表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/413

1話 修学旅行と不思議な祠

挿絵(By みてみん)

「はぁ...」


 バスの窓に額を押し付けながら、佐倉遥斗は小さなため息をついた。京都への修学旅行。普段なら心躍るはずの2日間の旅も、彼には少し重荷に感じられた。


「遥斗、大丈夫か?」


 隣の席から、冷静な声がした。親友の高橋涼介だ。


「涼介...」


 遥斗が振り向くと、涼介は穏やかな表情で彼を見ていた。


「修学旅行だぞ。楽しもう」


 涼介の言葉に、遥斗は小さく頷いた。


「ねえねえ、男子たち」


 前の席から振り返ったのは、鈴木千夏。涼介の彼女だ。


「私たち、同じグループになれて良かったね。これからよろしく!」


 千夏の隣から、山田美咲も顔を覗かせた。


「うん、楽しい旅行になるといいね」


 美咲の優しい笑顔に、遥斗は思わず目を逸らした。美咲のことが好きだった。でも、涼介の幼馴染でもある彼女に、どう接していいか分からない。


「よし、みんな。グループの確認するぞ」


 後ろの席から声をかけてきたのは、中村大輔。クラスの学級委員で、今回のグループリーダーだ。


「俺たち6人で行動するんだから、はぐれないようにな」


 大輔の隣に座っていた伊藤さくらも、クールな表情でみんなを見渡した。


「あんたこそ迷子にならないでよ。面倒なんだから」


 さくらのツッコミに、みんなで笑う。


「なあ、お前ら」涼介が冷静に言った。「班行動はマジメにやろうぜ。大輔に迷惑かけんなよ」


「さすが涼介、頼りになるね!」千夏が嬉しそうに言う。


 遥斗は、みんなの和やかな雰囲気に少し安心した。こうして、6人の修学旅行が始まった。





「うわぁ...すごい」


 神社の境内に足を踏み入れた瞬間、美咲が感嘆の声を上げた。


「ここ、平安時代からある神社なんだって」


 美咲が説明書きを熱心に読み上げる。遥斗は、その横顔をちらりと見た。


(やっぱり、美咲は可愛いなぁ...)


「ねえ遥斗、これ面白くない?」


 突然話しかけられて、遥斗は慌てて視線を逸らした。


「あ、ああ...うん。面白いね」


「この神社、不思議な力があるって言い伝えがあるんだって。どう思う?」


 美咲の質問に、遥斗は少し考え込んだ。


「う〜ん、そういうのってただの迷信じゃない? でも、もしかしたら...」


 遥斗が言葉を探していると、涼介が静かに近づいてきた。


「おい、二人とも。千夏が何か見つけたらしい」


 涼介の言葉に、遥斗と美咲は顔を見合わせた。


「行ってみよう」


 美咲の言葉に、遥斗は小さく頷いた。




「ここが噂の場所か...」


 大輔が慎重に周りを見回す。神社の奥にある、立ち入り禁止の区域。ここには不思議な祠があるらしい。


「ねえ、行ってみない?」


 さくらが、珍しく興奮した様子で言った。


「でも、危なくない?」


 千夏が不安そうな顔をする。


「そうだな...」涼介が腕を組んで考え込む。「でも、せっかくだし、ちょっとだけなら」


「大丈夫だって。ほら、行こうよ!」


 千夏が涼介の腕を引っ張る。その姿を見て、遥斗は複雑な気持ちになった。


(僕なんかじゃ、美咲を守れないよな...)


「遥斗、どう思う?」


 美咲の声に、遥斗は我に返った。


「え? あ、その...」


 言葉に詰まる遥斗を見て、涼介が冷静に言った。


「行くなら全員一緒だ。はぐれるなよ」


 みんなの期待の目に押されて、遥斗は小さく頷いた。


「う、うん...行こう」




「これが噂の祠か...」


 立ち入り禁止区域の奥深くで、6人は古びた祠を見つけた。


「すごい...こんな古い祠が」


 美咲が感動した様子で祠を観察する。遥斗も、なんとなく興味が湧いてきた。


「この模様、何か意味があるのかな」


 遥斗が祠の表面を観察していると、千夏が声をかけてきた。


「ねえ、写真撮ろうよ!」


「おい、そんなの撮っちゃダメだろ」


 涼介が冷静に制止するが、千夏はもうスマホを構えていた。


「いいじゃん、記念に...」


 その時だった。


 カシャッ!


 フラッシュが焚かれた瞬間、祠が突如として輝き始めた。


「な、何!?」


 大輔が驚いて叫ぶ。


 眩い光が6人を包み込む。


「きゃあっ!」


「ちょ、待て! これは...!?」


 パニックに陥る6人。しかし、声を上げる間もなく、光は彼らを飲み込んでいった。


 そして──。


 目が覚めると、そこは見知らぬ世界。


 6人の足元には、奇妙な魔法陣が描かれていた。


「こ、ここは...?」


 遥斗の呟きに、誰も答えられなかった。


 彼らの冒険は、こうして始まった。



OPアニメ:https://www.youtube.com/watch?v=dZOsr2zRszo

原画Ver.

挿絵(By みてみん)


アニメVer.

挿絵(By みてみん)


本作の主人公「佐倉 遥斗」。

大人しく控えめな性格。クラスにいると空気に溶けこんでしまう欠点があります。

自己主張が苦手ですが、内面には人を思いやるやさしさがあります。

読書が好きで、特に科学に関する本をよく読みます。

高校生なので一般的な知識程度です。

理不尽に対する拒絶があまりに強すぎて、その性格まで一時的に変化させてしまいます。

キレると怖い?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
登場人物それぞれの関係性や性格が丁寧に描かれていて、異世界への突然の転移という非日常感の面白さがあります。立ち入り禁止の祠って、ワクワクしますね。今後の展開がとても楽しみなスタートです。
この度はフォローいただきましてありがとうございます。 拝読に参りました〜! こちらでも宜しくお願い致します♪ あらー。祠で罰当たりな事をしてはダメでしたね(心配 フラッシュがトリガーだったのでしょう…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ