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窓際の君  作者: 気衒い
窓際の君〜現代編〜

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第二十二話:暗影

「話があるの」


霜月にそう言われ、放課後になると同時に俺は屋上へと向かった。重い鉄の軋む音と共に扉を開けるとどうやら霜月の方が早かったらしい。風で靡く美しい長髪を手で軽く押さえながら、遠くを見ながら待っていた。そんな彼女はとても映えていた。


「悪い。待たせた」


俺は若干、顔を赤くしながら声をかけた。というのもつい数時間前に俺はここで大泣きしたんだと思うと恥ずかしくなり、自然と顔が赤くなってしまったのだ。


「何を勘違いしているのか知らないけど告白なんかじゃないわよ?」


「知ってるよ!!これは、その…………色々と事情があるんだよ!!」


「ふぅ〜ん…………まぁ、どうでもいいけど」


霜月はそう言うと俺に向き直り、姿勢を正した。とはいっても霜月は普段から姿勢がとても良い。だから、これは外見の話ではなく心の姿勢とでも言おうか。それがちゃんと真っ直ぐになった気がしたのだ。


「あなたに一つ謝らなければならないことがあるわ」


「?」


「ごめんなさい。あなたの力になることができなくて」


「ん?悪いんだけど話が見えない」


「私とあなたはお互いの利益の為に協力し合う関係。でも、今回の旅行で私はあなたに何もしてあげられなかった。それどころか、私のせいで旅行そのものを台無しにしてしまった」


「いや、霜月は何も悪くないだろ。そもそも俺が独断で長月のお願いを聞いたんだし。それに最終日のあれはなんつーか……………色々とボタンを掛け違えただけというか」


「いいえ。それでも私はあなたの恋をサポートすべきだったわ。正直、気を抜いていたのよ。ここで勝負に出なくても次があるって……………はぁ。どうかしているわね。現実なんて、そんなに甘くないのに。それは一番理解しているはずなのに…………」


「ん?よく分からんけど、良かったじゃん」


「は?あなた、今の話聞いてた?」


「ああ。聞いてた。気を抜いてたんだろ?」


「だったら、何で」


「気を抜いていられたってことはそれだけ肩肘張らずに楽しく過ごせたってことだろ?それって、めちゃくちゃいいことじゃん。お前、いつも一人だろ?だから、友達と楽しく過ごせて良かったよ」


「でも、私はそれをぶち壊したし長月さんともあんな」


「喧嘩するほど仲が良い。それでいうとお前ら、もう友達じゃん」


「如月……………」


「お前が楽しく過ごしているのを見ると俺も嬉しいんだよ。だから、今回の旅行は悪いことばっかじゃなかった」


「っ!?」


「それにお前はもう勝負は決まったと思っているだろうが俺はまだまだ諦めてないぜ!!これから長月へとどんどんアプローチしていくぜ?だから、これからもよろしく頼む」


「はぁ。本当、あなたって喜怒哀楽が激しいわね」


「その方が人生、楽しいだろ?」


「全く…………よく言うわ」


「あ、そういえば」


「今度は何?」


「旅行の一日目の夜さ、神無月と会ってたらしいじゃん。何してたんだ?」


「ああ。それね」


そこから少し間が空いて、霜月はこう答えた。


「ごめんなさい。今は話せないわ」




   


           ★






「ん〜?お二人は一体どんな話をしているんでしょうか?」


現在、私は屋上の扉を少しだけ開け、会話を盗み聞き…………拝聴している最中だった。放課後、すぐに拓也先輩のクラスに赴いた私はその途中で屋上へと向かっていく先輩を発見。そこから慎重に跡をつけ、こうして扉まで辿り着いたのだ。


「ふっふっふ〜。ストーカー…………もとい尾行歴数週間の私を甘く見てもらっては困るのだよ……………ん〜それにしてもここからだと会話がよく聞こえませんね。もう少し近くに」


「それ以上、近付くとバレちゃうよ?」


「っ!?」


その瞬間、私は全身に怖気が走った。すぐ後ろで囁かれた声は自分の知っている声ではなく、ましてやこの場に自分以外の誰かがいるなんて考えもしなかった。


「誰っ!?」


「ふっふっふ〜。僕だよ、僕」


それは全然知らない人だった。校章の色から、かろうじて同じ一年生と分かるだけであとは何も。その男子生徒は中肉中背で眼鏡をかけ、肩ほどまである髪を顔の中央で分けていた。


「といっても自己紹介したことなかったね。僕の名前は…………」


私は鼻息荒くジリジリと近付いてくるその人が生理的に受け付けず、思わず大声を出して叫んでしまった。


「きゃ〜〜!!」


「っ!?」


今思えば、もしもそこで強硬手段に出られていたら、もっと危険な目に遭っていたかもしれない。しかし、その時の私にそこまで考える余裕はなかった。


「くっ…………仕方ない。今回は引き下がるか。でも、優梨奈ちゃん。僕はまだまだ諦めないからねぇ」


結果、その人は急いでその場を離れた為、被害を受けることはなかった。ところが、その日から私にとって眠れない毎日が続いていくのだった。










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