいると?ただ者じゃありませんよ」

「そうだな」

 リーダーが頷く。

「領主の件も聞いた。まさか街一つを救うとは...パーティランクA、もしくはそれ以上か。どうであれ、実力は確かだ」


 ガードの女性が口を開く。

「今まで何度もエルフの国へ行きましたが、あんな風に安らかに眠れる実力者を見たことがありません。むしろ、私たちの方が場違いなのかも」


 若手パーティが尊敬の眼差しでマーガスを見つめる中、遥斗とエレナは思わず目を合わせた。

 徹夜で遊んで単に寝ているだけのマーガスが、いつの間にか英雄のような扱いを受けていることに苦笑を隠せない。


 とはいえ、マーガスの実力は確かだ。

 ぐーぐー寝息を立てる横顔に、確かな強者の風格が漂っているような気がした。


「ところで、ゲイブさんをご存知なんですか?」

 エレナが声をかけた。


「知らない者などいない」

 ベテランは懐かしむような表情を浮かべる。

「イーストヘイブンで彼と互角に戦える者は、軍、冒険者も含めて片手で数えられる程度。職業は格闘家で、レベルは100を優に超えている」


(えっ...)

 エレナの目が見開かれる。

 泣きながら仲間に助けを求めていた姿が蘇る。


(そうか!)

 エレナの思考が巡る。

(優秀な冒険者を捕まえていたということは...当然、彼らよりも強かったということ...)


 自分たちが、あの時負けていれば...アンデッドにされていたか、エルフの国に連れて行かれていたか。

 考えるだけで背筋が凍る。


 エレナは横目で遥斗を見た。

 あの時、ゲイブを圧倒した少年の姿を。

 今でも信じられないという思いがよぎる。


 窓の外では、深い森が果てしなく続いていた。

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