第八話:光
「能力を使って、神に会いに行く?」
私は現実味のないその言葉に思わず、聞き返した。
「ええ。私の見つけた方法っていうのがそれなの。ここでいくら、ジタバタしていたって現実は変わらないわ。だったら直接、元凶に会いに行った方が早いもの」
「でも、そんなのどうやって…………」
「私達、全員が一斉に能力を使うの。ゆりさんが"時間"を操り、ソフィアさんが"空間"を固定。そこに睦月くんの"運"と私の"還元"の力が加わる。そうすると理論上は過去の蒼最へと行くことができるようになる。でも、念の為に皐月さんの"忍"の能力でそこに忍び込めやすくするわ」
「いや、でも!私、能力なんて使ったことないですよ!」
「大丈夫よ。私の"還元"には他人の能力を増幅する力があるの。しかもここにいる人達は皆、能力の使用に長けている………………何かあったら、私達がついているから安心して」
先生の言葉に頷くみんな。私はそれがとても心強く感じた。
「で、でも……………本当にそんなことが可能なんですか?やっぱり、俄には信じ難いというか」
しかし、私は不安が拭えなかった。今ならば、はっきりと分かる。両親は私をこういった世界から、あえて遠ざけて育ててくれていたのだ。そこにどんな意図があったのかまでは残念ながら分からない。だが、そんな普通の生活を送っていたことがここにきて、私の足を引っ張っているのだ。
「ゆりさん、そんな顔をしないで。あなただけじゃないわ………………ここにいる全員、同じ気持ちよ」
「………………あっ」
そこで私はようやく気が付いた。師走先生の身体が小刻みに震えていることに。そして、それは先生だけじゃない。みんな、どことなく顔が強張り、身体も硬くなっていた。
「今から私達がやろうとしていることは前代未聞の行い。それは能力を授かり、普通ではなくなった十二家の誰であろうと未だ実行した者はいない程のこと………………だから、私達は同じ気持ちを持つ同志なの」
「先生………………」
それは以前、先生が口にした言葉。その時はここまで深くは考えてなかったその言葉を今はしっかりと噛み締めて、飲み込む。
「ゆりさん………………一緒に頑張りましょう!」
「はい!!」
そこにいた私はもう今までの私ではない。もう迷わない。自分のやるべきことを見据え、覚悟を持った私は先生と固く握手をする。すると、そこにみんなも手を乗せてきた。
「私も混ぜてちょうだい」
「俺のことも忘れないで下さいよ?」
「ゆりちゃん、安心して!私もいるから!」
全員で手を重ねていると自然と震えも止まる気がした。現にみんな笑顔で立っている。
「皆さん……………ん?」
私がそのことに感動していると徐に私達が蒼い光に包まれ始めた。
「じゃあ、全員で力を合わせていきましょう!!」
「「「お〜〜〜!!!」」」
「えっ、えっ、何これ!?」
私が慌てふためいている間にも光はどんどんと強くなり、やがてそれは部屋全体を埋め尽くすほどになっていた。




