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雑文アクション「ロングラン・ハイライダー」  作者: ぽっち先生/監修俺
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湾岸大乱戦

さて、まんまと非村たちの罠に引っかかった聖邪神教会の親衛隊はトンネルの出口が塞がれているのを目にしトンネル内で停車した。

その出口を塞いでいる壁は、海底の下を通るトンネルが高潮などからの浸水を防ぐ為に備えていた防水壁であった。なので作りはかなり頑丈である。

だが聖邪神教会の直営部隊である親衛隊の隊長は指先ひとつで部下へ指示を出した。その指示に従い1台のオートバイが前に進み出る。そのライダーは自身のオートバイのサイドバッグに入っている荷物を何やらごそごそといじり終えると突然スロットルを煽って防水壁目掛けて突進しそのまま激突した。


どか~んっ!

トンネル内に凄まじい爆発音が響き渡る。これ程の爆発はオートバイのタンクに入っている燃料だけでは起こり得ない。多分先程ライダーがいじっていたサイドバックの中には相当量の爆発物が入っていたのだろう。そして先程ライダーがサイドバック内を弄っていたのは、その爆発物の安全装置を解除していたと思われる。


だが聖邪神教会のライダーたちは特殊なヘルメットでも被っているのか爆発に伴う衝撃波や爆風に動じる様子はない。いや、それどころか仲間が壁に激突して爆死したにも関わらず誰一人として動揺している様子もなかった。

そして、そんな特攻とも言える攻撃によってさしもの防水壁にも大穴が開いた。だが、それでもまだ1台のオートバイが辛うじて通れる程度の大きさである。

そのせいなのか親衛隊の隊長はまたしても無言で指示を出した。そして二人目のライダーが最初のライダーと同じように壁へ突進した。その表情はフルフェイスのヘルメットにより見る事は出来ないが多分無表情である。

つまり彼らは宗教と言う麻薬に溺れていたのだ。なので何の感情も抱かずに言われるがままに行動しているのだろう。それはまさに生きた機械とでも表現すればよいのだろうか。


そして2度の爆発によってとうとうオートバイが大挙して通れるだけの穴が開いた。その穴を残った聖邪神教会のライダーたちが何の感情も表に出さずに通り抜けてゆく。

その光景をトンネルの外で見ていた男と非村は驚愕した。最初の爆発は壁に遮られてオートバイが突っ込むところを見なかったが、2度目はその開いた穴からオートバイが突進してくる姿を見た。そして激突と同時に爆発が起こった。

この事から男と非村は聖邪神教会が爆弾を壁にセットして爆破したのではなく、特攻によって一気に爆破した事を知った。


「あいつら馬鹿を通り越して能無しなのか?」

「ふんっ、あれが宗教の負の面なのさ。信じる者は救われる。何とも便利なフレーズじゃないか。」

男の問い掛けに非村が吐き捨てるように答えた。


「さて、予定が狂ったな。なので取り合えず逃げるぞ。ここで撃ち合いをしてもいいが、あんな馬鹿共相手に仲間を危険な目に晒したくない。」

非村はそう言うとやはり爆発に唖然としている仲間へ向け合図を送り、手を出すなと告げた。その合図を受けた非村の仲間たちは未だ何が起こったのか理解できていないようだが銃撃の準備を中止し物陰に隠れた。


どんっ、どんっ、どんっ!

そんなふたりにトンネルを抜け出た親衛隊のライダーたちがショットガンを撃ち掛けてきた。しかも今回は停車しての射撃なのでかなり射撃精度がよい。ただ距離がそこそこ離れていたので大きなダメージはなかった。

そんな親衛隊相手に非村もM-4カービンライフルを一連射する。そして相手が一瞬怯んだ隙にKatanaをホイールスピンさせながら発進させた。それに男も続く。

当然親衛隊たちも男たちを追い始めた。その一番手はやはりトンネルの前で非村たちを追い抜いて行ったVMAXたちである。そしてそんなVMAXたちにも例のサイドバックは取り付けられており、ライダーたちは片手でバックの中身を弄っていた。

そんな作業があった為、VMAXたちはかなり引き離されたのだが、そんなアドバンテージもVMAXたちの凄まじい加速力にて忽ちゼロになる。そしてVMAXのライダーは男と非村の前に出ると手元のスイッチを押した。


どか~んっ!

またしても凄まじい爆発がVMAXを包み込んだ。その衝撃と破片は当然男と非村を襲う。だがそれらは全て男の900Rに装備してあるイージスシステムが跳ね返した。

だがそんな先頭を行く男に非村が声をかける。


「悪いが速度を落とせっ!」

「なんでだっ!ただでさえ分が悪いのに速度まで落としたらそれこそあいつら体当たりしてくるぞっ!」

非村の依頼に男は当然の如く反論した。


「それでも構わんっ!あんな特攻野郎どもをこのまま連れて行って町で爆発でもされたら溜まらんっ!決着はこの湾岸線内で付けるんだっ!」

「ちっ、面倒だなっ!だが仕方ない。ならばこっちも奥の手を出すとしようっ!」男はそう言うとレーンを変えていきなり減速した。これにより後ろを走っていた非村は先頭へと送り出された形となる。なので前方から迫ってくる特攻オートバイに対して無防備となった。

そんな非村に対して特攻VMAXがちゃんすとばかりに仕掛けてくる。だが非村はそいつに対して最後となる手持ちの弾倉の弾丸を全て撃ち込んだ。


ぱぱぱぱぱっ!


弾倉内の20発の内、2発がVMAXの極太リアタイヤに命中し相手は忽ちコントロールを失い転倒した。そんなVMAXの横を非村に続いて男が通り過ぎようとした時、VMAXがいきなり爆発した。男の900Rは煽りを受けてガードレール近くまで流されるが辛うじて持ち直す。


「うおっ、派手な送り火だなっ!しかも自前かよっ!お前ら友だちがいないんかいっ!くそっ、なんか親近感を感じちまうぜっ!」

男の最後の言葉は冗談だったのかも知れないが、しかしこれによって聖邪神教会の勢力は前方に1台、後方に30台程度となった。なので男は後方のアメリカン軍団を一気に片付けるべく奥の手を出してきた。


男が奥の手と言っていた物は900Rの後部に取り付けてあったリアボックスの下部にあった。それを男はハンドルに付帯してあるスイッチを押す事によりボックスの下部を開放し後方へばら撒いた。


ばら撒かれた物体の名前は『クラスター』と言い、それは直径2センチ程の小型の散布型爆雷である。

クラスターはその小ささにも関わらず個々にセンサーが装備されており、直接接触しなくても近づいただけで爆発する。効果は20cm離れているタイヤに穴が開く程度だが、直接踏んだりするとタイヤは派手にバーストする。

素肌に破片が刺さると結構な傷となるが、皮のブーツを履いていれば50センチほど離れた場所で爆発した場合、破片は皮を貫通しない。

そもそもクラスター1個の大きさは直径2センチ程度なので破片も精々4、5個でしかなく、破片の形が歪なので遠くまで飛び散らない。また投下後、1分で100%自動的に爆発するので使用後に不発弾の心配をする必要がなかった。

そんなクラスターを男は一気に全て放出した。その数200個。小型とは言え爆弾が200個も一気に爆発すると聞くと、実に派手な爆発が後方で起きるような気がするかも知れないが、実際はお祭りなどで束ねられた爆竹が破裂する音の方が大きいくらいだ。

しかし、男の後方を集団で走っている聖邪神教会の親衛隊には効果抜群であった。そもそもクラスターとは追いすがるオートバイのタイヤをパンクさせる目的で開発されたものだ。そんなクラスターの爆発円にまともに突っ込んだ親衛隊のオートバイは、たちまち数台がタイヤをバーストさせ転倒した。辛うじて転倒を免れたオートバイも結構な数がタイヤに破片を受けており、やがては空気が抜けて走れなくなるであろう。

それでもクラスターの攻撃を何とか凌いだ親衛隊は15台はいた。前方を走る1台を加えれば16台である。それに対して非村はM-4カービンライフルの弾を撃ち尽くしており、男もライフルや拳銃はリアボックスの中だった。なので走行中には取り出せない。


「ちっ、全力攻撃したってのに半分しか脱落させられなかったかっ!さすがは邪神を崇拝するアホ共だな。悪運だけは強いと見える。」

男はクラスター攻撃の結果に落胆し悪態をついた。そしてタラスターの攻撃を凌いだ親衛隊の15台は男が次の攻撃を仕掛けてくる前にカタをつけるべく一斉に増速して距離を詰めショットガンを撃ち掛けてきた。

その散弾は殆どが大きく外れるか900Rの後方イージスによって弾かれるがイージスの稼動可能時間は6分程度である。それを過ぎると魔力が切れてしまい、再充填するには20kmほど走らなければならなかった。そして既に男は5分近くイージスを稼動させていた。

だがそんな絶体絶命のピンチにこそヒーローは現れるものである。そして戦隊モノのヒーローとは大抵5人組みであった。そう、漸くマルコたちが後方から追いついてきたのだ。


マルコたちは聖邪神教会の親衛隊目掛けて後方から攻撃を仕掛けた。獲物は全員非村と同じM-4カービンライフルである。しかもマルコたちは元々戦闘を想定していたので保有する弾丸の数も十分な数を装備していた。なので弾切れを心配する様子もなくひたすら撃ちまくった。


ぱぱぱぱぱっ!

合計5丁のM-4カービンライフルの軽快な射撃音が湾岸線にこだまする。そしてマルコたちは片手撃ちという不安定な射撃という不利を弾数で補い、一気に10台のオートバイを撃墜した。

これにより残る親衛隊は後方に5台、前方に1台となった。だが残った5台はまたしてもマルコたちに対して特攻攻撃を仕掛けてきた。


どか~んっ、どか~んっ!

親衛隊が自爆攻撃を仕掛けてくる事を知らない5人は、そんな特攻オートバイを軽く避けようとしたが、避けただけでは危険は去らない。結局最初の2台による特攻攻撃で先頭を走っていたGSX-S1000のフランコとSV-1000Sのケニーが巻き添えを喰らった。


「フランコっ、ケニーっ!」

後方を走っていたGSX-R1000Rのジョアンはふたりの安否を確かめる為に戦線を離脱し爆発地点へと舞い戻る。だが残ったGSX-S1000FのケビンとV-ストーム1050のマルコは親衛隊による次の攻撃に備えてM-4カービンライフルの弾倉を交換し、前方から迫ってくる親衛隊に向けて発砲した。


ぱぱぱぱぱっ!

この攻撃によって3台となった親衛隊の内2台は撃墜された。しかし、残りの1台は銃撃を受けながらもふたりに肉薄して結局ケビンを道連れにして爆散した。


そんな後方での戦闘中、前方でもそれに呼応するかのように動きがあった。非村のM-4カービンライフルが弾切れと気づいた親衛隊のZL1000が肉薄してきてショットガンによる射撃をしてきたのだ。だがそれらは全て900Rのイージスシステムによって弾かれた。

それを見たZL1000のライダーはショットガンを捨てると迷う事無く自爆攻撃を仕掛けてきた。そして男の900Rの目の前で爆散する。一気に膨れ上がる爆発の火球はたちまち男と900Rを包み込んだ。


「ニンジャっ!」

その光景を見た非村は思わず叫んだ。だが次の瞬間爆炎の中から男と900Rが飛び出してきたのだ。


ぐおーんっ!

非村はその光景をどこかで見たような気がしたが、実はそれは小さい頃に見たヒーローモノのテレビ画面であった。そう、その昔ヒーローたちは悪の組織が設置した爆発物の中を颯爽とオートバイで駆け回りばったばったと悪を叩き潰していたのだ。

但し爆発現場がいつも砂利の砕石場のような所だったのは、知っている人は知っているヒーローモノのあるあるである。

そんな男の姿を見て非村は呆れたように呟いた。


「全くお前は時代遅れのヒーローかよっ!今畜生っ!羨ましいぜっ!」

非村はそう愚痴ると一人残ったマルコと合流し親衛隊の中で息のある者がいないか確認を始めた。だが当然爆発した親衛隊は全て肉片と化しており、転倒した親衛隊たちも全て息絶えていた。


「さすがにあの速度域で転倒しては生きている者はいないか・・。」

そう呟く非村の元にジョアンが戻ってきた。そのGSX-R1000Rの後ろには銃を手にしたケニーが乗っている。


「おーっ、生きていたのかケニー。悪運が強えーな。」

「へへへっ、まっ、日頃から非村さんたちに転び方を教わっていましたからね。それに今回はプロテクターも完全装備でしたし。因みにフランコも無事っす。ただ足の骨を折ったようなんで置いてきました。後、途中でケビンにも会ったっす。あいつ黒こげでしたけどピンピンしてましたよ。このプロテクターは優秀っすね。」

「ほうっ、みんな無事だったかっ!うんっ、よかったっ!」

非村はケニーの報告にほっと胸を撫で下ろしたようだった。非村としても覚悟はしていたのだろうが、やはり死者が出てはやりきれない気持ちにもなろう。それが怪我人は出たが全員無事と判って素直に喜びが口にだたようだった。


「よしっ、それじゃマルコとジョアンは仲間たちに合流して事故の処理を自治会へ依頼するんだ。だがまた新手が繰り出してこないとも限らない。だから油断するなよ。」

「了解です。」

「あのぉ、俺は何をすれば?」

オートバイを失ったケニーが手持ち無沙汰から非村に質問してきた。


「お前はジョアンに乗せてもらってフランコのところにいてやれ。あいつもひとりでは心細いだろうからな。」

「了解っす。それじゃ行ってきます。」

そう言うとマルコたちは湾岸線を逆走して戻って行った。これは事前に湾岸線を封鎖していたからこそできる荒業だ。普通はこんな事はできない。

そんなマルコたちを見送ると、非村は今度は男に向き直って告げる。


「と言う訳なんでレースは中止だ。まっ、だからと言って葉月の件を諦める訳にはいかない。なのでまた別の方法で決着をつけよう。だがそれまでは休戦だ。今日は色々あったからな。あんたも疲れただろう。なので帰るとしようぜ。」

「そうだな、まぁ、聖邪神教会の件は俺にも係わり合いがある事だからな。つまらん横槍を入れられたが結果オーライとしておこう。」

そんな話をしているところにトンネルで罠を張っていた非村の仲間たちが駆けつけてきた。非村はそんな彼らに再度自治会との今後の対応を指示すると陣頭指揮をとって動き出してしまった。

なので男はひとりぽつんと取り残される。だが、かと言って勝手の判らないメトロポリス・トウキョーの事故処理に顔を突っ込むのも躊躇われた。なので結局何の役にも立たなかったが男は非村の仕事が終わるまで傍にいる事にしたようだった。


そして長い夜が明け、陽が昇り昼前頃にようやく非村と男は江戸川エリアのニシカサイにあるヨシムラ・メカニカルファクトリーへと戻った。

そんな彼らを少女とマリが出迎える。多分ふたりとも寝ずに待っていたのだろう。なので目の周りが窪んでいたのだが無事なふたりの姿を見ると満面の笑顔で出迎えてくれた。


「お帰りなさい、ニンジャ。」

「おうっ、ただいま。なんだよ、寝てないのか?」

「んっ、ちょっとは寝たわ。でも中々戻ってこないんで心配だったの。」

「はははっ、そりゃすまんね。なに、ちょっと想定内のアクシデントがあってさ。だもそれも片付いた。なので俺はちょっと寝るよ。」

「うんっ、判った。おやすみなさい。」

「おうっ、そうだ。タイラーのじいさんの埋葬には俺も出席するから、そうだなシャワーも浴びたいから2時間くらい前に起こしてくれ。」

「判った、軽く何か作っておく?」

「あーっ、そうだな。今はちょっと入らないけど寝れば凄く腹が減っているはずだ。なのでちょっとボリュームがあるやつを頼む。」

「うんっ、それじゃおやすみなさい、ニンジャ。」

「おうっ、おやすみ、葉月。」

この時、男は始めて少女の名を呼んだ。だがそれはあまりにも自然だったので呼ばれた葉月もその事に気づかなかったくらいだ。

そんな葉月を残して男は自分の部屋へと戻って行った。そして葉月は男を見送ると今日の埋葬の準備をマリたちと始めたのであった。

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