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窓際の君  作者: 気衒い
蒼最の昔日〜過去編〜

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第九話:蒼最の昔日

神を怒らせた土地、蒼最。そこに住む人々がどうなったかというと……………なんと一般の者達の暮らしは以前よりも良くなった。というのも()()()()()()()()()()()、蒼最の自然は人々の努力なしではすぐに枯れ果ててしまうことが伝えられ、また()()()()()()()()()()()()()()為、これからは彼らによる厳しい統治・管理がなくなることが決まったからである。その"十二家"であるが、一部能力がなくなった者がいることは人々には伏せられ、そして能力を保持したままの五名に関してもその後、一名を除き能力を使用する者はいなかった為、自然と人々も気にしなくなり、何十年か経てば、完全に忘れ去られることとなった。"十二家"はその後、たまに会合を開く程度の組織となり、名家として残っていくところと普通の人生を歩んでいくところに分かれた。ちなみにリジオンに手を出した元凶である人間は卯月と判明した。どうやって、それを暴いたのかは想像に難くない。なんせ能力者が()()()いるのだ。そして、犯人が分かってからの行動は早かった。犯人である卯月の逃げ道を塞ぎ、問い詰め、自白させた。そこで分かったこととしては最初のキッカケは文月に唆され、如月の株を下げようと嘘の報告をしにリジオンの元へ行ったこと、何回か会っているうちに妻子がいる身でありながら恋心が芽生え付き合い始めたこと、その結果、不倫が妻とリジオンの両方にバレて思わず逃げ出したこと………………などだ。卯月を探し出してから、この情報を引き出すまでの一連の流れは全て如月が行い、その後、彼は卯月と文月の両名に罰を下した。赤子を抱いた異様な様子の如月が歩き回っている………………その時の彼を見た他の十二家の言葉がそれだった。彼が一体どんな罰をどういう形で二人に下したのか………………それは定かではない。しかし、それからというものの、如月はどこかスッキリとした顔をしており、対して二人は彼に怯えながら生活していたことは確かである。どちらにせよ、たった一人の行いによって蒼最はあらゆることが変化してしまったのだった………………良くも悪くも。







            ★






「こらっ、拓也!待ちなさい!」


「待たないよっ!おっ、何だここ!すげ〜!」


「全く…………この落ち着きのなさは誰に似たんだ?」


「不思議よね。あなたも私も拓也のようなタイプではないというのに」


「ねぇ、ねぇ!ここ、何?すげ〜お屋敷だな!!忍者か何か、いるんじゃないか?」


「そんなのいる訳ないだろ。ここはね、俺達が会合に使っている場所なんだよ」


「会合?」


「そうよ。お母さんとお父さんはここで色んな人達と色んな話し合いをするの。だから、拓也は大人しくしててくれると助かるかな」


「うっ……………分かった」


「そう……………偉いわね」


「じゃあ、拓也この部屋にいてくれるか?ちょうど拓也と同い年くらいの子も何人かいるから、退屈はしないと思うぞ」


「うん」








「私の主張は変わりません!やはり、子供達には何のしがらみもなく幸せに生きていって欲しいんです!」


「私も夫と同じ意見です」


「そうですか……………」


「「「「「……………」」」」」


その一室の空気は非常に重たいものだった。如月夫妻、それと相対する霜月オリヴィア、そして俯いて何も発さない他の十二家の面々。ここでの議題は今まで再三、話し合われてきた内容である。そもそも少し前まではたとえ表面上であろうが、皆がまとまっているように見えていた。それがいつしか

、特に仲の良かった如月夫妻と霜月家がこうして対立するようになってしまったのである。ちなみにこの時の十二家は全員が参加していた訳ではなかった。霜月ジャック、霜月リリー、師走家当主は欠席。もし、この三人がいればこの後の展開も違うものになっていたかもしれない。


「すみません。少し熱くなりすぎました………………頭を冷やすついでに子供達の飲み物を買ってきます」


そう言って部屋を出ていく如月夫妻。オリヴィアはそれを何ともいえない顔で見送っていた。









「あはは。君、面白いね。名前は何ていうの?」


「如月拓也!君は?」


「僕は神無月広輔。よろしくね」


子供達の集まる一室。そこでは各自が思い思いに過ごしていた。如月拓也は明るく誰とでもコミュニケーションを取ろうとし、今は神無月広輔が話し相手になっていた。霜月クレアはそれを離れたところから感情の読み取れない瞳で見つめており、その近くでは長月華恋が人見知りを発動して俯いていた。ちょくちょく部屋を入ったり、出たりと屋敷中を駆け回っているのは葉月優梨奈であり、それを疎ましく見ているのはここに無理矢理、連れてこられてた皐月桃香である。彼女は子供達のことを覚える気など一切なかった。ちなみに睦月圭太はこの場にはいない。家で留守番していると言って聞かなかったからだ。


「おっ、こんにちは」


「「「こんにちは!!!」」」


そんな中、突如開かれた襖。そこから顔を出したのは今し方、会合に出ていた如月夫妻だった。


「父さんに母さんじゃん。どうしたの?」


すかさず駆け寄ってくる拓也。その顔は不思議に満ち溢れていた。


「これから、拓也達が飲むジュースを買ってこようと思ってな……………みんな、何を飲みたいかな?」


拓也の父がそう問いかけるとそれぞれから答えが返ってくる。そして、それをメモする拓也の母。その間、拓也の父は子供達の話し相手になっていた。


「よし。じゃあ買ってくるから!いい子にして待ってるんだぞ!」


「「「うん!!!」」」


しかし、この後如月夫妻が帰ってくることはなかった。





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