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窓際の君  作者: 気衒い
窓際の君〜現代編〜

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第十三話:デート2

ショッピングモールでのデートの次の日、俺は商店街の入口に立っていた。元々、土日の両方を使ってデートすることになっていた為、今日もあることは分かっていた。しかし、昨日は昨日のことで精一杯だったから、明日もあるなんてことはすっかり忘れていたのだ。そして、それを思い出したのは帰宅したからだった。その時の俺がベッドの上で転げ回ったのは言うまでもない。せっかくデートの余韻に浸ろうと思っていたのにそれもできず、明日はどうしようということで頭が一杯だった。そんな時、霜月からメッセージが届いたのだ。内容は以下の通りである。


"今日はお疲れ様。最初の態度と服装を除けば、全体的にまぁまぁだったわ。それで明日のことなんだけど、どうせ現在進行形で頭を抱えているようだから、一つ助け舟を出してあげる……………明日の予定はあなたが決めてちょうだい。どこに行って何をするでもよし。自由よ。私はあなたにひたすら着いていくわ"


「何でもいいっていうのが一番困るんだよ!!………って、夕飯何を食べたいか聞かれた時の母親の台詞か!!」


その時の俺は思わず、そうツッコミ、ベッドの上に倒れ込んだ。


「くそ〜一体、どうしたら……………ん?待てよ」


そこで唸る…………と同時に俺の頭の中に一つ邪な考えが浮かんだ。


「どこに行って何をするでも良しって……………ほ、本当にそんなことが……………い、いいのか?」


いや、それよりもそんな調子でいいのか俺?いくら、ギブアンドテイクの関係とはいえ、せっかく手伝ってくれているというのにその気持ちを利用するなんて。そんなの…………そんなの……………


「なんか背徳感があっていいな、それ」


その日、俺が自分自身に失望したのは言うまでもない。






            ★





「お待たせ」


「っ!?いやっ!大丈夫!俺も今、来たところだから!!」


この日の霜月の服装は昨日とは真逆のスタイルだった。腰までしかない黒の袖なしジャケットによく分からん英語の書かれた白いTシャツ、ズボンに至っては薄い茶色で足首までのものであり、運動靴を履いていた。さらにストレートだった長髪をポニーテールにしており、これまたおしゃれな帽子を被っている。


「その服装……………」


「ああ、これね。昨日、あなたの服を選ぶついでに試しに買ってみたのよ。私、普段はこういう服着ないから、どうかなって」


「確かに霜月にしてはカジュアルすぎるというか、ボーイッシュな感じというか……………まぁ、私服姿を見たのなんて昨日が初めてだから、完全にイメージなんだけど」


「でしょ?」


「ん?でも、いつの間に買ってたんだ?俺、全く気付かなかったぞ?」


「それはそうよ。だって、あなたが試着室に入っている間に買ったんだから」


「……………相変わらず、凄いな」


「何が?」


「い、いや何でもない……………ってか、もしかして今日着てくる為に買ったのか?」


「そうよ。昨日とは真逆の服装にしたくて。あと、仮にあなたが今日のデートでとんでもない場所を選んだとしてもこれなら動きやすいでしょ?」


「とんでもない場所ってどんなところだよ!!俺への信用はないのな!!」


「当たり前じゃない。あなたは時々、とんでもない行動力を見せる人だもの。まさか、あの件を忘れた訳じゃないわよね?」


「っ!?その節は誠に申し訳ございませんでした!!」


「……………」


「ほ、本当に忘れた訳じゃないよ?反省してるよ?」


「はぁ。全く…………よく言うわ」


「そ、それよりもその服!!」


「ん?」


「霜月のイメージとは少し違うけど、とてもよく似合ってると思う」


「あっそ…………ありがと」


「おぅ」


「如月」


「ん?」


「あなたの服も似合ってるわ……………まぁ、それは昨日私が選んであげた服だけど」


「一言余計だな……………まぁ、でもありがとう」


「ん」






            ★







「もうこんな時間か」


時刻は午後六時。商店街は夕飯の買い物を終えた主婦達や仕事帰りのサラリーマンで溢れていた。楽しい時間はあっという間というが、今日がまさしくその状態だった。今日も昨日と同じで主にウィンドウショッピングを中心としたデートでその中でも気になった店へ入っていくという流れだった。霜月は相変わらず、周りの店に興味津々であり、以前試食をさせてもらっていたコロッケ屋や名残惜しそうに後にしたペットショップも忘れることなく訪れていた。その際、コロッケ屋のおばちゃんからカップルやデートと揶揄われ、顔を赤くした俺達が速攻で店を離れたのは言うまでもないが。


「本当ね。楽しい時間は過ぎるのがあっという間だわ」


「良かった」


「何が?」


「霜月も楽しいと感じてくれていたみたいで」


「っ!?な、何を言っているのよ!!これはあなたの為に付き合ってあげていることなのよ?私が楽しんでいるのを嬉しがってどうするの。あなたが本当に楽しませなければいけない相手は他にいるでしょ?」


「はぁ…………そうなんだよなぁ。どうしよう。せっかく、この二日間付き合ってもらって、服のことやデートの仕方なんかも少しは分かって、確かに自信はついたと思うんだけど」


「けど?」


「いざ長月と同じことをするって考えるとやっぱり緊張して……………何でだろうな?霜月とはこんなに気負わずデートできるのに」


「全く…………よく言うわ。一昨日からデートのことを考えて緊張しっぱなしだった癖に」


「っ!?それはそうだろ。なんせ人生初めてのデートなんだ。別に霜月が相手だったからじゃない」


「そうなの?」


「ああ。確かに霜月はとんでもない美人で俺なんか釣り合わないってことは分かってる。でも、なんだろうな……………霜月とは良い意味で気楽に接することができるんだ。不思議だよな」


「あら。あなたもなの」


「ん?」


「実は私もなのよ。何故か、あなたの前では自分を取り繕ったりとか、良く見せようとかいう気持ちが湧いてこないの……………まぁ、学園の人達にも取り繕ったりしたことなんかないんだけど」


「霜月、何言ってんだ?」


「え?」


「お前、いつも取り繕って冷たい感じだしてるじゃんか」


「は?あなたこそ、何を言っているの?あれは私の素よ」


「いいや、違うな」


「?」


「今日一日、一緒にいて確信に変わったよ。お前は俺が知る限り、最も純粋で優しい奴だ。お前、自分がどんな顔でデートしてたか分かってないだろ?お前はずっと笑顔だったんだぞ。どんな些細なことにも興味津々でそれはまるで世間では当たり前と言われていることを知らないお嬢様のようだった。そして、俺はそんなお前がどこか放っておけなかったんだ。俺は一人っ子でずっと分からなかったけど、きっと兄妹がいたらこんな感じなのかなって」


「如月…………」


「だから、俺は」


「兄妹って言ってたけど」


「うん?」


「もしも、私とあなたがそうだとしたら……………私が姉よ」


「は?どう考えても俺が兄でお前が妹だろ!!」


「いいえ。私が姉であなたが弟よ」


「いいや!俺が…………」


その日のデートはそんな他愛もない言い合いで幕を閉じた。そして、次の日の学園で俺達は思いもよらない出来事に直面するのであった。











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