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雑文アクション「ロングラン・ハイライダー」  作者: ぽっち先生/監修俺
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新兵器登場っ!

それは今まで男が見た事もないような異様な姿をしていた。その姿を敢えて例えるなら四角い鉄の箱だ。そんな箱が四つ、底の部分を時々アスファルトに擦りながらゆっくりと男たちの方へ向かって来たのである。


「なんだ?箱が動いているぞ?後ろから誰か押しているのか?」

「どうかな。と言うかあれって移動防壁か何かか?何とも大掛かりなモノを持ち出してきたな。どこの馬鹿だ?」

「こいつらの仲間じゃないの。ここのクリミナーって結構規模が大きいらしいから。それにほら、前だけじゃなくて後ろからもやってきたわ。」

東雲の言葉に男は後ろを振り向く。確かにそこには前方からやって来るものと同じ四角い箱がノロノロと向かってきていた。


そして先程の東雲の推測は当たっていた。今男たちに向かって来る物体はクリミナーが所有している新兵器だったのである。

ただ、その移動速度は牛歩のようにノロかった。なので集合時間に間に合わなかったのだ。だがそれが功を奏して東雲の無双から逃れられたともいえよう。

だが、そんな新兵器の出現にも東雲は慌てた様子はない。MG42汎用機関銃の熱く焼けた銃身を新しいものにワンタッチで交換すると、新たな弾帯を噛ませて射撃準備を整えた。そして前方からやってくる四角い箱へ向けて発砲した。


ブオーンっ!

その耳に響く甲高い連続発射音を真横で叩きつけられた男と非村は咄嗟に耳を塞いだ。だが東雲は元々照準ヘッドセルを兼ねたヘルメットを被っているので然程音は気にしていないようだった。

そして毎分1200発の発射速度で7.92mm-57弾が前方の四角い箱へ吸い込まれてゆく。だが箱の前面では衝突した弾丸が火花を散らして飛び散っていた。

そう、四角い箱の正体は4台のオートバイを四角に鋼材で連結し、四方を10mm厚の鉄板で囲った簡易装甲車だったのである。その重量足るやなんと6トンっ!どうりでのろのろとしか動けない訳である。

そして一番の弱点と思われるタイヤ部分も装甲で隠されているので残念ながら銃弾では手も足も出ないシロモノだった。


「あら、結構厚い装甲ね。これは失敗したかな。パンツァーファーストも持ってくればよかった。」

東雲は軽い口調で言っているがその表情はかなり厳しい。因みに東雲が言っていた『パンツァーファースト』とは戦場遺跡にてMG42汎用機関銃と共に見つかった携帯式対戦車ロケット弾の事である。


その時、四角い箱の前面の一部がぱかっと開き中から銃身が飛び出した。そして男たちに向けて発砲してきた。


「伏せろっ!」

男は東雲に向かってそう叫んだが当の東雲は聞く耳持たずでMG42汎用機関銃を撃ちまくっている。なので既に発砲に伴う熱で銃身は真っ赤だ。こうなると発射された弾道も狂うのだが、東雲はそんな事はお構い無しとばかりに射撃を続けた。

だがその弾数の差が功を奏したのか何発かの7.92mm-57弾が四角い箱の前面に開いた銃眼の隙間から中に飛び込んだ。そして内部にいたと思われるクリミナーを撃ち抜く。

だが相手の数は4輌である。いや後方にも同じ数の装甲車が迫ってきているので合計8輌である。しかも男たちのいる場所は後ろが垂直に近い斜面で、前は海だ。そして両側からは装甲車が迫っている。これでは袋の鼠だ。多分、もう少し経てば近づいた車輌から正確な射撃を受け男たちは蜂の巣にされるはずである。


だがその時奇跡が起きた。それは海の上空を遥か沖合いから轟音を轟かせながらやって来た。その姿を視認した男は、またしても新手の増援がきたのかと観念し、葉月だけでも逃がそうと900Rで装甲車に特攻を掛けるべく後ろを振り向いた。

だがそこで男は祈りを捧げている葉月の姿を見た。そんな葉月がぽつりと呟く。


「来てくれたわ。」

「来てくれただと?もしかしてあの空を飛んでくるやつは葉月が呼んだのか?」

葉月の言葉に男は問い返した。その問いに葉月はこくんど頷く。


「あれは神獣『グリフォン』よ。」

「へっ?」

葉月の説明に男は耳を疑った。確かにこの世界には魔物が存在するがさすがにドラゴンクラスの存在は確認されていない。いるとか見たとか言う噂はあったがあくまで噂だ。そしてグリフォンという存在もドラゴンと同じ程度にその存在は証明されていない。

そんな幻ともいえる存在を葉月は呼び寄せたらしい。これぞまさに巫女のチカラなのだろうか。

だが凄まじい速さで飛んで来たグリフォンは一旦男たちの上空をパスしてゆく。その姿を下から垣間見た男はその異様な姿に驚きつつも疑問を覚えた。


「あれがグリフォンなのか?なんか聞いた話とは違う気がするんだが・・。」

男が驚いたようにクリミナーたちもグリフォンの登場にドキモを抜かれたようだった。なので男たちに向けて撃ち掛けていた射撃も止まっていた。

因みに装甲車の上面には装甲は施されていない。なので雨が降ったらずぶ濡れであるが、大抵の銃弾は横からしか飛んで来ないから少しでも重量を軽減する為の措置なのだろう。もっともそのおかげで上空を飛び去ったグリフォンの姿も垣間見れたらしい。


「うわーっ、あれがグリフォンかぁ。私初めて見たわっ!かっこいいわねぇっ!ねえねえニンジャも見たでしょ。あの金色に輝く翼ってまるで私の可愛いオートバイに付いている本田神のマークにそっくりじゃなかった?」

「あっ、ああ、そうだな・・。確かに似ていた気がする・・。」

突然現れたグリフォンに何故か東雲はおおはしゃぎだ。しかもグリフォンの翼が自身が信奉する『本田神』のシンボルである『ウイングマーク』に似ていたのだから、その熱狂振りはますますヒートアップしたようだ。

そんな東雲の問い掛けに男は気を抜かれたかのように力なく答えた。


神獣『グリフォン』。人々の間で噂されるその姿はワシの頭部とライオンの下半身に翼をもったハイブリットな魔物であった。

だが今男たちの上空を通過した魔物はどう見ても噂されている姿とはかけ離れていた。そんな男の疑念に葉月が答える。


「あの者は神の命を受け別世界から召喚された猛禽類。その真の名は『F-16ファイティング・ファルコン』と言います。」

葉月の説明に漸く男は納得したようだ。確かに別世界から召喚されたモノなら姿かたちが噂と違っていても納得できる。

そう、男は納得した。だが・・、皆さんは納得できましたか?私はいまいちですっ!だって『F-16ファイティング・ファルコン』って米国のジェット戦闘機じゃんっ!確かに名前は似てなくもないが、もっと似ているやつが北欧にあるじゃんっ!と言うか北欧の方はまんま『グリフォン』じゃんっ!どうせ召喚するならそっちの方だろうっ!


だがそんな私の叫びはこの世界には届かない。だが異世界から召喚されたF-16、もといグリフォンは大きく旋回してその軸線上にクリミナーたちの装甲車を捕らえると対車輌用誘導兵器、別世界での名称『ヘルファイヤ』をぶっ放してきた。

F-16の翼下から放たれた8発のヘルファイヤーはその搭載されている個別誘導システムによってだぶる事無く1台に付き1発がクリミナーの装甲車に吸い込まれてゆく。

そんなヘルファイヤーの装甲貫通能力は100ミリを超える。なので高々10mm程度の鉄板など紙を裂くように貫通した。と言うよりそもそもクリミナーの装甲車には上面に装甲がなかった。

おかげで装甲車に命中したヘルファイヤーの爆風は殆どが上空へと開放され男たちに被害は及んでいない。


その後、F-16・・、もといグリフォンはもう一度上空をパスし自らの戦果を確認すると男たちに向けて翼を振って飛び去って行った。


「もしかして俺が知らないだけで、この世界って『ナーロッパ』の一部なのだろうか?」

男は轟音を轟かせて飛び去るF-16、もといグリフォンの後姿を見ながら呟く。その呟きに葉月が質問してきた。


「ナーロッパ?なあにそれ。」

「古より語り継がれている伝説の物語における舞台設定の事さ。正式には『中世欧州風』って言うらしい。」

「ふう~ん、そこにはあんな感じの聖なる神獣がいるんだ?」

「あれって本当に神獣なのかなぁ。俺が聞いていたグリフォンとはかなり趣が違うんだけど・・。」

うんっ、違っていて当然だ。どこの世界にジェット戦闘機をグリフォンと言い張るやつがいるというのだ。いや、待てっ!確か北欧の国の戦闘機がそんな名前だった気がする。う~んっ、やっぱり登場させる機種を間違えたのだろうか?

だが、その事に関しては突っ込むまい。そう、真相はどうであれ、人々が信じていればあれがグリフォンなのだ。所謂イワシの頭も信心というやつである。そう、信じる者は救われる。それが信仰なのだ。そして信じるていれば、神はその者に優しい救いの手を差し伸べてくださるのである。

但しその救いは殆どの場合天国行きのキップで支払われるのが、世知辛い現世を生きる者には納得できないらしい。これは現世での利益や幸せのみに固執する現代人らしい考えではあるが、神様もそんな者たちを救わねばならぬとは大変である。まぁ、殆どの場合人々の願いは無視されるからどっちもどっちな気がしないでもないのだが・・。

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