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雑文アクション「ロングラン・ハイライダー」  作者: ぽっち先生/監修俺
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いきなり始まる銃撃戦

ダダダダダっ!

男のオートバイが建物の中に突入して男が摩訶不思議な箱からライフル銃を取り出した時、突然建物の入り口に向けて外部からサブマシンガンの銃弾が撃ち込まれた。


「ちっ、新手かっ!」

男はライフル銃を手に、入り口脇の壁に隠れるように外の様子を伺った。そこには見える場所だけでも4、5人の男たちがサブマシンガンをこちらに向けて様子を伺っていた。


「う~んっ、ちょっと出遅れたか。あの人数の中を突破するのは現実的じゃないなぁ。かと言って撃ち合うにしても火力的にかなり不利か・・。」

男は手にしているライフル銃のボルトを操作し弾倉内の弾薬を銃のチェンバー内へ送り込みながら状況を分析した。


男が手にしているライフル銃は『スプリングフィールドM-14』。全長が1120mmもある長い小銃だ。20発入りの弾倉込みの重量は5.9kgで、使用する弾丸は7.62mmx51NATO弾である。その性能は腕の良い射手なら800m先の標的を撃ち抜くことが出来た。

だが普通ライダーたちは長射程のライフルは所持しない。何故ならこんな長いライフルではオートバイで走りながら撃てないからである。もしもライダーが長射程ライフルを欲する場面があるとしたら荒野で獲物を狩る時くらいだろう。

しかし何故か男はM-14を所持していた。確かにM-14はフルオート機構も備えていたので多人数の敵にも対応可能だったが、それでも今回のような近距離での撃ちあいなら、もっと使い勝手の良い銃がいくらでも合った。襲撃者が手にしているサブマシンガンなどがまさにそれである。


襲撃者たちが手にしている銃は全てサブマシンガンというカデゴリーに属するものだったが、何故かその種類はばらばらだった。ある者は『H&K MP5K』を手にし、またある者は『UZI』の銃口を男が立てこもる建物の方へ向けていた。珍しいところでは『トンプソンM1928』と言う銃を持っている者もいた。これは古のキャング映画などで有名な銃である。この銃は円盤状の100発入り弾倉装着が定番だが、襲撃者は普通に30発入りの箱型弾倉を装着していた。

この事から襲撃者たちは装備こそまちまちだがそれなりに場数を踏んでいる事がうかがえる。何故なら確かに100発入り弾倉は沢山撃てそうな気がするが、実は送弾機構が複雑で射撃している途中で詰まってしまい結局全発撃てないなんて事がよくあるのだ。

なので襲撃者は信頼性の高い30発弾倉を選択したのだろう。つまり襲撃者たちはプロと言う事だ。


男が手にしているM-14に対して襲撃者たちのサブマシンガンは、基本的に拳銃用の銃弾を使用するので1発の威力は小さい。また射程も短く100m先の標的に命中させるにはかなりの幸運が必要だった。

とは言ってもサブマシンガンとはそのような用途に使う為に開発された銃ではない。この銃は狭い範囲へ短時間で大量の銃弾を送り込む事に特化した銃なのである。つまり局所的な面制圧を行う為に作られた銃なのだ。その性能はたった3秒で30発入りの弾倉を空にしてしまう程の発射速度を有していた。

そしてそのようなシチュエーションが今まさに男が直面している場面なのである。ひとり対多数。しかも相手は全てサブマシンガンを装備。これはもはや詰んだと言えるだろう。なので襲撃者たちは遮蔽物に身を隠そうともせず男が立てこもる建物の前に集結し、男に降伏勧告を告げてきた。


「へいっ、あんちゃんっ!悪い事は言わねぇ。そのお譲ちゃんを連れて出てきな。そしたら見逃してやる。だが断るってなら覚悟するんだな。俺たちはそのお譲ちゃんを生死に関わらず連れて来いって言われているんだ。つまり死体でもいいんだよ。この意味、判るよな?」

襲撃者の言葉に男は答えない。だが、襲撃者たちが油断して建物の前に集結した事により相手の人数が把握できた。

建物の前に現れた襲撃者の人数は6人。まだ隠れている者がいるかも知れないが取り合えず目の前のやつらを倒せばこの場は凌ぎきれると男は判断した。なので男はM-14の射撃機能を単発からフルオートに切り替えると、ふーっと大きく息を吐いてから入り口に飛び出しぶっ放した。


タンタンタンタンっ!

7.62mm軍用ライフル弾という凄まじい破壊力を持つ弾丸の割には軽い発射音が男の手元から響き渡る。だがこれは音が連続して発された故の錯覚で、実際の音はバリバリバリっ!といった感じである。いや、パンパンパンっ!の方が近いだろうか?

だが取り合えず銃声音の事は置いておこう。問題は一気に発砲された弾丸の行方だ。男のM-14ライフル銃には20発の銃弾が装填されていた。それを男は2秒ちょっとで撃ち尽くした。標的となった襲撃者たちの人数は6人。計算上はひとり3発は命中しているはずである。

だが7.62mm軍用ライフル弾をフルオートでぶっ放した時の反動は凄まじい。素人が何の予備知識も無しにぶっ放したら驚いて途中で手を離すか、または撃ち終わった時には銃口が真上を向いているだろう。

なので撃ち慣れているはずの男でも暴れる銃口を押さえ込むのは難しい。だがこれは逆に弾丸をばら撒くには丁度良かった。襲撃者たちとの距離はおよそ30m。そして幅は20m足らずの範囲に固まっていた。なので男はM-14を保持する体を軽く振るだけで銃弾は襲撃者たちに向けて散らばったのだ。


しかし、実はそんな数撃ちゃ当たる的な射撃では30m離れた的にはまぐれでも期待しない限り当たらない。なので今回の一連射で倒せた襲撃者は3人だけだった。効率としては7発でひとりだ。

だが実はこの数字はかなり良い成績だったりする。20発撃って20人を倒せるのは映画の中だけだ。現実では1発も当たらない事だってざらである。それくらい距離が離れた的へ適当に撃って当てるのは難しいのだ。

とは言っても残りの3人も無傷だった訳ではない。ひとりは太ももに命中弾を受け倒れこんだし、もうひとりもコンクリートに当たって跳弾した弾丸でケツを負傷した。ひとりは無傷だったが、驚いて咄嗟に伏せた場所にあったガラス片で腕をざっくりと切っていた。


そうゆう意味では男は一連射で全ての敵を倒したとも言えた。だが実は襲撃者はこの6人だけではなかった。正面に陣取っていた6人以外にも左右に2人づつ仲間がいたのだ。

しかも、最初に男を襲った狙撃手もまだおり、身を晒した男に銃弾を送り込んできた。だがそれは咄嗟の射撃だったのだろう。銃弾は男を大きくはずれ入り口の扉を抉るに止まった。

その着弾にまたしても男は建物の中に身を隠した。しかしそれに合わせるかのように側面を警戒していた襲撃者たちが男に対して射撃を開始する。なので忽ち建物の入り口は着弾により抉られたコンクリート粉塵で見通しが利かなくなった。


「う~んっ、失敗した。左右にもいたのか・・。だが一番厄介なのはやっぱり狙撃手だな。遠距離射撃ならこいつも負けてはいないが、こう撃ち込まれては相手の場所を確認できん。」

男はM-14の弾倉を交換しながら自分に言い聞かせるかのようにひとり愚痴る。

だがその時、襲撃者たちのサブマシンガンとは違う銃声が聞こえてきた。


パパパパッ、パパパパっ!

その軽く甲高い銃声から、男はその銃が小口径高速弾を使用する軍用アサルトライフルと当たりをつけた。そしてその銃声音に合わせるかのように襲撃者たちの銃声が止む。

なので男は外の状況を確かめる為にそっと入り口から顔を出した。だが、それを待っていたかのように狙撃手から銃弾が送り込まれてきた。


パシっ!

銃弾は男の直ぐ横の壁に着弾しコンクリート片を撒き散らした。男は直ぐに身を隠したがその時別の銃声が轟く。


パーンっ!


銃声は一発だけだった。その後はなんの音も聞こえてこない。男は外の状況を確認したい衝動に駆られたがぐっと堪えて次の状況変化に備えた。そんな男にまたしても外から声がかかった。


「あんたを襲った連中は片付けた。スナイパーもカウンターアタックで倒したから、もう出てきても大丈夫だよ。」

撃ち合いの最中にそんな事を言われてたからと言ってほいほいと出てゆくやつはいない。なので男はその声を無視した。


「あーっ、すまん。初めに名乗るべきだったか。俺はあんたが守っているじいさんの仲間で非村 抜刀斎って言う者だ。後、仲間が4人ここにいる。なので俺の身元確認はタイラーのじいさんに聞いてくれ。」

外の声は、自分たちは男にハイライダー・タダヒコと名乗った老人の仲間だと告げてきた。いや正確には名前が違ったが、それは状況から考えてファーストネームとファミリーネームの違いだろう。

とは言っても男にはそれを確認する術はない。何故なら老人は既に息絶えていたからだ。だがそんな男に老人の傍にうずくまっていた少女が告げる。


「あの声は確かに非村よ、じいの仲間だわ。」

少女の証言により漸く男は外にいる男たちを敵ではないと承認し入り口から表へと出ようとした。少女も男に続こうとしたが、しかし男はそれを押し留めた。


「悪いが俺が外部の安全を確認するまでは身を晒すな。別にあの非村って男を疑っている訳じゃないが、敵を取りこぼしている可能性はあるからな。」

「・・。」

男の言葉に少女は不満そうであったが、しかし男の言っている事も理解できたのか黙ってまた老人の下に戻って行った。

そして男はひとり建物の外に出る。そこには非村と名乗った男と4人の男がアサルトライフルを手に辺りを警戒しながら立っていた。そんな男たちに男は取り合えず自分の名前とここにいる事情を告げた。


「俺はジャスティニア・ローソン。通り名はハイライダー・ニンジャだ。あんたがお仲間だと言っていたじいさんに依頼されてあるモノを輸送する為にここに来た。因みにじいさんは死んじまったよ。」

男の声に非村と名乗った男は顔をしかめた。そして後悔の言葉を口にする。


「ちっ、間に合わなかったか・・。くそっ、もう少し情報が早く手に入っていたら助けられたものを・・。いやっ、待てっ!タイラーのじいさん以外に女の子がいたはずだっ!その子はどうなったっ!」

「あーっ、その子なら建物の中だ。だがまだここいらの安全を俺が確認していないんでな。なので中に置いてきた。」

「そうかっ、葉月は無事だったかっ!それは不幸中の幸いだっ!」

非村は少女を葉月と呼び、無事だと聞かされ安堵したようだった。だが男はそんな非村に今回の襲撃に関する説明を求めた。それに対して非村も合意する。


「ここではなんだから取り合えず俺たちのアジトへ向かおう。まっ、あんたにとっては俺たちも信用に足る存在じゃないかも知れないが、ここよりは安全だ。それが嫌なら葉月だけ置いて消えてくれ。」

「難しい選択だな。俺はじいさんからあの女の子をある場所へ運ぶよう依頼され受けたんだ。つまり俺は今仕事中なんでね。その中には女の子を守る事も含まれている。」

男はそう言うと手にしたM-14の銃身を少しだけ非村の方へ向けた。その動きに対して非村以外の男たちが一斉に男へ銃口を向けた。そんな男たちの動きに対して非村から叱責の声が飛ぶ。


「よせっ、ブラフだっ!試されただけだっ!すまんね、こいつらは俺の直接の部下なんで、葉月より俺を優先するんだ。なので今のは大目に見てくれ。」

そう、男は非村たちが少女をどの程度重要視しているかを計る為に敢えて非村に銃口を向けたのだった。彼らがどんな事があっても少女を守るつもりだったら、彼らが警戒すべきは外部であり、男が非村に銃口を向けたとしても警戒を緩める事がないはずだった。なので今回の件に関しては彼らは男からかなり信用をなくした事になる。

だが、そんな非村たちを擁護する声が男の後ろから届いた。


「非村っ!じいがっ、じいが死んじゃったっ!」

少女はそう言いながらそれまで押さえ込んでいた感情を溢れさせたかのように泣きじゃくりながら非村の元に駆け寄ると、非村の胸の中で声を押し殺しながら鳴き続けた。その姿を見て漸く男も意地を張っている場合じゃないと矛を収めた。


「いいだろう、あんたらのアジトとやらに向かおう。話はそれからだ。」

そう言うと男は泣きじゃくる少女を非村から引き剥がし、自分の相棒が待つ建物の中へと連れて行った。そして次の瞬間、建物内から男と少女が乗ったオートバイが飛び出してきて、非村の前で停止した。


「見たところ、あんたらもライダーのようだ。なら先導は頼んだぜ。だがあんな事のあった後だ。ちんたら走っていたら置いてくからな。」

「ふっ、言ってくれるじゃないか。まっ、アジトまでは10kmほどある。俺たちの走りについてこれなくて迷子にだけはならないでくれよ。」

「あーっ、俺は田舎もんなんでね。あまり信号で停まった事がないんだ。そこら辺気遣ってくれ。特に今は非常時だろう?」

「やれやれ、銃撃戦をしただけでも自治会に文句を言われるのにその上交通ルールも無視しろってのか?まっ、だが対応としてはそれが正しいんだろうな。いいだろうっ、都会での走り方を教えてやるぜっ!」

非村たちはそう言って少女をガードする事も忘れたのか、自分たちのオートバイが置いてある場所へと走り出した。男はそんな非村たちに呆れて彼らを置いて逃げ出そうかとも思ったが、まずは情報を手に入れる必要があると考え素直に彼らの後をゆっくりと追ったのだった。

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