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第11話 手作りのランチ

「もう少し進む?」

「そうだね。ユウくんが良いならもう少し進みたい」

「たしかにここで終わりだと配信的にも短いよね」

「お! ユウくんが初配信にして既に配信のことを考えてる!」

「そんなこと言われると照れるんだけど」


 こんなに多くの人たちが俺たちの配信を見に来てくれてるんだ。どうしても配信のことを考えてしまう。

 俺と同じ状況で配信のことを考えない人はいないと思う。


「連戦だと戦闘中のミスとかも出ちゃうかもしれないから、一度ダンジョン内の休息エリアで休んでから進もう」

「そうだね。休息も大事だよね」


 俺とサリナはもう少しダンジョンの深くを進むことを決めたが、その前にダンジョン内にある休息エリアへ向かうことにした。

 休息エリアは魔物が近づかない場所で休むのに最適な場所である。


「それとユウくんは楽しみにしてていいよ」

「楽しみ……? なにを?」

「それは休息エリアに着いてからのお楽しみ!」

「そっか。それじゃ、楽しみにしておくよ」


 サリナは何か用意しているのだろうか。

 楽しみしておいてと言われたが、俺は何のことだか全然分からなかった。


 約五分ほど歩くと、休息エリアに到着した。

 気が利くことにテーブルと椅子までちゃんと用意されていた。


「初めて休息エリアに来たけど、テーブルと椅子も用意されているんだな。ここだけダンジョンじゃないみたいだ」

「そうだよね。このエリアを作ってくれた人に感謝だね」

「ああ、そうだな。長期間ダンジョンに潜る人たちからしても重要な場所だろうな」


 俺が椅子に座り、くつろごうとしているとサリナが俺のことをチラチラ見ながら微笑んでいる。

 一体何だろうと思ったが、先ほど楽しみにしていてと言われたのを思い出した。


「ねぇ、ユウくん」

「どうした?」

「私がいいよって言うまで目を瞑ってもらってもいい?」

「ん? まあ、いいよ」


 俺はサリナに言われた通りに目を瞑る。

 サリナが何やらごそごそと何かを取り出している音だけが耳に入ってくる。


(何をやっているんだ……?)


「できた! もう開けてもいいよ!」

「おおっ!!! これって」


 目を開けると、テーブルの上には大きめの弁当箱に並べて入れられたサンドイッチがあった。


「一応手作り。サンドイッチは作るの簡単だから手作りって言っていいのか分からないけどユウくんがたくさん食べると思って多めに用意したんだよね」

「これ全部サリナが作ったの?」

「そう!」

「どれも美味しそうだなぁ! 超うれしいよ! 食べていいの?」

「もちろん! 食べてもらうために作ってきたんだから!」


 サリナは作るのが簡単だと言っているが、この量のサンドイッチを作るには時間と労力が結構必要になるはず。そう考えると、サリナはダンジョンに向かう数時間前には作り始めていたのだろう。

 起きる時間はそれよりも早くなくてはいけないから、今日は早起きをしてサンドイッチを作ったのだろう。


 俺のためにここまでしてくれるなんて、サリナには感謝の気持ちでいっぱいだ。


 サリナが俺のことを見つめる中、俺はサンドイッチを一つ手に取り、それを口へと運ぶ。


「うん! 美味い! 中に入ってる卵がふわふわで味だけじゃなくて食感もすごく良いよ!」

「本当? あっ! ユウくんって嫌いな食べ物とかない? 本当は作る前に聞いておかないといけないのに聞くの忘れてた……」

「大丈夫だよ。嫌いな食べ物もアレルギーとかも全くないから」

「それなら良かった」


 俺が最初に口にしたサンドイッチは卵サンドだったようで、口に入れた瞬間に卵のふわふわとしたやわらかい食感とほんのりと甘みを感じた

 このサンドイッチは完璧に俺好みの味のサンドイッチだった。


 その後も俺は次々に色々な味のサンドイッチを口に運ぶ。

 サリナはそんな俺を微笑みながら見つめているだけだったので俺はサリナにも食べるように言う。


「サリナも一緒に食べよう」

「えっ? でも、これはユウくんに食べてもらうために作ったやつだし……」

「一人で食べるよりサリナと一緒に食べる方が俺は楽しいと思うんだけど……」

「そう? それなら私も食べようかな」

「一緒に食べよう!」


 サリナも一緒にサンドイッチを口に運んでいく。

 幸せそうな笑顔でサンドイッチを頬張っている。


(本当に幸せそうに食べるなぁ。かわいい)


 サリナと一緒にサンドイッチを食べていると不思議と更に美味しくなったような気がする。一人より誰かと一緒に食べた方が食事は美味しいと言うが、あれは本当かもしれないな。


 そんなことを考えながらサリナと一緒に談笑しながらサンドイッチを食べ進める。


「ユウくん美味しい?」

「うん! 俺が好きな味ですごく美味しい」

「ユウくんが喜んでくれてよかった」

「それなら今度は違うものも作ってみようかな?」

「えっ!? 本当に? 無理しないでいいからね?」

「全く無理してないよ。私もユウくんが喜んでくれると嬉しいし、一緒に食べるの楽しいから」

「サリナが無理していないのであれば是非お願いします。それにいつか一緒に作ったりもしてみたいな」

「お! じゃあ、今度一緒に作ろ!」

「あまり料理をしたことがないから色々教えてくれると助かるよ」

「任せて!」


 サンドイッチを食べ終え、少しリラックスした状態で休憩した後、再びダンジョンを進んでいく。


 休憩している間も配信はされたままだったので、配信のコメントでは『この二人お似合いでは?』とか、『なんだこの尊い空間は!』といった声で溢れていたらしい。



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