第十三話:靴下は三足まで
「うお〜っ、寒ぃ〜」
「そりゃ、11月だからな」
「こんな時、彼女でもいれば、て、て、手とか繋いで暖かくなれるんだけどな」
「赤くなるぐらいなら、言うなよ」
「う、うるせぇ!じゃあ、お前はどう思うんだよ?」
「そんなことしなくても大切な人は近くにいるだけで心が暖かくなれるぞ」
「サラッと言うな、おい!」
「ま、俺に彼女なんていねぇんだけどな」
「いねぇのかよ!じゃあ、何でそんなことが分かるんだよ!」
「彼女といえばさ、よくあるのが彼氏に内緒でプレゼントとか用意してて、それをクリスマスに渡すとかな」
「くぅ〜いいなぁ〜!それが手編みのセーターや手袋だと尚、良しだな!」
「だな!あぁ、この子は裏で俺の為にせっせと編んでくれてたのかって嬉しくなるやつ!」
「クリスマスか……………もう来月だもんな」
「その少し後に正月だぞ……………本当、一年が経つのはあっという間だな」
教室で騒いでいる三人組。その話の内容に少し感じるところのあった俺は遠くを見ながら、こう呟いた。
「そうか。来月にはクリスマスが……………」
★
「ふんふんふ〜ん♪」
「やけにご機嫌だな、優梨奈」
三人での昼食時、何故かは分からないが優梨奈がウキウキとした様子で鼻歌を歌っていた。
「だって、来月にはクリスマスですよ!!」
「それは少し…………というか、かなり気が早いんじゃないかしら」
不思議そうな顔で言うクレア。こればっかりは俺もクレアの意見に賛成だ。
「甘い!甘いですよ、クレア先輩!!」
「へ?」
「今からそんな調子じゃサンタさんも愛想を尽かして来てくれなくなりますよ!!」
「「サンタ……………さん??」」
「はい!ちなみに私はサンタさんに何を貰うのか、もう決めてありますよ!!」
俺とクレアは優梨奈のあまりにも衝撃的な発言を聞いた気がして、口を半開きにしたまま彼女を見つめてしまった。あれ?今、この子何て言った?
「聞き間違いだったら、ごめんなさい…………………今、サンタさんって言った?」
うおっ!クレア、切り込むな〜。
「もちろんですよ!あれ?クレア先輩のところには毎年、来ていないんですか?」
「そ、そうね………………来てくれる時と来てくれない時があるかしら」
「へ〜そのサンタさん、気まぐれなんですね。じゃあ、私のとこに来てくれているのと違うサンタさんですね」
「そうなの?」
「ええ。なんせ、私のところには毎年来てくれてますから」
サンタさん!お仕事、ご苦労様です!
「へ〜……………でも、サンタさんって、一人じゃないのね」
「そりゃそうですよ!なんせ、ご老体なんですから一人で一件一件回ってたら、倒れちゃいますもん」
「ではどのくらい存在するもんなのかしら?」
クレア、随分と泳がすな〜……………まぁ、気持ちは分かるけど。
「世界中に沢山いますよ!それこそ、こうして何気なく過ごしている日常の中にも溶け込んでいる程です」
「へ?じゃあ、サンタさんって普段は普通に仕事をしている一般人ってこと?」
「そうですよ。だから、私達のすぐ身近にも身分を隠して潜んでいるかもしれません」
まぁ、そりゃいるとしたら身近だろうな。
「でも、そんなスパイみたいな……………」
「ねっ!カッコいいですよね!スパイサンタ!!」
うん。優梨奈さん、あなたはもう、そのままでいて下さい!
「…………はい!靴下はちゃんと三足ベッドにぶら下げてありますよ。サンタ帽子は必需品ですね。なんせ、私はサンタさんガチ勢なんで」
その後も優梨奈は何やら、サンタについて熱く語ってくれるのだった。




