第6話
「…お風呂…気持ち良かった…」
ホクホクとしながら帰ってきた二人を迎えつつ、入れ代わりで風呂場へと向かう。
「確か石鹸とかシャンプーは無かったんだよな…」
今のところ、使用期限が有りそうなものは総じて置かれていない。
これからポイントで買っていくことになるんだろうが…
「初月が、辛い…」
一体いくら分のポイントが入ってくるのかわからない現状、どうすることも出来ないが…さりとて不安はある。
「おぉ…やっぱり広いな…」
しかし、風呂は全てを吹き飛ばす!
…そう思ってないとやってられない。
「取り敢えず、シャワーで流すか…」
上下に動く蛇口を上へと捻り、お湯を出す。
先程桐生さんから聞いた話によると、この木吹き荘という寮は、元々5人で住むことを前提に作られているらしく、設備もそれ相応の大きさをしている。
中でも、浴場は一番力が入っている場所だそうで、浴槽が何故かジャグジーの機能を有していたり、たいして広くないのに、シャワーが二つ付いていたりする。
「くっふぅぅ…」
ゆっくりと息を吐きながらお湯に浸かる、
「足…伸ばせるな…」
銭湯や温泉以来の感覚に、軽い衝撃を受けながらゆっくりとリラックスする。
「まさかこの家に、修練場なんてものがあるとはな…」
桐生さんによると、一番古い寮からの伝統だそうで…必ず1ヶ所はトレーニング出来る場所があるそうだ。
この木吹き荘の場合は屋外運動場の様な場所らしく、永らく放置されていたものを起動し直すそうだ。
休みたい先生の避難場所にもするとかで、設備も一新されるそうなので…楽しみである。
「ふぁぁぁ…ねむ…」
「…お風呂で…寝るのは…駄目…溺れちゃう…」
「ぁぁぁあああ!ソフィ!」
後ろから声が聞こえるぅ!
「…大丈夫…洗面所だから…」
「あっああ…ビックリした…」
「…学園長達…帰るって…」
「え?じゃあ急いで出るわ!」
流石にお見送りぐらいはしないと!
「…フフッ…桐生さんの言った通り…」
「え?」
「…二人から伝言…明日の空いた時間に手伝いに行く…だって…」
「まっまさか…」
「…フフフ…うん…もう帰ったよ…」
「やらかしたぁ!」
「…フフフフフ…桐生さん凄い…一言一句…同じ…」
その後しばらく、全裸で頭を抱える少年と、笑いが止まらない少女というなんともシュールな絵面が続くのだった。
「ふぅ…いい湯だった…」
「…お水…飲む?…」
あの後再度浸かり直した俺は、ホカホカな状態でリビングへと戻っていた。
「おーう、貰ってもいいか?」
「…ん…入れてくる…」
机のひんやり具合が堪らない…このまま寝てしまいそう…
「…はい…お水…」
「ありがとな」
んぐっ、んぐっと飲みながら、じーっと此方を見てくるソフィに疑問を抱く。
「どうした?」
「…今日は…進が…ソファーで寝て…」
「ん?なんでだ?」
多少身体はゴキゴキするが、それもどうせ今日までの辛抱だ。
明日には組立式のベッドが届くらしいし、二階の掃除もするからな。
「…昨日…私が…先に寝ちゃったから…次は進の番…」
「いいよいいよ、どうせ今日までだろうし…ソフィを床に寝かせて俺がソファーで、とか流石に心が痛む」
「…むぅ…そんなこと…気にしなくていいのに…」
「いやいや、気にするよ」
「…私が…王女だから?…」
「いんや、女の子だから」
「…むぅ…むぅぅ…」
あっなんかニヤニヤが止まらない感じになってる。
「…これが…女の子扱い…母様が言ってた…」
段々目がキラキラしてきてる…なんだろう…嬉しかったのかな?
「…女の子扱い…されたときは…素直に受け取るって母様が…でも…でも…」
なんか葛藤してる…あっ、目がグルグルしてきた。
「…きゅう…」
「ソフィ!?」
急に倒れた!?
「大丈夫か?ソフィ!」
「…むっ…むうぅ…もう無理ぃ…」
俺にしがみつきながらガクッと項垂れた。
…あれ?これ昨日もあったぞ…
「ほーら、ソファーだぞー」
「…むにゃむにゃ…進が寝るのー…」
「はいはい、よっと」
「…すぅ…すぅ…」
恐ろしく寝付きいいな!?
「よーし、今日も板の間だー」
明日は、身体バキバキじゃないといいなぁ…
「…進…朝…起きて…」
「んぁ?」
チュンチュンと雀の鳴き声が聞こえる…朝か…
「んっんんぅ!」
うーん、見事にバキバキだな!
「…むぅ…やっぱり…私がこっちで寝れば…」
「はいはい、もう終わったことなんだから言いっこなしな」
「…むぅぅ…」
「よし、朝御飯にするか!」
「…うん!…」
「よーし、今日から二階だな」
「…頑張る!…」
因に朝食は、昨日と同じメニューです。
「ソフィは掃除機を頼む、俺は雑巾持ってくるから」
「…ラジャー!…」
おっ敬礼してる。
そして目がキラキラだな。
「…♪…♪…」
速っ!雑巾絞って戻る間にもう二階まで行ってる!
「ソフィー、取り敢えず窓見つけ次第どんどん空けてってくれ!」
「…わかったー…」
先ずは階段と手すりからだな。
「よし!やるか!」
フフフ、多少勾配のキツイこの階段も、身体強化を使えば楽チンなのだよ!