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1.依頼人

一応連載の形式をとってはいますが、6回ほどの短編です。

「いや……そっちの事情は解ったけど、一体俺にどうしろと?」



・・・・・・・・



 ソロの冒険者をやってる俺が、ギルドの依頼でとあるダンジョンに向かった時の事だ。依頼の「品」を探して中位階層を歩き廻っていた俺に、「声」をかけてきたやつがいた。


 ダンジョンの中だからと言って、話しかけてくるやつがいないわけじゃない。ダンジョンに潜ってる冒険者だっているんだしな。

 ただ……この時俺に話しかけてきたやつは、ちょいとばかり様子が違っていた。ぱっと見て一番目につく違いは、頭が無い(・・・・)という事だろう。


 ――首無し騎士(デュラハン)……そう呼ばれる魔物だった。


 そいつは〝(ちか)しい魔力を感じたから〟と言って俺に「声」をかけ、取引を持ちかけてきたわけだ。

 俺が探している「品」――ダンジョン内で死んだある貴族の遺体――に心当たりがあると念話で語りかけ、それを渡す事と引き換えに……


「……長年探していた『頭』らしいのが見つかったのはいいが、どれが自分の頭か判らなくなったから見分けるのを手伝え――って……一介の冒険者に随分と無茶を振ってくるじゃねぇか」

『そう言う口ぶりとは裏腹に、随分と胆が据わっているようではないか。我に()ぅて動じぬ者など久しぶりだぞ、死霊術師(ネクロマンサー)よ』


 ……そう、デュラハンが俺に親近感を抱いて声をかけてきたのも、冒険者ギルドが俺に屍体の回収を仲介したのも、俺がパーティを組まずにソロで活動しているのも……全ては俺が死霊術師(ネクロマンサー)だってのが原因だ。死霊術(ネクロマンシー)ってのはどうしても忌み嫌われるし、控えめに言っても敬遠されがちだからな。

 まぁ、俺には死霊術の適性があったし、折角神様から貰った適性を(ないがし)ろにする気も無かったしで、死霊術師(ネクロマンサー)の道に進んだわけだが。


 術師学校を卒業後、就職の当ても無かった俺は冒険者として登録したんだが……その登録の初日に、死霊術師(ネクロマンサー)はパーティを組めない――少なくとも組みにくい――と忠告された。冒険者ギルド自体は死霊術師(ネクロマンサー)を軽んじちゃいねぇが、冒険者たちはそうじゃねぇ。敵視こそされないが、何となく敬遠されがちなんだそうだ。

 かと言って、死霊術師(ネクロマンサー)同士でパーティを組むケースはほとんど無く、大抵はソロで活動する事が多いんだとか。なので、盗賊(シーフ)遺跡探索者(ルインダイバー)監視人(レインジャー)の講習を受けるようにと勧められた。ソロで活動するには必須の技術なんだそうだ。


 まぁ、なんだかんだあって、俺はソロの冒険者としてやっていけてる。

 ソロ活動が前提なわけだから、魔獣討伐なんてヤバそうな任務は引き受けねぇ。いくらアンデッドを使役できると言っても、魔力が尽きたら終わりだからな。独りでできる事なんて高が知れてる。

 そんなわけで、俺は基本的に採集依頼や調査依頼を引き受けているわけだが、時にゃ死霊術師(ネクロマンサー)としての技倆を買われての依頼が舞い込む事もある。……大抵は屍体の回収だな。


 ――で、今回回収を依頼された屍体はダンジョンの中層以下で死んだらしく、現場を探して屍体を回収するのに苦労しそうだったんだよな。

 ダンジョン内で死んだ屍体は、通常であればダンジョンに吸収されちまうんだが、今回の屍体は何とかいう護符を持っているとかで、ダンジョンによる吸収も魔物による食い荒らしも心配しなくていいらしい。逆に俺が死霊術を行使する場合には、教わった手順で護符の効果を一時解呪する必要があるわけだ。


 とは言え、問題の屍体を探し出すのが手間な事に変わりは無かったんだが……


『その屍体のある場所に案内してやろうと言うておるのだ。ダンジョン内を彷徨(うろつ)く手間が省けると思えば、浮いた時間の一部を我のために使っても、罰は当たらぬと思うぞ?』



 ――俺は取引を了承した。

次話は明日のこの時間に公開の予定です。

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