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窓際の君  作者: 気衒い
窓際の君〜現代編〜

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第九十三話:窓際の君2

「優梨奈っ!!」


「桃香っ!!」


俺達が病室を訪れた次の日。俺とクレアは早速、みんなを引き連れて優梨奈のお見舞いにやってきた。本来、大勢で駆けつけるのは同室の患者に迷惑が掛かる上に優梨奈が疲れてしまうかもしれないので避けなければならなかった。しかし、なんと昨日のうちに優梨奈は個室へと場所を移動していたのだ。そして、是非みんなの顔が見たいとのことでこうして全員でお見舞いに来ることができたのである。


「ううっ…………本当に大事に至ってなくて、良かった」


「もうっ!泣きすぎだよ」


「だ、だって〜〜〜」


お互いのことを想って抱き合う優梨奈と皐月。皐月に至っては涙が止まらない様子だった。まぁ、それもそうだろう。なんせ、二人が会うのはあの焼きいも以来なのだ。あのまま意識が戻らなければもしかしたら、仲直りすることすらできなかったかもしれない。そう考えると皐月がこうなるのも頷けた。


「如月くんから聞いた時はびっくりしたよ」


「そうだね。でも、元気そうで良かったよ」


「はい。ご覧の通り、とっても元気ですよ」


長月と神無月は優梨奈の様子を見て、微笑みながら言う。優梨奈もそれに対して嬉しそうに返した。だが、一方の圭太はどこかイライラしている様子でこう言った。


「本当、気遣わせてごめん。俺、自分に腹が立つわ」


「えっ!?どうしたんですか?」


「いや、何度も考えたんだけど……………やっぱり、葉月がこうなるのは想像できなくてさ。だから、知らぬうちに気遣わせて疲れさせちゃったのかなって」


圭太の言葉になるほどなとみんなは頷いた。優梨奈は普段から注意深く行動している。その為、事故に遭うなんてことは考えづらく、というよりもその想像が全くできないのだ。だからこそ、圭太はまた自分達のことで何か気を遣わせて、そのせいで疲労が蓄積し、事故に遭ってしまったのではないかと思ったのだ。


「いいえ。本当に私の不注意が原因なんです。先輩達は………………何も関係ありません」


視線を下へと落としながら優梨奈は呟くようにそう言った。それを受けた圭太はまだいまいち納得のいっていない感じではあったが、まぁ本人がそう言うのならと渋々、了解した。


「大体、もし睦月先輩の言うことが本当だったとしても私には感謝こそすれ、恨んだり憎んだりなんて気持ちはこれっぽっちもありませんよ」


とても穏やかな顔でそう言う優梨奈。その瞬間、開け放たれた窓から入ってきた陽の光と風によって窓際に座る優梨奈は………………まるでどこかの絵画を切り取ったかのように俺達の目には映った。


「だって、みんなにこうして会えるんだから」


そつ言って微笑む優梨奈は心の底から嬉しそうだった。







            ★






それは何回目のお見舞いだったか。最初に優梨奈から言われた"大事には至っていない"という言葉を信じていた俺だったが、それにしては入院期間が長いんじゃないかと思い始め、交代でお見舞いに行っていたみんなにも段々とそんな気持ちが湧き上がってきた頃……………俺は思い切って、質問してみた。


「優梨奈、その……………答えにくかったら、答えなくていいんだけど」


「ん?何ですか?」


それはちょうど全員が揃ってお見舞いに行った日だった。この日を逃してしまうと二度と訊けないんじゃないか……………もしかしたら、みんながいるから答えてくれるかもしれない………………俺はそんな思いに突然駆られて、気が付けば、こう口にしていた。


「俺の感覚でなんだけど、入院が思ったよりも長い気がするんだ………………だから、どこか強く打ってて退院まで時間が掛かるのかなって」


本当は大事な神経か何かを傷付けていて、退院して普通の生活に戻るまでにかなりの時間を要するのかもしれない。それこそ、数年〜数十年単位で。そうなるとこれまでみたいに一緒に学園生活を送ることはできない。それが辛くてなかなか俺達に言い出せなかった可能性はある。つい先日、詳しい検査はしたみたいだし、流石に結果は分かっているはずだからな。それが思ったよりも治るのに時間が掛かる症状とかで優梨奈の性格的に俺達に気を遣わせまいとしていることも考えられる。なんにせよ、話してくれないことには何にも始まらない。もしかしたら、俺達の方で何か力になれることがあるかもしれない………………いや、きっとなってみせる!優梨奈の明るさにはこれまでにも沢山、勇気付けられてきたんだ

。だから、今度は俺達が彼女に何かしてあげる番なんだ。


「……………事故での怪我は俺達が想像しているよりも重症だったのか?」


「………………」


俺が遂にした、その質問に心なしか瞳を揺らしたかと思うと俯きだす優梨奈。そんな彼女の様子に"やっぱり"という思いが込み上げる俺達に対し、優梨奈はゆっくりと顔を上げて、こう言った。


()()()()()先輩達に言ったように大事には至っていませんのでご安心下さい」


「そ、そうか!そうだよな!良かった〜!やっぱり、大丈夫だったんだ〜…………………ん?今、"事故の方は"って言った?」


俺のその質問が果たして彼女に届いたのか、届いていないのか………………優梨奈は今にも壊れてしまいそうな程、儚げな笑みを浮かべて小さく呟いた。


「ですが…………私の命、そう永くはないそうです」







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