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窓際の君  作者: 気衒い
窓際の君〜現代編〜

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第三十九話:試験勉強3

「さて、始めましょうか」


「は、はひょい!!」


「?大丈夫?」


「は、はい!!大丈夫です!!」


うわ〜恥ずかしい。盛大に噛んじゃったよ・・・で、でも良かった。早速、クレア先輩と二人きりになれた。現在、私達はそれぞれがマンツーマンで勉強を教えてもらっている。その際、他の声が入ると集中できないんじゃないかということで如月先輩の部屋、誰も使っていない部屋、リビング(距離を離して、台所側とテレビ側のテーブル)で勉強をしているという状況だ。ちなみに私達は如月先輩の部屋を使わせてもらっていた。


「じゃあ、教科書を開いて。え〜と、一年生はどこからどこまでが範囲だったかしら?」


「えぇ〜と、"IS"を使った疑問文〜動名詞までです」


ちなみにクレア先輩の得意科目は英語だった。やっぱり、ハーフだという噂は本当なのだろうか?


「そう。じゃあ、まずは自分で復習していって分からないところがあったら、言ってちょうだい」


「分かりました!!」








「うぅ〜ん。ここがよく分からないな…………クレア先輩?」


気が付けば、三十分が経っていた。その間、黙々と集中して復習することができた。もしかしたら、過去一で勉強に身が入っているかもしれない。やっぱり、誰かとマンツーマンでやるのは効果がある。大勢だと騒いでしまうかもしれないが、二人きりだと監視されているような気にもなるし、その相手が好きな人なら尚更、認めてもらいたいと思ってしっかりと取り組むものだ……………まぁ、その分、至近距離で教えてもらうという当初の目的が果たせていなかったが……………ま、まぁそれはこれからだ。なんせ、たった今ちょうど分からないことが出てきたばかり。これを餌にクレア先輩と……………って、あれ?


「クレア先輩?」


ここで私は違和感に気が付いて、今まで教科書を見る為に落としていた顔を上げた。その違和感とは…………やけに静かすぎるということだった。元々、クレア先輩は真面目に勉強に取り組む人だ。にしても限度というものがある。ペンの走る音や教科書をめくる音、さらにはちょっとした生活音がしてもいいはずだ。それが今は一切ないのだ。おそらく、私が集中して復習することができたのもそのおかげだろう。もしかしたら、私に気を遣ってくれていたのかもしれない。にしてもいつから、こんな静かだったのだろうか……………私はその真意を問う為に目の前にいるクレア先輩を見た。すると…………


「……………」


そこには私の見たこともない表情のクレア先輩がいた。それはいつも私達といる時とは違う、ましてや私抜きで如月先輩や優梨奈と話している時ともまた一味違ったクレア先輩だった。まるで初めて遊園地に訪れた子供のような、待ち侘びていたイベントがやってきて、それに目を輝かせているかのような、そんな表情でクレア先輩は部屋の中を見回していた。


「……………」


それを見た私は直前までの邪な考えが消え、代わりにクレア先輩が今、考えていることを知りたい……………ような知りたくないような複雑な感情に見舞われた。だって、こうしている今でさえ、私なんて眼中にないかのように……………


「っ!?クレア先輩!!」


「っと、ごめんなさい。ぼ〜っとしていて、呼ばれてることに気が付かなかったわ」


何故、そんな嘘をつくんですか?たった今までしていた表情は到底ぼ〜っとしているようには……………それとも咄嗟に嘘をついてしまう程の何かがクレア先輩の中にはあるってことですか?


「……………何を見ていたんですか?」


そんなことは訊けるはずもなく、代わりに私は無難かつ気にもなっていることを尋ねた。すると、クレア先輩は穏やかな顔でこう言った。


「以前から気になっていたのよ。あの男は普段、どんなところで暮らしているんだろうって」


「へ、へぇ〜」


「そう…………ここが拓也の」


その表情を見た途端、何故か私の中から当初の目的は消え去り、それ以上声を掛けることができなかった……………おかげで聞きそびれてしまった英語の分からなかった部分は"Are you in love with someone?"…………その意味と答え方だった。







            ★






「あいつ、ちゃんと上手くいってるのか?…………ボソッ」


「あいつって、皐月桃香のことか?」


「うぇっ!?圭太、お前聞き耳立ててんじゃねぇよ!!」


「立ててねぇよ!!何故か、お前の声はどれだけ小さくても聞こえるんだよ!!」


「何だ、それ?」


「し、知らねぇよ。俺に聞くな」


「あっ、お前もしかして!!」


「っ!?な、何だよ」


「俺のことが好きで通じ合ってるからとか言うなよ?」


「っ!?ば、馬鹿か!!す、好きってお前」


「ん?何焦ってんだ?親友なんだし、当然だろ」


「あ、ああっ!!そ、そういう意味か」


「??」


「ま、まぁ、そんなことよりもあっちはあっちで上手くやってるだろ」


「お前、もしかしなくても…………」


「ああ。皐月の気持ちなら、知ってる……………まぁ、色々あってな」


「へぇ〜」


「何だよ、その目は」


「いやいや。元不良少年が今や、こうして色んな奴の世話を焼いてる……………随分と丸くなったもんだな」


「う、うるせぇよ」


「やっぱり、俺の目に狂いはなかったな。お前は度が過ぎるくらい良い奴だ!!」


「お、おい!!肩を組むなよ!………………心臓が保たないだろ……………ボソッ……………それに」


「ん?」


「俺はお前が思う程、良い奴じゃない」


その時、台所側で勉強していた長月がこっちの方をチラリと見ていた気がした。







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