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窓際の君  作者: 気衒い
蒼最の昔日〜過去編〜

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第四話:宝物

「では会議の結果、如月さんは蒼最の統治・及び管理から退くということに決まりました。しかし、十二家にリーダーとして籍は置いたまま、今後は蒼最を管轄していく私達を管轄する立場として動いていくという方針となりました」


「ちっ……………」


十二家全員が揃っての会議。議題は如月の進退についてだったが、これは会議を持ちかけた男にとって、苦い結果に終わった。男は如月の完全なる失脚を狙っていたのだ。確かに如月が蒼最の統治から手を引く分、その穴に自分が入り込めると考える者もいるだろう。しかし、問題は会議の進行役が発した言葉の後半部分にあった………………そう。如月は今後、他の十二家の行動に対して、口出しすることができるようになってしまったのだ。そうなると少しでも行き過ぎた行動を取れば、如月はすぐにそれをやめさせようと動くだろう。それは男にとって、かなりの痛手だった。


「くそっ……………」


自分が今まで以上に自由に振る舞えるよう、持ちかけた今回の会議。それが逆に自分の首を締めることとなってしまったのだ。男はこれに歯噛みし、思わず如月を睨む。しかし、男の感情など知ったことかと他の十二家の面々と盛り上がる如月の様子を見た男はさらに感情を激化させ、静かに私怨の炎を滾らせる。


「………………ん?待てよ」


そうやって、どのくらい如月達の様子を見ていただろうか。男はその盛り上がっている面々の中にいる、とある人物を見た時、急にハッとした。実はその人物が少し前に如月の愚痴を裏でこぼしていたのを男は見たのだ。


「これは…………使えるな」


男はニヤリとした嫌な笑みを浮かべ、すぐさま作戦を練るべくその場を後にした………………そして、この男の作戦が後にまさか、あんなことにまでなってしまうとはこの時の誰も、それこそ、男自身すら知らなかったのであった。







            ★






「ただいま」


「あなた、おかえりなさい」


「「おかえり〜〜!!」」


如月が自宅へと帰るとすぐに温かい声が彼を迎えてくれた。それは彼の愛する妻と息子と娘…………つまり家族の声だった。彼はその声を聞いて、その顔を見る度に今日も頑張って良かったと生の実感と感謝をする毎日だった。


「「お仕事、お疲れ様〜〜!!」」


「お前達も母さんの手伝いしてて、偉いな〜!」


走って抱きついてくる子供達の頭を撫でながら、彼らのことも労う如月。そんな如月がチラッと妻の方を見ると彼女は優しく微笑み、ゆっくりと自身のお腹を撫でた。そんな彼女のお腹は以前と比べ、大きくなっていた。それは如月が神に選ばれてからの月日の長さを意味していた。少なくとも彼があの丘を登る前、妻は身籠ってはいなかった。あれから、どのくらいたったのだろうか………………一年?二年?それともそれ以上?…………如月はすぐ答えを出せなかったが、それは短いようにも長いようにも感じた。そのくらい毎日がバタバタとしていたのだ。それこそ、月日を数えている余裕がないほどに………………


「「お父さん、遊んで!!」」


「おっ、いいぞ!」


しかし、どれだけ忙しかったり、疲れていようとも如月は家族で過ごす時間を欠かしたことが今まで一度たりともなかった。彼にとって、家族は自身を支えてくれる大きな柱……………まさに人生の全てだったのだ。


「あなた、疲れているのだから休んでいいのよ?」


しかし、そんな如月のことが妻は心配だった。彼にとっては安らぎのこの時間も側から見れば、休みたいのを我慢して家族との時間を優先させているように見えるのだ。と同時に不安にもなっていた。このまま働きすぎて、いつか倒れてしまうんじゃないかと。


「大丈夫だよ。それに言っただろ?俺にとって家族で過ごすこの時間が何よりの休息なんだって」


ところが、如月は明るい笑顔で妻のそんな不安を軽く吹き飛ばす。このやり取りも今まで何回行ったことか…………本当は妻にも分かっていた。如月が無理して家族との時間を作っている訳ではないということを。だが、たとえ取り越し苦労であろうとも妻の言った言葉は誰かが彼に言ってやらなければならないということ、そして、それが自分にしかできないということも分かっていた。一方、如月に抱きついたまま静かにしている子供達もなんとなく、この一連の空気を理解していた。だから、如月はいつも家族にとびきりの笑顔を向けて、こう言うのだった。


「ありがとう。俺はお前達が、この空間が大好きだ。家族がいるから、いつも頑張れる。家族がいるから、生きていようと思える。家族は俺にとって……………宝物だ」












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