虫いたくらいで叫んだ俺
キミとはいつも予告なくバッタリ出会うね。
恥ずかしがりなキミは、俺を見るとささっと隠れてしまう。
そんなキミを追いかける俺。逃げるキミ。
俺たちはずっとそんな関係を続けて来たのに。
今日のキミはやけに積極的だったね。
バスルームから出てバスマットに足を乗せた俺。
俺はまだバスタオルさえ手にしていないってのに‥‥‥
そんな俺の右足の指をいきなりくすぐってくるなんて。
「‥‥‥」
待ってくれよ。
まあ、やんわりは鍛えてるから見られてもいいけど、俺、まだびしょびしょだし、ガチ近視でキミの姿がよく見えない。
花粉症ひどくてコンタクト最近使ってないんだよね。
だからキミに近づいてもいいかな? 5センチくらいまで。
大丈夫。キミにはまだ何もしないから。
──ああ、やっぱりキミだったんだね。
俺に大胆に近づいておきながらそんな角にうずくまらなくても良くない?
「ちょい待ってて。オマエそこから動くなよ」
俺はタオルを巻いて取り急ぎ部屋にメガネを取りに行く。
ヤバイ。俺の髪から水が垂れて床がびちょびちょだよ。
これも全部キミのせい。俺を焦らせるキミのオーラ。
待っててって行ったのに、メガネを持って戻ったらキミの姿は消えてる。
ひどいな。ここで一発キメてやろうと思ったのに。
ひとまず俺は体と髪を拭いて短パンとTシャツを着る。
分かってる。キミは俺の近くで息を潜めているってこと。
俺はバスマットをパタパタし、体組成計をどかす。
──どこ行きやがった? 俺はもうヤらなきゃ気が済まないぜ!
不意に俺の足元を駆け抜けて行くキミに、俺は心ならずも『わーッ』っと叫んでしまった。
──おいおい。虫いたくらいで叫んでんじゃねーよ!
自分で自分につっこむ。
俺はお風呂の泡洗剤を手に取り容赦なくキミにぶっかける。
キミはもう、動けない。 そしてキミは ~THE END~
俺は風呂上がった途端、なんたる災難。
キミの後始末 & びちゃびちゃになった床拭き。
キミと肌を触れあった足も洗わないと。
あれから今日で2日。足に何かカサカサって触れるとビクッとしてしまう。
Gの季節。