表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/27

プロローグ

「ヤッバイ遅れる!」


 学園へと入学する朝、盛大に寝坊した俺…黒田(くろだ) (すすむ)は、全力で走っていた。


「おっ坊主!今日から学園かい?」


「はい!」


 そんな中、()()()()()()()()、鉢植えに水やりをするおじさんが、何かを投げてくる。


「うわっと!」


「その様子だと朝飯食ってねぇだろ!そのリンゴやるから行きながら食っとけ!」


「有り難うございます!」


「おう!遅れる前にとっとと行けよ!」


「ヤッベそうだった!」


 俺は、身体を輝かせながら学園へと向かう。



 進化の日…革命の日とも言われるその日を境に、世界は変わった。


 個々人が武器を産み出す権利を得たのだ。


 その権利に付随する効果は二つ。


 単純な身体強化と、魔法能力。


 極度に上がった動体視力と身体能力は、当時世界を席巻していた『銃』という武器を衰退させ、その武器を基本としていた大国を滅ぼした。


 民主主義が主流だった世界は、王政が息を吹き返し、力こそ全ての国もあったそうだ。


 安定期に入った今、国が変わるなんてことはそうそう無いが、力を持つ革命派はまだまだ存在するし、それに対抗する手段を国は欲する。


 その結果産まれたのが『学園』と呼ばれる、全寮制の軍学校だ。


 『実力・素質さえあれば誰でも入れる』


 これを謳い文句に開かれている学園は、学費無料やら生活費保証やらのサービスから、世界最高峰の教師陣まで揃え、他国からの留学生まで受け入れる懐の深さも持ち合わせている。


 その分倍率も高い…と、思いきや、求められる実力・素質の高さゆえに、基準さえ満たせば入れるレベルで倍率は低い。


 ただ、数年に一度くらいのペースで、他国の王族も入学するため、学園内で気を抜いたりは出来ないだろう。


 下手に恨みでも持たれた日には…まあ、学園内では無事だと思う。


 『他国の特殊部隊にも突破されない安全性!』って広告を打つレベルで安全らしいし…


 問題は、卒業後である。


 そこから先、いつ何時も気が抜けない生活なんて、やりたくないわけで…


 まあ、よっぽどの事でも無い限りは大丈夫だろう。



「後…すこ……し!」


 おじ…おっちゃんから貰ったリンゴを食べる間など無く、もうすぐ学園につく。


「ここのY字路曲がったら後は道なり!」


 頭の中で地図を思い浮かべながら、後数分でたどり着けそうだとほくそえむ。


「「よし…ギリギリで間にあ………」」


 人!?まずっ…避けきれな………


「わあっ!」


「キャッ!」


 お互いに避けようとするも避けきれず、もつれながらゴロゴロと転がって行く。


「いっつつぅ…」


「ううっ…」


 痛みを我慢しながら、ぶつかった相手を見る。


「おい、大丈夫か?」


 見た感じ、大きな外傷は無さそうだ。


 強いて言うなら、その銀髪をツインテールにして留めているゴムが緩んでいる程度か…


「ん…大丈夫…」


 手を貸しながら立ち上がる。


 まだ…なんとか………間に合うかなぁ?


「…っ!?いったっ…」


「どうした!?」


 もしかして見えてないだけでどっかやっちゃった!?


「多分…足…捻挫…」


「あぁ…」


 避けようとした時かな…はぁ…


 しゃがみながら、鞄を渡す。


「…ん?…何?」


「おぶって行くから、俺の鞄持ってくれない?」


「気にしなくて…いい…その制服…学園のでしょ?」


「そっちも学園の制服着てるだろ?俺がおぶればまだ間に合うかもしれない」


 その銀髪の少女は、クスリと笑いながら、鞄を持つ。


「また…事故…おこすの?」


「おいおい、そりゃ言いっこ無しだぜ」


 少女をおぶった俺は、よっこいしょと立ち上がりながら、再度身体を輝かせる。


「ゴー…ゴー…」


「よし、行きますか!」


 背中からのウキウキした声を聞きながら、グンと速度を上げていく。


「落ちないように掴まっとけよ!」


「…ん!」



「初日から遅刻とは良い度胸だな?」


「「すいませんでした!」」


 はい、間に合いませんでした!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ