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窓際の君  作者: 気衒い
窓際の君〜現代編〜

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第七十五話:雨降って地固まる

「神無月、この後暇?」


「うん。何?まさか、またゲーセン?」


「おぅ!まぁ、俺は別にどっちでもいいんだけど、誰かさんが行きたそうにしてたからな」


「睦月くんのせいでしょ、それは!どうしてくれんだよ。今まであんなこと知らなかったのに君のせいで僕は…………」


「ハマっちまったか」


「うん」


「俺も最初はそうだったよ。でも、すぐにその感覚にも慣れるから。そのうち、段々と適度な距離感が分かってくるぜ」


「本当?」


「ああ」


「なら、良かった」


教室で神無月と圭太が和気藹々と話をする。あの体育祭から数日経った今では昔から親友だったのではと思う程、二人は仲良しになっていた。


「ねぇ、聞いた?」


「うん!私、やっぱり絶対そうだと思う!」


「前々から、あの二人は怪しいと思ってたのよね」


「嘘つきなさいよ!あんた、睦月くんは如月くんとって言ってたじゃない」


そして、案の定というべきか、こうして良からぬ妄想を繰り広げる一部のクラスメイトが現れるのだった………………ってか、今俺の名前出てたよね?


「親友を取られたみたいで寂しい?」


「んな訳ないだろ。むしろ、圭太にはもっと交友関係を広げて欲しいと思ってたんだ。それこそ、あいつと初めて会った時から」


「むぅ……………そうよね。彼は私よりも前に拓也と出会っているのよね」


「クレア?」


「……………拓也。もしも、睦月くんがいなくなって寂しさを感じたら、言ってちょうだい。私がいつでも代わりになるから」


「突然どうしたんだ?圭太はいなくなったりしないだろ。それにお前に圭太の代わりは無理だよ」


「えっ!?それって、私がその程度の存在ってこと…………」


「あいつは親友でその代わりが務まる奴なんかいる訳ないし、クレアは別ジャンルだから」


「別ジャンル?」


「その……………違う意味で大切な人ってことで」


「っ!?拓也っ!!」


「おっと!どうした?貧血か?」


突然、椅子から立ち上がったクレアだったが、何を思ったのか、そのまま隣の席の俺まで倒れ込んできたのだ。


「……………そうかも。少しクラクラするから、しばらくこのままでいさせて」


「本当に大丈夫か?気を付けろよ?」


「本当、うん。そうね。発言には気を付けましょう、お互いに」


「?」


そこから、クレアの顔の火照りが収まるまでは結構かかったのだった。






            ★






「あれ?」


「ん?」


放課後の屋上。そこに二つの声が重なった。


「はぁ……………何故、ここに睦月先輩が」


「それはこっちの台詞だよ。葉月に呼ばれてきてみれば、一番見たくない顔を」


「は?それこそ、こっちの台詞なんですけど!………………って、今何て言いました?」


「皐月さんはちょー性格良くて美人ですー」


「すんごい棒読みですね。ってか、真面目に答えて下さい」


「お前の顔なんて見たくもない」


「あぁ、はいはい。ところで、睦月先輩も優梨奈に呼ばれて来たんですよね?」


「ちゃんと聞こえてんじゃねえか!無駄なやり取りさせんな」


「今のは先輩が勝手にしたんですよね?」


「とことん、俺達って噛み合わないよな」


「はい。主に睦月先輩のせいで、ですね」


「「……………」」


そこから、しばし流れる沈黙。屋上は二人以外は誰もおらず、そうなるとただただ風の吹く音だけが聞こえていた。


「……………思うんですけど、これって優梨奈の計らいなんじゃないでしょうか?」


「……………だな。あいつ、気遣い凄いし」


「大方、私達を仲直りさせようと思って……………ははっ。あの子、本当他人想いで真っ直ぐですよね。まだ、私との仲直りもまだだっていうのに、こうして先輩の方を優先させて」


「そんな親友にお前はあんなこと言って、あんな顔させたんだぞ」


「………………はい。あれは私が完全に悪いです。凄く反省しています」


「反省しているかどうかなんて、周りが判断することだ………………ってことはともかくとして、あれは誰もいけなくねぇ」


「いえ、あれは私が」


「たまたま歯車が上手く噛み合わなかった……………考えてみれば、それだけだったんだ」


「睦月先輩……………」


「だから……………ごめん皐月。俺、お前に酷いこと言っちまった」


「いえ。私の方こそ、すみませんでした。睦月先輩に八つ当たりのようなマネをしてしまって」


そこには放課後の屋上で互いに頭を下げ合う奇妙な光景があった。これを第三者が見れば、一体何事だと騒ぎ立てることだろう。


「ふふっ。すっかり、優梨奈にしてやられましたね」


「ここで仲直りしなきゃ、気利かせてくれたあいつに悪いからな……………さて、これで」


「"雨降って地固まる"…………ですかね?」


「ああ。俺の方はな」


「ん?俺の方はって……………あっ!!」


「そうだ」


そこで夕日を背にしながら、彼は戦友の背を押した。


「次はお前の番だ。頑張れ」


これに思わず、ドキッとしてしまった彼女。しかし、本人には悔しいから、絶対に言いたくないのだった。










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