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窓際の君  作者: 気衒い
窓際の君〜現代編〜
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第三話:席替え

「いきなりなんだけど…………今から席替えしてもらいま〜す!!」


担任の師走柚葉(しわすゆずは)のその一言はクラス中を驚かせた。確かに今の席は進級初日に各々が適当に選んで座り、そのまま今日までその席で過ごしてきたのだから、正式に決めるのは必要なことではあると思う。しかし、それにしても急だった。まだこのクラスで過ごすようになって、一週間しか経っていない。そんな早く席替えするくらいだったら、初めから座席表でも置いておいて欲しいと思うのは俺だけだろうか…………


「なんか物言いだけな顔をいくつか見かけるけど、先生はそれを無視しま〜す!!この教室では先生がルールです!!」


側から聞くと無茶苦茶な言い分に思えることもこの先生だと許されることが多々あった。というのもこの師走柚葉という教師は緩くウェーブのかかった長い茶髪にパッチリとした両目、それでいていつもニコニコとしており、その天然っぽい雰囲気も相まって学園の超人気者なのだ。しかもちゃんとスタイルが良く、出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいるという天が何物も与えた存在である。ちなみに長月と霜月クレアもまた、どことは言わないが非常に豊かであった。


「と・に・か・く!!先生の言うことには従ってもらいま〜す!!じゃあ、前の人から順番にクジを引いていってね〜」


随分と用意がいいな……………ってか、その用意周到さだったら、初日から座席表を作ることなんて造作もなかったんじゃないか?まぁ、怖いから追求はしないが……………


「ん?如月くん、何か言いたげだね?まさかとは思うけど……………文句でも?」


と思ったら、ピンポイントで狙い撃ちされた!?し、仕方ない。ここは正直に言うしか…………


「あの〜その用意周到さだったら」


「うん、ストップ。だいたい言いたいことは分かったから」


「えっ!?最後まで言わせてくれない!?」


「え〜っと、それじゃあクジ引きが好きではない如月くんは最後に残った席に着いて下さい」


「そ、そんな殺生な!?俺にもクラスの行事に参加する権利を!!」


「だ〜め。だって、さっきも言ったじゃない。"この教室では先生がルール"だって」


「そ、そんな……………」


「大丈夫よ。なんせ残り物には福があるんだから」





           ★






おい、誰だ。"残り物には福がある"って言ったのは。


「さ、さぁ〜て、次の授業の用意をしないと!!」


おい、こら元凶。そそくさと教室から出て行こうとするんじゃない。そして、クラスメイト達よ……………そんな憐れむような目で俺を見るな。


「………………」


まぁ、周りがそんな反応になるのも当然といえば当然だった。何故なら、俺の隣の席はつい数十分前に話したばかりの………………あの女だったからだ。


「はぁ。まさか、あなたが隣に来るなんて………………私もとんだ貧乏クジを引かされたもんだわ」


いや、周りは逆に俺が貧乏クジを引かされたと思ってるけどな!!まぁ、厳密にはクジ引いてないんだけどな!!


「よ、よぅ。さっきぶりだな。それにしてもまさか、こんなこともあるんだな。いや〜運命?っていうの?ってか、よくよく考えたら霜月、席変わってねぇじゃん!!そっちの方が奇跡か!!」


「ぎゃあぎゃあ騒がないで。うるさい。あと、今後は一切私に話しかけてこないで。正直、キモいしウザいわ」


これだ。霜月クレアが学園の()()()ではなく、()()()となってしまっている原因は。そりゃ、この容姿と神秘的な雰囲気があれば、入学したばっかの頃は男女問わず多くの者達が積極的に話しかけていたさ。しかし、いつ誰がどんな風に話しかけようと彼女の鉄壁の牙城が崩されることはなかった。それどころか善意で話しかけにいったにも関わらず、手酷いしっぺ返しを食らうなんてことが日常茶飯事だったのだ。そんなことが繰り返されれば、彼女に話しかけようなんて者は自然といなくなり今じゃそんな奴がいれば、めでたく物好き扱いだった。


「おい。俺はいくらそんな風に言われても気にしないが、他の奴にはそんな風に接するなよ?」


「そんな風?」


「ほら、入学したての頃みたいなさ」


「ん?……………あぁ、あの善意という言葉を盾に絡んできたお猿さん達のこと?」


「っ!?おい!!そんな言い方ないだろ!!あいつらは善意で」


「何言ってるの?そんな訳ないじゃない。全部、自分の為に決まってるでしょ」


「は?」


「男子生徒は私の容姿目当てに鼻の下を伸ばしてやってくる。女子生徒は私の容姿にあやかりたいと思ってやってくる。現に私がその時された質問はそれらに関係していたわ。全てどこか利己的な理由があるの。人なんて所詮そんなものよ」


「っ!?お前っ!!」


「これで私の言ったことを理解してもらえたかしら?だから、あなたも彼ら同様、欲望を剥き出しにして話しかけてこないで。はっきり言って迷惑よ」


「っ!?ああっ!!分かったよ!!お前がそんなに言うんならな!!」


この時、言葉とは裏腹に俺の内心ではあることを誓っていた。それはこの"冷女"、霜月クレアをどうにかしてギャフンと言わせてやると。









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