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第5話

「ううっ…ごめんなぁ…」


「…モヤシ炒めも…美味しいよ?…」


「おぉ、そうか…ほら、俺のも少しどうぞ」


「…いいの?…じゃあ…貰うね…」


 ルンルン気分でモヤシ炒めを食べるソフィを見ながら、少し涙ぐむ。


「うっ…くぅ…心が…」


「でも、醤油買っちゃって良かったのか?」


「…うん…100円は大金だけど…美味しさには変えられない…」


「うっくおぉ…コンビニおにぎりぃ…」


 なにか聞こえる気がするが、スルーだ。


 今の我が家に、人にご飯を分け与えるだけの余裕は無い!


「…うっうぅ…学園長…食べる?…」


「ソ…ソフィ…」


「うぐおぉ…罪悪感がぁ…」


「…お昼の…おにぎりの…お礼…しなきゃ…」


「そう…だな…学園長…どうぞ」


 そうだよな、お昼ご馳走になったもんな…お返しはしないと…


「…!?…進!…それあげたら…進のが…」


「いいんだ…だから、ソフィはたーんと食べるんだよ」


「わざとか?なあそうなんだろ?」


「学園長…こんなお返ししか出来ませんが、今日はこれで何卒…」


「…私からも…何卒…」


「アァァァァァ!もういい!買ったげる!二日分の食糧なら買ったげるからもうやめて!」


「そんな…まだお返しも出来てないのに…」


「…ううぅ…これ以上…借りても…返…せない…から…」


「うがぁぁぁぁぁ!もうやめて!特にそこの姫様!あんた何馴染んでんのよ!金銭感覚なんて無いでしょ!」


「…昨日の…ファミレスで…学んだ…100円は…大金!」


「うわぁん!無駄に天才だぁ!なまじ今お金が無いから余計に信憑性帯びてるぅ!」


「…学園長…大丈夫…190円も有れば…二人で…1日…越えられる…」


「うぐおぉう…姫様の発言じゃないんだよぉ…心が痛いんだよぉ…」


 ん?あれ?そういえば…


「今更だけど、ソフィって王女様だったのか?」


「本当に今更ぁ!散々そう言って………あっ」


「…ん…アイスバーグ王国の第二王女…」


「あぁぁぁぁぁ!それ絶対外部に漏らしたら駄目だからね!」


「って事らしいけど、ソフィ良かったのか?」


「…ん…共同生活で…しこりを残すと面倒…って…母様が言ってた…」


「あぁぁぁぁぁ!ラフィアなに言ってるのよ!」


「…!?…母様と…知り合い?」


「うっ…そっソンナコトナイワヨー」


「「…わかりやすい嘘を…」」


「うぅぅぅぅ!それはいいのよ!この際だから教えとくが、生活費の補助は、明後日の授業初日で渡される学生証に、ポイントという形で振り込まれる」


 なるほどなるほど…


「だから、それまでの1日と少し…を…なっ、なんで泣いてるの?」


「良かったなぁ…良かったなぁ…」


「…モヤシで…生きれる…」


「いや、喜ぶ意味がよくわから………」


「…野草を…取って…下ごしらえ…するの…時間がかかる…」


「授業始まって忙しくなったら、掃除の時間とれるかわからないもんな…」


「うぎゃぁぁぁぁぁ!心が壊れるぅ!」


「…進を…ベッドに…寝かせるためにも…頑張る!」


「ソフィ…」


「追い討ちぃぃぃぃぃ!」


 その後、真っ白な灰になった学園長を他所に、片付けと掃除を再開する。



『ピロロロン!お風呂が沸きました!』


 その後、一軒家の割に大きな浴場を掃除し終えて、今に至る。


「…トイレが発見できて…良かった…」


「ちょっと奥まったところにあったんだよな」


「ココロ…ダメージ…」


 机に突っ伏している真っ白な灰をスルーしながら、1日ぶりの風呂に心を向ける。


「…どうしよう…進…」


「うん?どうした?」


「…一人での入り方…わからない…」


「Oh…王女様…」


 ピンポーン!


「ん?誰か来たのか?ソフィ、ちょっと玄関行ってくるわ」


「…ん…わかった…」


 えーっと、覗き窓でっと…あっ桐生さんだ。


 扉をガチャっと開き、中へと招き入れる。


「どうしました?」


「それがですね、家の学園長が現在行方不明でして、なにか知らないかなと…」


「…それなら…今…リビングにいる…」


「え?」


「…丁度いいから…連れてって…」


「わかりました…ありがとうございます。

 …ったく…生徒の世話になってんじゃねぇよ…」


 ハハハ、今少し桐生さんの素が見えた気がする。


 …ん?待てよ?学園長?


「あっそうだ」


「…?…どうしたの?…」


「桐生さん、ちょっとすいません」


「はい?どうしました?」


「学園長なんですけど、ちょっと手伝って貰いたいことがあって…」


「手伝いですか?まあ、お世話になったみたいですし…本人に聞いてみればいいんじゃないですか?」


「はい。ありがとうございます」


 よし、保護者(桐生さん)からも許可を得たし…少し聞いてみよう。



「ソフィア・アイスバーグに風呂の入り方を教える?」


「そうです」


「そこでお姫様が出てくるのか…」


「…母様の…知り合いなら…安心…」


「学園長…後でお説教ですよ?」


「ひゃっひゃい!」



 その後、快く引き受けてくれた学園長と共にソフィは風呂へと行き、俺は段ボールから必要な物を出していくことにした。


「まさか現状維持の魔方陣が粗悪品だったとは…」


「ハハハ、本当にまさかですよね」


「うーん、予算会議でベッド等の予算は捻出することになったんですが…」


「流石に掃除業者は無理ですよね…」


「此方の落ち度ですから、予算は出ると思いますが…多分自分達でやった方が早く終わりますよ?」


「え?いや、そんなことはないと思いますけど…」


「今から会議を開いて、議論して、予算が出たら業者を選定して、予約して、それでやっとですよ?その間に自分達で終わらせてしまった方が速いとおもいますが…」


「たっ確かに…」


 今日明日の着替えを出しながら、短くため息をはく。


「結局、掃除はしないといけませんしね…」


「ポイントが入ったら、便利な道具を探してみるのも手ですよ」


「そうですね…明後日の帰りにでもいってみます!」


 授業初日の予定も決めて、一息つく…どうやら、二人があがってきたようだ。

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