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窓際の君  作者: 気衒い
窓際の君〜現代編〜

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第七十四話:体育祭

体育祭の日がやってきた。これは赤組と白組に分かれて戦う、文化祭と対をなす学園行事である。スポーツの秋と呼ばれるこの時期に行われる体育祭は各クラス共、一丸となって取り組むイベントであり、自分達の敗北は所属する組全体に影響を与えてしまう為、みんなプレッシャーを感じながら頑張るのが常であった。そして、本来であれば俺達もそのはずだった。何の気兼ねなく、体育祭に全力をぶつける……………そのつもりでクラスでの練習にも積極的に参加していたのだが……………


「神無月くん、どうしたの?」


「ごめん。大丈夫」


「睦月くん、大丈夫?」


「ああ。悪いな、足引っ張って」


やはり、あの時のことを引きずっているのだろう。クラスのエースとなるはずの神無月と圭太は全然結果を出せていなかった。しかし、その一方でクレアは…………


「ふっ!」


「霜月さん、凄い!!」


「やっぱり、桁が違うわね」


「それに前よりもどことなく表情が柔らかくなった気がするし」


今もリレーで一位を取り、クラスに、そして白組に貢献していた。あ、ちなみに俺達は白組です。


「クレア、お疲れさん」


「どうも……………あの二人の調子は?」


「ご覧の有り様だ」


「……………なるほど。まだ仲直りしていないのね」


「ああ…………あれからお互い、目を合わそうともしないし、圭太に至っては皐月ともそんな感じだ」


「しかも皐月さんと優梨奈も同じような感じなんでしょ?……………本当、人間関係って、ままならないわね」


「でも、仲直りさえすれば、前よりももっと仲良くなれる……………俺はそう信じてる」


「あなたが言うのだから、きっとそうなんでしょうね」


「ああ!だからこそ、人と人との関係って面白いし、素晴らしいんだ!……………まぁ、その分難しいことや苦労は沢山あるけど」


「そうね。私はそれをあなたに教わったわ」


「クレア……………」


「じゃあ、私達はとりあえず体育祭を精一杯頑張りましょう!それが今、私達にできることだから」


「ああ!そうだな!」






            ★





プログラムは滞りなく進み、現在は昼休憩の時間。俺とクレアは優梨奈を誘って、昼飯を食べていた。


「拓也先輩、クレア先輩………………先日はすみませんでした」


「謝ることはないよ。優梨奈は何も悪くないんだから」


「そうよ。たまたま、ボタンが掛け違えちゃっただけで誰も悪くないもの」


「でも…………」


「おいおい。今日は待ちに待った体育祭だぞ?いつまでもそんな表情でいないで少しは楽しもうぜ!!」


「拓也の言う通りね。それに優梨奈は私達と同じ白組なんだから、早く調子を取り戻してもらわないと困るわ」


「拓也先輩……………クレア先輩……………」


「とりあえずさ、今は目の前のことを一生懸命やって、それでもまだ悩み事があるのなら、それはそん時に考えればいい」


「人間ってそんなに器用に出来ていないから、いくつも同時に考えているとパンクしちゃうわ」


「………………そうですね。ありがとうございます。先輩達のおかげで私、目が覚めました。桃香のことは体育祭が終わった後に考えます」


「うん。それがいいな」


「偉いわね、優梨奈」


「ちなみになんですけど、私があの場からいなくなった後、何か起きました?」


「……………ああ。皐月に対して、圭太が苦言を呈した。そして、そんな圭太に神無月もちょっとな」


「なるほど。じゃあ、それぞれが今はバチバチなんですね」


「ちょっと拓也!本当のことを言ってどうするのよ!そういう時は心配かけないように黙っておくのが正解なんじゃないの?」


「そんなことしたって、いずれはバレるだろ。それになるべく優梨奈には嘘をつきたくないし、隠し事もしたくない」


「そ、それはそうかもしれないけど」


「あの〜クレア先輩?そういうことは本人のいないところで相談するのがいいんじゃないでしょうか?」


「っ!?ご、ごめんなさい!私ったら!!」


「いや、謝られると余計に傷を負いますけど…………主に私が」


「よ、よし!気を取り直して、午後からのプログラムも頑張っていこう!!」


「え、ええ!頑張って白組を優勝へと導きましょう!!」


「随分と強引な締めですね」


「「ははは……………」」






            ★






「まさか、お前と対決することになるとは思わなかったぞ」


「それは僕の台詞だよ」


午後の種目、一発目は障害物競走だった。クラスから二人ずつ選ばれるこの種目はかなり特殊な競技だった。なんせ、一走ごとに六人ずつスタートしていくのだが、その内訳は完全にランダム。その為、違う学年の者と当たることもあれば、はたまたクラスメイト同士で戦うといったこともあり得る運要素の強いものなのである。


「俺と神無月が戦う確率なんて、どんだけなんだよ」


「計算してみたら?勉強だけはできるだろう?」


「それはこっちの台詞だ。それにお坊ちゃんは運動なんて危ないことできないもんな」


「有難いね。お坊ちゃん扱いしてくる人なんて、君ぐらいなもんだよ」


「ふんっ!」


「ふっ!」


お互い、不敵に微笑む二人。その間にあったのはついさっきまでの気まずい空気ではなく、ライバルと戦う時のような臨場感溢れる空気だった。それは昼食を食べて、気分が変わったからなのか、はたまた体育祭というイベントがそんな空気にさせるのか………………真相は誰にも分からなかった。


「提案がある」


「奇遇だね。実は僕もなんだ」


「この勝負でこの間の決着(ケリ)をつけよう。そんで負けた方は謝罪と勝った方の言うことを聞くってことで」


「いいねぇ。ってか、僕が言おうとしたことまんまじゃん。やっぱり、僕達気が合うんだよ」


「気色の悪いことを言うな……………よし、そろそろだ」


二人はスタートラインにつき、構える。その直後、合図が鳴り、二人は猛スピードで駆け出した。他の選手はそのあまりの剣幕と勢いに圧倒され、思わず立ち止まってしまう程だった。そして、数分後ゴールテープを切った二人はその結果に驚いて、思わず顔を見合わせて同時に笑い合った。その後、体育祭はつつがなく進行し、結果は白組の優勝ということで

幕を閉じた。そうして、この体育祭はただの学園行事ではなく、数人にとっては他に意味のある有意義なものとなったのであった。






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