第十八話:お花見
「わぁ〜綺麗〜!!」
「優梨奈!待ってよ!」
「全く。花見ごときで浮かれちゃって……………子供ね」
「そう言う霜月さんは待ち合わせ場所に一番乗りだったよね?あれ〜?どうしてかな〜?」
「う、うるさいわね!たまたまよ!」
「へ〜……………ほぉ〜ん」
「な、何なのよ!!」
「「やれやれ」」
花びら舞う中を駆けていく優梨奈とそれを追う皐月。その後方では霜月と長月が何やら議論を交わし、それに対して圭太と神無月は肩をすくめていた。というのも本日は紛うことなき晴天に加え、桜が満開に咲き誇る実に花見日和な一日だった。そして、俺達はこのチャンスを絶対に逃すまいと前々から計画していた花見に興じていたのである。
「それにしても霜月さん家の料理は美味しいね〜」
「あら、花より団子なのかしら?」
「ううん。花を見たくてもついつい、この料理に気を取られてしまうんだよ。これはこの料理のせいだよ!」
「それを花より団子というのではなくて?」
「ほら、見てよ!現に神無月くんも睦月くんも一生懸命頬張ってるよ!!」
「「むぐっ!?」」
「あなた達…………ここ三日間ぐらい何も食べてなかったのかしら?っていうか、神無月くんはいつもこのぐらいのもの食べてるでしょ」
「食い意地張ってるよね」
「他人のこと言えないわよ、長月さん」
「それも全部この料理が美味しすぎるから、いけないんだよ!このままだと花見ができないじゃん!!」
「知らないわよ!!」
「どうしてくれるの!!」
「だから、知らないわよ!!」
「「ずずっ…………は〜平和だね〜」」
いや、優梨奈と皐月は一体、どこから湯呑みを取り出したんだ?……………にしても絵になるな。
「拓也、あなたも黄昏れてないで花見を楽しみなさいよ」
「今度はこっちにきた!?」
★
「楽しかったね〜」
陽光降り注ぎ、桜の花びらが風によって綺麗に舞う中、花見を最大限に楽しんだ俺達。現在は日も沈み始め、それぞれが帰り支度をしていた。
「拓也、私達は帰るけど」
「ああ。また明日な」
手を振り、帰っていく仲間達。そうして、最後に残ったのは俺と優梨奈だけだった。
「…………楽しかったですね」
「ああ」
「こんな幸せな日々がいつまでも続けばいいのに」
「続くさ。ってか、俺が終わらせない。誰が欠けようとも俺だけは優梨奈のそばに居続けて、お前を幸せにする」
「拓也先輩……………」
「随分と暖かくなってきたな」
俺は遠くを見て、そう呟いた。こんな姿を今、あいつに見られたら、また"何黄昏れてるのよ"なんて言われてしまうな。
「春ですね」
「ああ。優梨奈と出会ってから、ちょうど一年近く経つか」
「ええ」
「俺はな、優梨奈……………」
「ストップ」
「ん?」
「そこから先の言葉はまた後日……………例の日に聞きたいかな」
後日?例の日?……………はっ!
「なるほどな………………分かったよ」
俺は脳内に浮かび上がってきた日付によって、優梨奈が何について言っているのかを理解した。そう。この言葉の
続きは……………3月14日にしよう。




