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窓際の君  作者: 気衒い
窓際の君〜現代編〜

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第二十九話:元不良少年2

「ちょっと待った〜〜〜!!!」


その声は突然、どこからともなく裏路地に響いた。すると、その声に途端に慌て出す取り巻き達。見れば、杉崎の鉄パイプも俺の肩に当たる寸前で止められていた。


「な、なんだこいつ!?」


「ひ、ひぇっ!?」


取り巻き達の波が割れ、向こうから現れたのはなんと毎日俺の周りを飛び回る蝿・・・もとい、クラスメイトの如月拓也だった。何故、奴がここに……………


「な、なんなんだこいつ」


「なんか異様だぞ」


取り巻き達が言うように如月は変な化粧を施し、内股歩きで変なダンスを踊りながら、こちらに向かってきていた。そして、真ん中辺りで急に止まるとこう切り出したのだ。


「あんた達、どうやら()に興味があるみたいじゃない。だから、私の()()()|達《・に紹介しといたわよ」


「っ!?」


「は?」


「お、お姉様達ってもしかして……………」


取り巻き達の取り乱した言葉に如月はこう返した。


「それを私に言わせるの?・・・あ、そうそう。あなた達の電話番号もついでにインターネットの掲示板に載せといたから。彼氏募集ってね・・・でも、良かったわね。これで全国の迷える乙女達から毎晩のようにお誘いがくると思うわ・・・あ、安心して。お礼なんていらないから」


「っ!?」


「お、おい。嘘だろ」


「い、嫌だ〜〜〜!!」


「だ、誰か助けてくれ〜〜〜!!」


如月の言葉に顔を青くした取り巻き達は次々と悲鳴を上げて、崩れ落ちていった。そんな中、杉崎だけは冷や汗を掻きながらも顔を鋭くして立ったまま、如月へと言葉を投げかけた。


「一つ聞きたい。その掲示板とやらから俺達の電話番号を削除してもらうにはどうしたらいい?」


「ん?あら、どうしてそんなことするの?せっかくの出会いのチャンスなのに」


「いや、俺達の恋愛の対象は・・・いや、なんでもない。実は今は忙しくて恋愛なんかしてる暇ないんだよ」


「そうね。確かに大勢で一人を取り囲んで暴力を振るうなんて、それはそれは忙しいものね」


「ぐっ…………」


杉崎は強烈な嫌味に顔を顰めつつも如月の機嫌を害してはならないとすぐに平静を取り繕った。


「でも、それがあなた達の望みだっていうなら、別にいいわよ」


「ほ、本当か!?」


「ええ。ただし、条件があるわ」


「条件?なんだ?」


「今すぐその子を解放しなさい。そして、金輪際、その子に関わらないこと。いい?もし、破ったらすぐさま全国の乙女達が駆けつけるわよ」


「わ、分かった!!すぐにこいつからは手を引く!!その代わり、約束は守ってもらうからな!!おい、お前ら!!行くぞ!!」


杉崎は大慌てで取り巻き達へと呼び掛けるとすぐさま、この場を去っていった。そして、後に残されたのは俺と如月の二人だけとなった。


「・・・勝手なことしやがって。礼は言わねぇからな」


「そんなのはいらねぇよ。それよりも何で親友の俺に相談の一つもないんだよ」


如月は顔をゴシゴシと擦って化粧を落としつつ、俺を睨み付けて言った。その迫力は幾多の修羅場を潜ってきた俺であっても思わず、たじろいでしまう程であった。


「な、何でお前なんかに相談なんかしなくちゃいけねぇんだよ・・・それに親友じゃ」


「俺は!!」


「っ!?」


急に大きな声を出す如月に俺はそれ以上、続けることができなかった。そして、そのまま如月は語り出した。


「少なくとも俺は初めてお前と会って言葉を交わした瞬間から、親友だと思ってる。クラスの連中はお前のことをどこか勘違いして、避けてるが俺は違うぞ。俺はお前が本当は野蛮な奴じゃないって知ってる。わざと孤高を演じて、周りを遠ざけてるのは自分の過去に周りを巻き込まない為だ。仲良くなれば、さっきの奴らの標的になってしまうかもしれないからな」


「……………」


「でも、誰だって友達とはいかないまでも理解者が一人は必要だ。なんせ人は一人では生きていけないからな」


「うるせぇ。俺は別に一人だって・・・」


「いい加減、強がるのはやめろよ!!」


「っ!?」


「もうさっきの奴らもお前を狙うことはない。これ以上、何に怯える必要がある」


「怯える?俺が奴らに?馬鹿言え。俺は別に」


「怯えてるじゃないか。自分一人ならまだしも周りを巻き込んでしまうことを」


「っ!?」


「ここ数日、お前を見ていて分かった。睦月圭太という人物はとてつもなく優しく愛情溢れる奴だ。だから、俺はお前のことが大好きになって、親友とまで思ったんだろうな」


「だ、大好きって・・・そんな」


「ん?何かおかしなこと言ったか?」


「・・・いや、言ってない」


「とにかく!親友が嫌なら、まずは友達から始めようぜ!俺がその第一号になれるっていうなら、嬉しい限りだ」


「ふんっ。そ、そのぐらいで嬉しがってんじゃねぇよ」


俺はそっぽを向きつつ、自然と顔が熱くなるのを自覚した。そして、大きく深呼吸をすると如月へ向かってこう言った。


「仕方ないから、友達とやらになってやる。ただし、勘違いるなよ?俺はまだお前を完璧に信用した訳じゃない」


「おぅ!改めてこれから、よろしくな!!」


「ああ・・・あと、さっきはありがとよ。正直、助かった」


「そうか。それは良かった」


「そういえば、よくあいつらの電話番号なんて分かったな。それに掲示板に載っける行動力も凄いし」


「ん?ああ、あれか。あれはな・・・嘘だよ」


「は?」


「お前がこんなことされてるなんて知ったのはついさっきだぞ。そんな短時間であんなに大人数の電話番号なんて特定できる訳ないだろ」


「いや、それなら」


「あいつらが嘘だと見破れると思うか?どう見てもネットに疎そうな感じだったぞ。それにもし本当に電話番号を特定し、掲示板に載っけたとしたら、コッチのもんだ。一度ネットに流出してしまえば、仮に後から削除したとしてもその情報はほぼ百パーセント消えない。一生、どこかの誰かに意識されながら過ごすことになる」


「……………」


「そんな顔をするなよ。俺は載っけてない。嘘だって言っただろ?全く・・・相変わらず、優しい奴だなお前は」


「っ!?し、心配なんてしてねぇよ。俺はただ」


「それぐらいのことをあいつらはお前にしようとした。それにお前の様子を見る限り、余罪はまだまだありそうだしな」


「……………」


「まぁ、とにかくお前は何にも気にすることねぇよ。そして、それはこれからもだ。だからさ………………」


「ん?」


この時の如月拓也の言葉は今も俺の胸の中に生き続けている。そして、それはこれからもきっとそうだろう。


「残りの学生生活を俺と面白おかしく過ごそうぜ」







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