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窓際の君  作者: 気衒い
窓際の君〜現代編〜

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第五十九話:文化祭準備委員

夏休みが終わり、学園での授業が始まってからどのくらい経った頃か。既に夏休み気分も抜け、いよいよ普段通りの学園生活に戻ってきた俺達にとって、現在最も気になっているイベント……………それが文化祭だった。


「は〜い。みんなも知っての通り、今月末から文化祭が始まります。そんで毎年、クラスから文化祭実行委員と文化祭準備委員を二名ずつ選出しなきゃならないでしょ?だから、それを今、決めちゃいたいと思います」


うわ〜あったな、そんな委員。去年も確か、大変そうに誰かがやってたな………………選ばれちゃった人、ご愁傷様です。


「じゃあ、まずは立候補から」


「はい」


流石、神無月。こういう時は真っ先に手を挙げるよな。


「他は〜?」


「はい」


「長月さんね」


まぁ、そうだよな。長月もそういう感じだよな〜。


「じゃあ、こっからは推薦になります。二人共、誰か名前を上げてみて」


うわ〜これは微妙だよな。二人に認められてて嬉しいと思う反面、作業量も拘束時間も多い仕事をしなくちゃならないという面倒臭さ……………本当、いい性格してますね先生。


「僕からは如月拓也くんを推薦します」


「私からは霜月クレアさんを」


ふ〜ん。如月拓也くんってのが今回選ばれた被害者…………おっと、人か。可哀想に………………って!


「俺!?」


「私!?」


その時、俺とクレアの声はほぼ同時に発されたのだった。







            ★





「よろしくね、如月くん」


「こちらこそ」


あの後、準備委員と実行委員の振り分けは師走先生に委ねられ、結果から言うと俺と長月が準備委員となり、クレアと神無月が実行委員となった。


「……………あの二人のこと、気になる?」


「…………別に」


「じゃあ、何でそんなにテンションが低いのかな?私じゃ不服?」


「そ、そんなことある訳ないだろ!!……………でも」


「でも?」


「…………なんか気になるんだよ!」


「むっ……………でもさ、今って放課後じゃない?そんな時間にどことも知れない場所で二人きり………………これって何かあると思わない?」


「あ、ある訳ないだろ!!今は文化祭のことで話し合ってるはずだ!それにどことも知れない場所って何だよ。きっと、どっかの教室にいるよ」


「……………ふ〜ん」


「な、何だよ」


「そう思いたいだけだったりして」


「っ!?おい、長月!」


「ごめんごめん。ちょっとふざけすぎたね」


「本当だよ。ちゃんと文化祭について、話し合おうぜ」


「それにしても……………はぁ」


「ん?」


「向こうの心配よりも私と二人きりって状況を意識して欲しかったのに……………ボソッ」


その時、長月が一体何を言っているのか、俺には全然聞こえないのだった。







            ★





「こんな機会そうそうないから、まずは謝らせて欲しい………………霜月さん、父さんと母さんが本当にごめん」


「あら?いきなり、文化祭とは関係のない話?」


「でも、これは言っておかないと……………君の人生が狂ってしまっているから」


「それなら、私の方も……………父と母が本当にごめんなさい」


「いやいや、君の方が苦労しているだろう?」


「私の人生は……………確かに狂ってしまっているのかもしれないわ。姉さんはそれが嫌で家を飛び出したのだから……………でも、私は大丈夫。だって」


「彼がいるから?」


「っ!?」


「図星か」


「ちょっと……………変な冗談はやめて」


「へ〜……………じゃあ、この状況も気にならないんだ?」


「この状況?」


「そう。こうして僕らがどことも知れない場所で二人きり………………これは当然、向こうも同じ状況なはず。これって何かあると思わない?」


「あ、ある訳ないでしょ!!今は文化祭のことで話し合ってるはずよ!それにどことも知れない場所って何?私達がいるのはちゃんとした教室よ」


「……………へ〜」


「ほ、本当なんだから。別に拓也がどこで誰と何をしようが……………そんなの…………」


「そう思いたいだけだったりして」


「っ!?」


「ごめんごめん!!言い過ぎたよ!!」


「……………ちゃんと真面目に文化祭のことを考えましょう」


「そうだね……………僕らにとっては最後になるかもしれないんだし」






            ★







「やけにこちらに対して、協力的ですね師走先生」


「別に。こっちにはこっちの目的があるんで」


「ふふん。いつまでその余裕が持つか見ものですね」


「はい?」


「文化祭とは学園の一大イベントの一つ。クラスや部活動が一丸となって取り組むものです。当然、そんなイベントには準備や実行の為の委員が存在します。そして、その委員とは通常クラスで二人ずつ!つまり、必然的に放課後、男女が二人きりとなる!……………これがどういう意味か、お分かりですね?」


「うわ、最後の台詞キモいですね……………あれ?セクハラですか?」


「っ!?ち、違うわ!!な、何を馬鹿なことを」


「馬鹿なことを仰っているのはあなたですよ、教頭先生。仮にも教職に就く者がそんな風紀を乱すようなことを言ってどうするんですか。それに必ずしも二人で委員会活動をしたところでそうなるとは限りません」


「え、そうなんですか?」


「はぁ…………この学園にどれほどの生徒がいるか、ご存知ですか?既に他の人が意中の者、そもそも相方に全く興味のない者、事情は人それぞれでしょう。それにそういったイベント関係の委員は活動期間が短い。終わってしまえば……………後はお分かりですね?」


「で、でもですね!!私の読んだ漫画には……………」


「教頭先生……………ぶっちゃけ恋愛経験ないでしょ?」


「ぎくっ!?」


「ここは現実です。もちろん、教頭先生の大好きな漫画に出てくるようなこともあるかもしれません。ですが、ほとんどそれは起こりえませんよ。なんせ、そもそもそんなシチュエーションありませんからね。それこそ、そんな現場に遭遇するような人が現実にいれば、その人は間違いなく主人公でしょうね………………この世界の」


「むぅ………………」


「それに」


「それに?」


「残念ながら、教頭先生の目論見通りにはなりませんよ。なんせ、あの二人なら、万が一も起こらないので」









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