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Cafe Shelly

Cafe Shelly あなたの後ろに…

作者: 日向ひなた

「でね、これは本当にあった話なんだよ。その廃業した病院跡に夜中忍び込んでね。ビデオカメラも回してたんだけど、それが突然映らなくなって。ガタンと物音がしたと思ったら、一緒に行った一人が突然叫び声とともに突っ走っていったんだ。怖くなって一緒になって逃げ出そうとしたら、何かに足をつかまれて。そして背中をトントンと叩かれたんで、ふっと振り向いたら、そこには…」

 隣の席では若者四人が怪談話をしている。結構大きな声なので、離れて一人で座っているボクにもそれが聞こえてくる。にしても、怪談話って必ず本当の話といいつつ、どこでもあるような話をしてくれるなぁ。残念ながらボクにはそんな経験もないし、知り合いにそんな経験をしたというヤツもいない。いいところ、この季節の心霊特集とかいうテレビ番組で見る程度だ。

 ボクはアイスコーヒーを一気に飲み干し、再び手にした本を読み出した。

「康生くん、今日はのんびりだね」

 この店のマスターがそう声をかけてくれた。

「えぇ、今日はアルバイトもないし、大学に行ってもこの暑さじゃ誰もいないだろうし。ここでのんびり本を読ませて頂きますよ」

 そう言ってボクは手にした心理学の本をマスターに見せた。

 ここはボクがお気に入りにしている喫茶店、カフェ・シェリー。十人も入れば満員になるというとても小さな喫茶店だ。とはいっても、店内はそれなりの余裕がありくつろぎながら本を読むにはもってこいの場所。さらにここのマスターと店員のマイさんとのおしゃべりがとても楽しい。マスターもマイさんもカウンセラーの資格を持っているらしく、ボクが専攻している心理学の知識には結構詳しい。たまに神様の話なんかも出てくるが、これも心理学に通じるものがあるのでとても興味を持って話を聴くことができる。

 しかし、幽霊となると話は別だ。霊の存在を信じていないわけではないが、人を怖がらせるようなものには興味はない。どうせなら人を幸せにするような話がしたいものだ。

「でね、もう一つこういう話があるんだ。これはオレのいとこが体験した話なんだけど」

 こういった怪談話ってのは、なぜか自分の体験じゃなくて身近な人から聞いた話である場合が多い。これは本当の話もあるだろうが、むしろ人づてに聞いた話しを身内の話に置き換えることで自慢のようにして話したいという意識が働く場合が多いとボクは思っている。こうやってつい心理分析をしてしまうのがボクのクセだ。

「うちのじいちゃんが死ぬ前の話らしいんだけど。いとこはそのころじいちゃんと暮らしてたんだよ。そのときじいちゃんは病気で寝たきりだったんだけど。夜中、トイレに起きたときに風呂場で物音がしたんだって」

 ほう、どうやら今回は本当の話のようだ。目は本を読むフリをして、ボクは後ろから聞こえてくる怪談話に耳を傾けた。

「こんな夜中になんだろうと思って、風呂場を覗いたんだよ。そしたらそこには、寝たきりで起きることができないはずのじいちゃんの姿があったんだって。このときいとこは『あぁ、じいちゃんが風呂に入っているのか』と思ってすぐに寝たんだけど。翌朝起きてよく考えたら、じいちゃんは今完全に寝たきりで自力じゃ動けないはずなんだよ」

「おいおい、そりゃおまえのいとこが寝ぼけてただけじゃないのか?」

「いや、その日以降夜中に何度も風呂場から音がするようになったんだ。洗面器がぶつかる音とか、水を流す音とか。いとこはそんなことがあってから怖くて風呂場を確認することはなかったんだけど」

「誰かが夜中に風呂を使ってたんじゃないのかよ」

「夜中のニ時とか三時に毎晩だぜ。しかも、じいちゃんが死んでからそれはぴたっと無くなったんだ」

 ほう、今回の話は下手な怪談話よりも信憑性が高いな。どこかで怖がらせるようなものじゃなく、じわりじわりと効いてくる。おそらく真実なだけにそう思えるのだろう。そういやうちのじいちゃんも病院で寝たきりなんだよな。正直、今年の夏を越せるかどうかといったところだろう。

 ボクが高校生の頃までは一緒に住んでいた。大学に入って離れて暮らすことになったので、今は年に数回しか顔を合わせない。ボクが高校を卒業するときまでは元気に魚釣りに毎日出かけていたのだが。よく一緒に行ったものだ。高校を卒業して三年。その間にじいちゃんは一度肺炎をわずらった。その後、急に体が衰弱して入退院を繰り返している。しばらく帰ってないから、今度のバイトの連休には帰ってみるか。そう思って手帳を開いた。

「う~ん、お盆の間は時給がアップするからバイト入ってんだよな。そうなると…二十日過ぎてからの三日間になるな」

 ボクは貧乏学生。仕送りはもらっているが、決して遊ぶ金欲しさでバイトをしているわけではない。仕送りはそのまま家賃に消えていく。だからバイトをしないと生活ができないのだ。

「じいちゃん、オレのことわかるかなぁ」

 ふとそんなことを思った。そうして気が付けば午後七時。カフェ・シェリーで過ごす時間も終わりを迎えた。

「マスター、今日は長居してしまってすいません」

「いえいえ、こっちこそ誰かいてくれた方がありがたいよ。またゆっくりおいでね」

「はい、ありがとうございます」

 そうして席を立とうとしたときであった。ボクの携帯電話がポケットの中で震えた。

「はい、あ、母さんか。どうしたの。え、じいちゃんが!?」

 その電話は、じいちゃんの危篤を知らせるものであった。どうやら今夜が山らしい。急に心臓がドキドキしてきた。

「康生くん、どうしたんだ?」

「あ、え、えぇ。どうやらウチのじいちゃんがやばいらしいんです。えっと、どうしようかな…」

 ボクは気が動転していた。なにをどうすればいいのか、頭の中がゴチャゴチャになっていた。

「康生くんは確か佐賀だったよね。マイ、すぐにパソコンで佐賀に向かえる交通を調べてくれ」

 はい、という声と共に、この店のウェイトレスであるマイさんがカウンター奥にあるパソコンに向かってくれた。

「康生くん、危篤となると最悪のことを考えなきゃいけない。持っていくものとしては何がいるかな?」

 マスターのその問いかけで、頭が少し整理でき始めた。それからマスターとマイさんのおかげで、佐賀へ帰る段取りもできた。

「じゃぁ今から佐賀に戻ります。マスター、マイさん、ありがとうございます」

「お礼はいいよ。おじいさん、間に合うといいね」

 そうしてボクは足早にカフェ・シェリーを後にした。

「ちょっと急がないと、予定通りの移動ができないな」

 ボクは時計をちらりとみて、駆け足でアパートへ戻った。人気のない路地へさしかかったとき、ボクは前の方から歩いてくる老人が目に入った。普通なら何も気にせず通り過ぎるところ。だがその姿を見たときにボクはパタリと足が止まった。

「じ、じいちゃん…」

 ちょっと遠くにいるじいちゃん。にこりとボクに微笑みかけてくれている。その顔を見てボクはとても安心感を覚えた。なんだ、まだ元気じゃないか。じいちゃんに駆け寄ろうとしたとき、じいちゃんは横の通りに消えていった。

「あ、ちょっと待って」

 ボクは慌ててじいちゃんに駆け寄る。だがじいちゃんがいたところに行ってみたものの、そこには誰の姿もなかった。

「なんだ、どこに行ったんだ」

 そしてそのときにまた携帯電話が鳴った。

「康生…今、じいちゃんが…」

 それは泣きながらじいちゃんの死を伝える母の声であった。

「じいちゃんが…」

 暗い夜道でボクは呆然と立ちつくした。そして今気づいた。さっき見たじいちゃんの姿。あれはひょっとしたらボクに最期のあいさつをしにきたのではないだろうか。このとき、ボクの頭の中ではじいちゃんと暮らした日々が走馬燈のように思い出された。そして気が付くと、ボクの頬には一筋の涙が。そしてまた、さっき見たじいちゃんの姿がありありと思い出された。じいちゃん、すごく笑ってたよな。いつも魚釣りの時に見せていたあの笑い顔だったよな。もうあの笑顔には会えないのか。

 これは後から思ったことだけど、あのじいちゃんの姿っていわゆる幽霊ってやつなんだろう。けれど怖さなんてまったくなかった。むしろ温かみさえ感じることができた。結局この日は佐賀に帰るのを延期し、葬式に出るための準備をした。

「あ、マスターに一言いっておかなきゃ」

 ボクは思い出したようにカフェ・シェリーに電話した。確か今日は閉店後にマイさんのセラピーをやっているはずだからまだ店にいるはずだ。マスターにはじいちゃんが死んだことと、帰りにじいちゃんの姿を見たことを素直に話した。

「そうか、康生くんのおじいさん、最期のお別れを言いに来たんだね」

「はい、ボクもそう思います。じいちゃん、最期にボクに会いに来てくれたんだって。あ、佐賀に帰るのは明日にします。もうあわてなくてもいいですから。いろいろとありがとうございました」

 ふぅ、明日は佐賀か。そう思いながらボクは帰省の準備を始めた。それにしても、あんな不思議なことって実際にあるんだ。けれど怖いなんて思えない。むしろボクには安心感すら感じられる。今日はじいちゃんのことを考えながら床につこう。そうしてボクはふとんへと向かった。だがこの日からボクに不思議なことが起こり始めた。

 翌朝、ぐっすり眠っていたボクの頭をポカリと誰かが叩く。

「痛っ!」

 目を覚ますと誰もいない。当たり前だ、ボクは一人暮らしなのだから。

「なんだよ…えっ、うそっ!」

 寝ぼけ眼で時計を見ると時間は七時を過ぎていた。めざましを六時半にセットしたはずなのに寝過ごしてしまったのだ。この日は七時半には家を出て八時の電車で佐賀に向かう予定にしていた。

「やばいやばい、急いで準備しなきゃ」

 ボクは飛び起きて焦って準備。幸い昨日の夜すべて準備を終えていたので、あとは着替えるだけではあったが。それにしても、頭をポカリと叩かれたのは気のせいだろうか? さらに不思議なことは続いた。

 家で朝食を取り損ねたので、途中のコンビニでおにぎりでも買おうかと思って寄ってみた。だが同じ考えの人が多いのだろうか。ボクの好物のおにぎりが、残念ながら直前で別の人に取られてしまった。さらに間の悪いことに残っているのはボクが苦手とする具か、ちょっと割高の具ばかりだ。

「仕方ない、こっちを買うか」

 そう思った瞬間、さきほど先を越してボクの好物のおにぎりを買った人がそれを戻してきたのだ。「ラッキー」とは思ったものの、ちょっと不思議な気分。

 佐賀に向かう電車の中でも不思議なことが。帰省シーズンで混んでいるのはわかっていたが、貧乏学生なので指定席などはとれない。だから席がないのを覚悟で特急電車に乗り込んだが、案の定満席。

「仕方ないなぁ」

 あきらめかけた瞬間、ボクが立っていたすぐ横のおじさんがあわてて飛び起きて電車を降りていった。どうやらあやうく寝過ごすところだったようだ。これもラッキーではあったが、すごい偶然だ。なんだかボクのピンチを誰かが救ってくれているような気がした。ピンチ、といっても大したピンチではないけどね。けれど、佐賀に着いたときにはこれ以上ない大ピンチを迎えた。

「おい、にいちゃん、ぶつかっといて知らんぷりはねぇだろう」

 帰省客でごった返す駅のホームで突然そんな因縁をつけられた。いいがかりをつけてきたのは、アロハシャツを着てサングラスをつけたボクより年上と見られる若い男性。どこからどうみても「いかにも」という格好をしている。むこうはぶつかってきた、と言っているが、実のところ正面からぶつかってきたのはむこうである。まぁボクがよそ見をしていたというのは否めないが。

「あ、すいません」

 そう言ってその場を立ち去ろうとしたが、肩をつかまれてしまった。

「おい、おめぇふざけてんのか?」

 ふざけているのはそっちだろうと言いたくなったが、この場は穏便に済ましたほうがよさそうだ。

「いえ、本当にごめんなさい。でも先を急いでいるもので」

「そんなの関係ねぇ!」

 その言葉に、あの海パン一丁の芸人を思い出して吹き出しそうになってしまった。

「おい、何がおかしいんだよ、あぁっ!」

 やばいやばい、さらに相手を怒らせる事になってしまった。さぁて、どうすれば…助けを求めようにも、周りは関わりたくないのか遠巻きにボクたちを避けて通っている。さぁて、このピンチをどうやって切り抜ければ…と、その時であった。

「こらこらこら、君たち何をやっているんだね」

 現れたのは駅の職員。さらには横に制服を着た警察官もいる。

「いや、何もやってないっすよ」

 さっきのチンピラふうの男は態度を急変させ、ペコペコしながらその場を立ち去ろうとした。

「ちょっと待て。お前、どこかで見たことあるな…」

 警官は男が立ち去ろうとしたところをつかまえて職務質問。ボクはその様子を呆然と見ているしかなかった。その後、事情を聞くためにボクとその男は駅の事務所へ。そのときにわかったことなのだが、そのチンピラふうの男はこうやって駅で因縁をつけては小銭を巻き上げるといったことを繰り返していたらしい。警察もその情報があったため、駅に張り付いていたそうだ。

「いやぁ、君運がいいね。おじいさんの通報がなかったら危なかったところだよ」

 これは一緒にいた駅員の言葉。

「え、おじいさんの通報?」

「あぁ、そうだよ。おじいさんが駅の事務所にやってきて、ホームで青年がからまれているから助けてやってくれって言いにきたんだよ」

「で、そのおじいさんは?」

「あ、そういえばどこに行ったんだろうな。きっと通報してからすぐに帰ってしまったのだと思うけど」

 おじいさんって、まさか…ね。今日は大なり小なり、いろいろなピンチを救われているのは確かだ。全くの偶然なのか、それとも…ともかく実家へと急ぐことにした。

 実家に着くと、親戚が集まって通夜の準備。あわただしい中、ボクは棺に入ったじいちゃんと対面をさせてもらった。

「康生、じいちゃん安らかな顔しちょるじゃろ」

 母が言うように、じいちゃんとても安らかな顔で、まるで眠っているだけのような感じがした。けれどじいちゃんの魂はここにはない。

 手を合わせてみたものの、なんだか実感が湧かない。いや、じいちゃんが死んだという実感はある。けれど、じいちゃんは別のところにいるんだという感覚のせいか、亡きがらに手を合わせても意味がないような気がするのだ。

「えっ」

 ボクが手を合わせていたら後ろからポンポンと肩を叩かれた。振り向いてみたが、ちょっと離れたところに母がいるだけ。

「母さん、なに?」

「え、なにって?」

「だって、今ボクの肩を叩いたろ」

「そんなことはしちょらせん」

 おかしい、確かに叩かれた感触はあったのに。それに実はさっきから誰かにずっと見られているような感覚がある。その感覚は通夜、そして葬儀の時までずっと続いていた。


「ということなんですよ。これってやっぱりじいちゃんがボクのことをずっと見ているんでしょうかね?」

 葬式が終わって休むヒマもなく自宅へ戻ってきたボク。アルバイトは無理を言ってシフトを変更してもらったため、もともと休みだったところに入ることになったからだ。今はバイトに行く前にカフェ・シェリーに寄ってマスターとおしゃべりをしているところ。佐賀に帰る件でいろいろとお世話になったので、おみやげを渡すついでに寄ってみた。で、今身の回りに起きた不思議なことを話していた。

「そうだねぇ。私は残念ながら霊能者でも何でもないからなんとも言えないけれど。でもそうやって考えた方が康生くんも気が楽だろう」

 マスターはそう言ってくれた。けれどマイさんはちょっと違った見解を持っているようだ。

「う~ん、私も霊能者じゃないからよくわからないけれど。でも単純におじいさんが康生さんのことを見ているだけじゃないような気がするんですよね。なんだろうなぁ、なんて説明したらいいのかわからないんだけど…」

 ちょっとあやふやな答えだが、マイさんのこういったところのカンはするどい。

「それって何なんでしょうか?じいちゃんは関係ないのかな?」

「そうねぇ…あ、そうだ。康生さん、今夜は時間ありますか?」

「あ、残念ながらバイトなんですよ。じいちゃんの葬式でバイトのシフトずらしてもらったから。今日から三日間は連続なんです」

「そっか、残念。じゃぁ三日後の夜なら大丈夫?」

「えぇ、今のところ特には予定はないですけど」

「じゃぁ、私のカラーセラピー受けてみない? ひょっとしたらカラーボトルが何か教えてくれるかも」

「え、でも…」

 マイさんはプロのカラーセラピストとして、喫茶店が終わった後に一日一人限定で診断をしているのは知っている。でもお金がかかるんだよな。貧乏学生にはちょっと…そこを躊躇していたら、マスターが助け船を出してくれた。

「今回はマイから言い出したことだから、お金はいいよ。それに今のマイは、どちらかというと康生くんに起きていることの真実を知りたいという興味の方が高まっているみたいだし。マイ、いいだろう?」

「うん、そのつもりだった。私としても一つのチャレンジなんだ。カラーでそういったことがわかるかどうかのね」

 それを聞いて安心した。早速手帳に三日後の夜の予定を書き込んだ。ボクは期待に胸をはずませて、カフェ・シェリーを後にしバイトへ向かった。

 それからマイさんのカラーセラピーを受けるまで。この数日間でも不思議なことはいろいろと起こった。乗り遅れそうになったバスがうまく止まってくれたり。携帯を置き忘れそうになったときに、なぜか着信があってそれを防いでくれたり。大学のレポートを書くために前から図書館で借りたいと思っていたけれど、なかなか返却されなかった本が、友達経由で手に入ったり。

 一番笑えるのは、外出先で突然もよおしてしまいトイレに駆け込んだけれど紙がなかったとき。あれは大ピンチだった。

「う~ん、運のつきもここまでか」

と、トイレに座り込んで誰かが聞いていたら凍り付くようなギャグを言ってみたものの、どうしようもない状況に陥った。だがここで奇跡が起こった。トイレに入ってきた二人組。その声には聞き覚えがあった。

「でさぁ、康生のやつが…」

 ボクのことを話題にしている。間違いない、橋本と倉掛だ。

「おぉい、橋本、倉掛!」

 ボクは恥を捨ててトイレの中から声をかけた。

「わっ、今の声って康生か?」

「そうだ、頼む、紙持ってないか?」

「なんだ、おまえトイレの紙がねぇのかよ。ちょっと待ってろ」

 しばらく待つと、トイレットペーパーが上から放り投げられた。

「いやぁ、助かったよ。にしても、こんなところで会うとは偶然だな」

 ボクは橋本と倉掛に感謝の言葉を伝えながらトイレから出てきた。

「まぁ偶然といえば偶然なんだろうけどよ。でもあのじいさんにはまいったよなぁ」

「え、じいさんって?」

 橋本の言葉にボクはドキッとした。

「いやな、別にオレらここに用事があったわけじゃねぇんだ。入り口でじいさんが声かけてきてね。何だろうと思って行ってみたらここのトイレの前で姿消しやがってよ。しゃぁねぇから倉掛と連れションして出ていこうかと思ったらお前がいたってわけだ」

 まさか…ね。ここまでくると、じいちゃんがボクを救ってくれたとしか思えない。橋本と倉掛には笑いながらなんなんだろうね、とごまかしはしたが。

 そしてマイさんとの約束の日が訪れた。ボクは閉店間際のカフェ・シェリーへと足を運んだ。

「いらっしゃい。康生くん、あと十五分くらい待っててもらえるかな」

 すでにお客さんの姿はない。マイさんとマスターは簡単な掃除をして、閉店の準備。その間、この数日間に起こったことをもう一度思い出してみた。マイさんには申し訳ないけれど、どう考えてもじいちゃんがボクを見守っている以外に考えられない。そこには何の意味があるのだろうか? そんなことをいろいろと考えていたら、マイさん登場。

「お待たせしました。さ、こちらにどうぞ」

 マイさんは先ほどまでの活発的なジーンズ姿から一転、白いスカート姿へと変わっていた。

「へぇ、その格好も似合いますね」

「えへっ、ありがとう。カラーセラピーをやるときには相手に色の影響を与えないように、こうやって白い服に着替えるのよ。じゃぁ今から始めるね」

 この言葉で、場は一瞬にしてマイさんの雰囲気に包まれた。いつものカフェ・シェリーとは違う空気だ。

「ここに並んでいる二色のボトルから、気になったものを四本選んでね。そしてカウンターの上に順番に並べてみて」

 カウンターの隅に並べられた百本以上の二色のボトル。似たようなものがいくつもあるが、その色合いは微妙に異なる。いつもはコーヒーを飲みながら何気に眺めていたのだが、こうやって選べと言われると迷ってしまう。気になる色を手に取りながら、どれを選ぼうか迷ってしまう。

「こっち…いや、こっちかな」

 こんな感じで四本を選んでみた。これで何かがわかるというのだから不思議だ。

「マイさん、選び終わりました」

「じゃぁ今からリーディングするね」

 マイさんはボクが選んだボトルをしばしじっと眺める。

「康生さん、どうやらおじいさんからのメッセージがわかったような気がします」

「え、どういうことなんですか?」

「康生さんが選んだボトル、一貫して一つのテーマが見えました。どうやら自分自身に気づきなさい、というものみたいなんですよ。一つひとつ見ていきますね」

 自分自身の能力に気づけ。まだ自分にはピンとこない。それといままでピンチを救ってくれたじいちゃんの姿とどう関係するのだろうか?

「まずは一本目のボトル。これは魂のボトルといわれて、自分の使命とか可能性を示しているの。康生さんが選んだのは信頼を試すボトル。自分を愛して自分自身の潜在能力を発揮せよ、というメッセージが込められているわ」

「ってことは、今ボクに課せられているのはもっと自分の潜在能力を活かせ、ということなのですか?」

「それ以前に、自分の能力をまだ信じ切っていないということはない?」

 マイさんにそう言われて、ボクは頭の中を駆けめぐらせた。

「そうですね、今思ったのが心理学について深めることができるのだろうかという不安があるってことです」

 ボクは胸の中でつかえていたものを吐き出すように語り出した。

「ボクはカウンセラーになりたくてこの勉強を始めました。けれど本当にカウンセラーとしてやっていけるか、自信がないんです。先日も学んだことを実践しようと思ってバイト先の女の子と会話を試みたんですけど、思ったようにいかなくて」

「そうなんだ。それ、私もマスターも経験していることだよ。最初の頃はついテクニックに走ってしまって、相手との会話が逆にぎくしゃくしてしまうの。けれど、意識をして会話をしていくうちに自然と思ったようにできるものよ。それに康生さんはまだこの勉強始めたばかりでしょ。ここによく来るコーチの羽賀さんも意識をしはじめて自分のものにするまで一年以上かかったって言ってたわよ」

 その言葉を聞いて少し安心した。ボクのその表情を見たからなのだろうか、マイさんは二本目のボトルの解説に入った。

「二本目はチャレンジとギフトのボトル。チャレンジすることで開花する才能について示してくれるの。ここでも自分を知り、今の自分のまま生きなさいということを伝えてくれてるわ」

「でも、それとじいちゃんがピンチを救ってくれたこととどう関係しているんですか?」

「康生さんはどう思う?」

 質問をしたのに質問を返されてしまった。

「そうですね…今のままの自分で、か。もっと自分ができる人間だと気づかせてくれているのかな。どんなピンチでも必ず切り抜けることができるんだって。今はじいちゃんが手助けしてくれているけど、それも永遠に続くわけじゃない。今度は自分の力で切り抜けなければいけない。だからこそ、自分の力を信じろ。そういうことかな」

 ボクは頭でひらめいた言葉をつなげながら口にしていった。言いながらなるほどと納得している自分に驚いている。

「そうね、私も同じようなことを考えたの。おじいさんが手助けをしてくれているのはあくまでもきっかけに過ぎないはずだって。前に康生さんがおみやげを持ってきてくれたときに私の頭の中で引っ掛かっていたのはこれだって今わかったわ」

 だんだん今起きていることに対して納得できるようになってきた。

「じゃぁ三本目のボトルに移るね。ここは今の状態を教えてくれるところ。康生さんが選んだボトルから言えることは、考えすぎるところがあってそこから自分の心の状態を崩してしまいがちになるって出てる。何か思い当たることはある?」

 マイさんからそう言われて、瞬時にたくさんのことを思い出した。

「えぇ、その通りですね」

「たとえばどんなことがあったの?」

「はい、さっきも話した通り、こちらがカウンセリング的な会話をしても相手とうまくかみ合わないときがあって。そのせいで自信をなくして、本当にこれでいいんだろうかと考えちゃって。まさに今マイさんが言われた通りの状態ですよ」

 ボクはちょっと肩を落として、下を向いてそう伝えた。ここでひらめいた。ひょっとしてじいちゃんはそんなボクに自信をつけさせようと思って現れたんじゃないかって。どんなピンチも乗り越えることはできる。その体験を積み重ねることで、自分の力を信じるように仕向けているんじゃないか。このことをマイさんに伝えてみた。

「なるほど、そう考えるのが自然な感じがしたわ。康生さんが今気づいたことはとても重要なことじゃないかしら」

 とそのときである。窓際からカタリという音が聞こえた。ふと見ると、窓がわずかに開いて風が吹き込んだようだ。

「あれ、おかしいな。クーラー入れてるから窓は閉め切ってたはずなのに」

 マイさんはそう言って窓を閉めに行った。それが真実なら、なぜ窓は開いていたのだろう? まさか、じいちゃんが窓を開けた?

「じゃぁ気を取り直して。四本目のボトルに移りますね」

 ボクは窓のことが気になりながらも、マイさんの言葉に耳を傾けた。

「四本目は未来のボトル。これからの可能性を示してくれるの。康生さんが選んだボトルは知性と霊性の絆。あるがままを自然なまま受け入れることで、康生さんのまわりにはいろんな人が集まってくるわ。そのためには、自分に素直になってあるがままの自分でいるといいみたい。肩の力を抜いて、リラックスして、飾らない自分で人と接してみて」

「ということは、今のままの自分でいいってことですか?」

「そうなるかな」

 このとき、また窓際でカタリと音がした。今度は窓は開いていない。だから風が吹き込んだということもない。オカルトの世界でよく聞くラップ現象というやつじゃないのか?

「ちょっと待っててね」

 マイさんはそう言うと、音のした方へと足を運んだ。そしてそのあたりをジッと見つめていたかと思うと、突然両手をあわせて拝みだした。

「うん、今のリーディングで間違いないみたい。おじいさん、納得してくれたらしいわ。さっきはその合図だったみたい」

「え、マイさんってそういうのが見える能力あるんですか?」

「あは、そう直感で思っただけ。霊が見えるとか声が聞こえるなんて力は持ってないわ」

「直感って…」

 ボクはちょっとだけとまどった。霊が見える人の言葉ならわからないでもない。けれどそんな能力がないときっぱり言い切ったマイさんなのに、そう思ったからそう言ったなんて。根拠もないのにこんなにも自信たっぷりの言葉が出てくるとは。

 このとき、マイさんの後ろにじいちゃんが見えた気がした。にこやかに笑いながらうなずいているじいちゃんの姿が。この瞬間、ボクに足りないものがわかった気がした。

「マイさん、今なんとなくわかった気がします」

「え、何が?」

「ボク、頭の中でこうじゃないかなと思っていても、自信がなくてそれを言葉にできなかったんです。特にカウンセリングをやったとき。先日の失敗も思えばそれが発端だった気がします。相手の言葉から、直感的に悩みというよりも前に進むための自信が欲しかっただけだと感じたんです。でも口からは悩んでいるとしか言わなかった。だからこちらも必死にアドバイスを探したのに、そんな言葉が欲しくて相談したんじゃないって言われて」

「そんな事があったんだ。だからおじいさんは霊的な直感を信じて前に進みなさいって教えに来たんだね」

「そんな気がします。いえ、直感的にはそう確信しています」

 そのときであった。窓を閉め切っているにもかかわらず、レースのカーテンがふわぁっとなびいた。ボクとマイさん、そしてカウンターの奥で明日の仕込みをやっていたマスターも動きが止まった。誰かが窓際からこちらに来ている。そんな感じがしたのだ。おそらくマイさんもマスターもそんな感じがしているのだろう。ボクと同じ方向をじっと見ていた。そしてその気配は徐々にボクとマイさんが座っているカウンターの席へ。怖いという気はまったくしなかった。むしろなんだか温かくて、懐かしい感じがする。

 その気配はボクの直前で立ち止まる。ボクは目の前に見えない誰かがいるのを感じた。じいちゃんだ。直感的にそう思った。そのとき、頭をなでられたような気がした。

 あぁ、これでいいんだ、これで。うん、じいちゃん、わかったよ。

「おじいさん、安心してくださいね。康生さん、おじいさんの思いが伝わったみたいですから」

 マイさんのその言葉で、なでられていた感覚がふっとなくなった。そして誰かが窓際へ立ち去るような感じがして、再びカーテンがふわりとなびいた。そのあと、さっきまで誰かがそこにいたという感覚が消えていた。後には普段と同じカフェ・シェリーが。

「今の、やっぱりおじいさんだったみたいね」

 マイさんがボソリとつぶやいた。マスターは窓の方をじっと眺めながら固まったまま。ボクは今の出来事を心の中で振り返っていた。頭をなでられた感覚、あれはじいちゃんが魚釣りの時によくやってくれたあのときのものとまったく同じだった。そしてそのときによく口にしていた言葉を今思い出した。

「康生、おまえは力のある子じゃからな。おもうたとおりにやればいいんじゃ」

 そうだった。当たり前のように聞かされていた言葉だったから、その意味すら考えずに心の中にしまっていた。しかし今、じいちゃんのその言葉の意味がわかってきた。

「マイさん、わかりましたよ。じいちゃんがなぜボクのところにきたのか。自信を失っていたボクを励まして、そして力をつけにきてくれたんだ。自分の中にある力を自分が信じること、これを思い出させるために来たのは間違いないです」

「康生くん、じゃぁこれからはどんな気持ちで生きていこうと思うかい」

 マスターのその問いかけに、ボクは少し考えた。そしてこんな答えを。

「はい、自分に力があるといってもまだまだ未熟者です。けれどそれに臆さず、今の自分を信じて行動してみようと思います」

「そうだね、何事も行動しないと始まらないからね。私たちはよく準備ができたらやろう、と考えてしまいがちだ。しかし完全な準備なんていつまで経ってもできるものじゃない。自信も同じだ。自分に自信がついたら始めよう、なんて言っても自信はつかないよ」

「じゃぁ、自信ってどうしたらつくんですか?」

「自信は経験を積むことでしかつけることはできない。やってみて、失敗して、どこを変えればうまくいくかを考えて。その繰り返しをやっていくことで、気づいたら自信がつくんだよ」

「だからじいちゃんは今の自分を信じて前に進め、と言いにきたんですね」

「きっとそうだと思うよ」

 マスターの言葉でボクは明日から何をすればいいのかがおぼろげながら見えてきた気がした。

「康生さん、四本目のボトルが教えてくれているように今の自分を信じて行動を起こせば、きっと周りにはいろんな人が集まってくるはず。一人、また一人ってね。楽しみにしてて」

「はい、ありがとうございます。そうやって言われると、なんだか自分の未来に大きな希望がもてますよ」

 こうしてマイさんのカラーセラピーが終了。ボクはマイさんとマスターにお礼を言ってカフェ・シェリーを後にした。

 マイさんのカラーセラピーを受けた翌日、またまた不思議なことが起きた。といっても、前みたいにじいちゃんが出てきてボクのピンチを救ってくれた、というものではない。

「康生、ちょっと聞いて欲しいことがあるんだけどよ」

 そう話しかけてきたのは先日トイレでボクのピンチを救ってくれた橋本である。どうやら恋愛の悩みらしい。しかしどうしてボクに相談をしてきたのだろう。不思議に思いながらも、橋本の話をしっかりと聴き、アドバイスではなく背中を押すような言葉を投げかけてみた。

「サンキュー。いやぁ、なんだか気持ちが軽くなったよ」

 そう言って走り去っていく橋本。その背中を見てボクこそ心が軽くなった。さらに同じ日に別の女性からも相談を受けることに。なんと、橋本が相談してきた相手の女の子、加奈子ちゃんである。これまた恋愛の相談。しかも橋本に対してのことだった。一瞬、橋本もそんな気持ちなんだよとアドバイスしたくなったが、ここはやはり守秘義務を保つことに。それにこういった問題は自分達で解決しないと意味がないし。ここでも加奈子ちゃんの背中を押す感じで送り出してみた。翌日、二人そろってボクのところに現れたのにはビックリしたが。

 それ以降、なぜか立て続けにボクのところに恋愛相談を持ちかける人が増えてきた。最初は顔見知りの同級生だけだったのだが、そこから口コミで学内も、さらには学外の人までボクを尋ねてくるようになったのだ。

 そのときボクがやっていることはただ一つ。とにかく相手の話を聴き、その人の気持ちをくみ取り、そして頭にひらめいた言葉を投げかけるだけ。これといったアドバイスをしているわけではない。ただこう感じたよ、とかこう聞こえたよ、と投げかけているだけなんだけど。それでも感謝の言葉をかけられ、さらにはうまくいったと報告を受ける。

 そんなこんなでマイさんのカラーセラピーを受けてからあっという間に一ヶ月が経ってしまった。

「こんちはー」

「おっ、恋愛の救世主康生くんがやってきたな」

「マスター、茶化さないで下さいよ」

「あはは、でも康生くんの恋愛カウンセリング、とても評判高いよ。ここのお客さんからもときどきうわさ話を聞くからね」

「まぁ悪い事じゃないとは思っていますけど。でも一ヶ月前はこんなになるなんて思いもしなかったですよ。しかもマイさんのセラピーを受けてからの変化ですからね。むしろマイさんの力にボクはびっくりですよ」

「康生さん、それは違うわよ。私はおじいさんの言葉をボトルに乗せて伝えただけ。本当に力を持っているのは康生さん自身なんだから」

「そうですかぁ」

 ボクはちょっと照れ笑い。

「じいちゃんってこうなることがわかってたから、ボクのところに現れたんでしょうかね?」

「多分そうじゃないかな。私は霊の世界なんていうのは詳しくないけれど。けれど否定はしていないよ。霊魂って人の思いの事だと思うんだよ。思いというのは見えないけれど、相手に通じるものだよね。死んでしまったから思いが通じないというのもおかしな話じゃないかな。どうにかしようとして、思いを相手に知らせたい。それが今回のような現象で出てくるんだと思うよ」

 なるほど、マスターの言葉にはいつも納得させられる。

「で、今日の注文は?」

「もちろん、シェリー・ブレンドで」

 そうか、そうだよな。今、相談をしてくるみんなにも同じようなことを言ってたな。あなたの思いは必ず通じるって。それをどう判断するかは相手次第。けれど、好意を持って接すれば相手はそんなに悪い気はしないはず。まずは相手のことを思いやって、そして行動してみようって。

「はい、シェリー・ブレンドおまたせしました」

「マイさん、ありがとう。ではいただきます」

 ボクは期待を持ちながらシェリー・ブレンドを口に運んだ。

「あ~、なんだろう、すごくホッとする味だ。安心感があるというか、自分に戻れたって感じの味。うん、まさにここが自分の居場所って気がする」

 頭に浮かんだイメージをそのまま言葉にしてみた。このとき、不思議な光景を目にした。窓を閉め切っているにもかかわらず、カーテンがふわり。マイさんのカラーセラピーを受けていたときに見たあの光景と同じだった。

「えっ、じいちゃん?」

 とっさにそう思った。ボクのその言葉に、マスターもマイさんも一瞬手を止めて、ボクが眺めているカーテンの方向を凝視した。だが起きたのはそれだけ。あのときのように何かが接近して来るという気配は感じられなかった。

「康生くん、今おじいさんが来たのかい?」

「いや、よくわからないんだけど。あのカーテンがふわりとなびいたから、とっさにそう思ったんです」

「おじいさん、今の康生さんの姿を見て安心したみたい。それでちゃんと行くべきところに行ったようよ。私にはそう感じた」

 マイさんの言葉通りだろう。じいちゃんはこの一ヶ月間、ずっとボクの後ろで見ていてくれてたんだ。ボクは天を仰いでじいちゃんにこう誓った。

「じいちゃん、ボクは自分のやることに自信を持っていくよ。そしてもっと多くの人が幸せになれるようにがんばってみる。じいちゃん、ありがとう」

 そしてシェリー・ブレンドをもう一回口に含んだ。すると、今度は体の奥から力を感じた。なんだろう、この湧き出るものは。そうか、これが自分の中にあるものなんだ。今まではじいちゃんが力を貸してくれていたけれど、今日からはボク自身の力で進んでいけばいい。けれど、ボクはまだまだ未熟者。マスターやマイさん、その他みんなの力を借りて、もっともっと上に上に向かわないと。

「マスター、マイさん、この先もボクに力を貸して下さい。よろしくお願いします」

「あぁ、もちろんだよ」

「私もいっぱい力を貸すからね」

「ありがとうございます。ボク、絶対にいいカウンセラーとしてみんなに貢献していきます!」

 これから三年後、まさかボクが恋愛カウンセラーとしてみんなに頼られるということになるとは。夢にも思わなかった。じいちゃん、ボクにとても大事なことを教えてくれて本当にありがとう。ボクは天に合掌をし、そしてまた新たなものへとチャレンジを続けることを心に誓った。


<あなたの後ろに… 完>

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