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6. え、夢オチじゃなかったの

 目を覚ますと、そこは知らないベッドの上だった。

 ……あ、違うわ。あのベッドだ。王子の夢を見てた時のベッド。

 また夢を見ているのかしら?

 ……なんだったっけ? あの、○SPでやった、○ルソナ1だ。蝶になった夢を見たってやつ。

 あれか。ある日、王子になった夢を見た、ってことか?

 私が王子の夢を見ているのか、王子が香澄の夢を見ているのか。あいつが俺で、俺があいつ、か?

 ……えーっ?

 つーか、よく考えたら、前回食べたスープ、美味しかったな。昨日食べた○ンジェリーナのモンブランも美味しかった。

 夢であんな明確に味する?

 ……ケーキの家を食べる夢を見た時、美味しくて幸せだったな。夢、味あるな。

 とすると、やっぱり夢ってことか? あとは、ほっぺたつねってみる? でも、後残ると嫌だしなー。


「あ、王子の顔出し、別にいいか」


 むにっとほっぺをつまんで引っ張る。

 ……感触はあるけど、別に痛いって程でもないなー? 捻ったりするのかな?

 ……ひねってみたけど、別に特に。ってか、これ、痛いもんなの? 感触はあるんだけどなー?

 もしかして、爪でやるのかな? それは痛そうで嫌なんだけど。


「あ、なんか鈍く痛くなってきた。一応痛いからこれでいいかな?」


 いや、痛いからなんなんだろう? 味あるぐらいだし、これぐらいの痛みは今までの人生経験で補完出来る気がする。

 なかなか難しいな、夢の検証って。

 ……あっ、○ルソナ1つながりで、他人の夢って可能性もあるじゃないですか。

 え、待てよ、それだと私には現実になるの? それとも夢だから夢なの?


「えっ、ちょっと待って、混乱してきた。電気ナマズはボートレースの夢を見るのか? いや、そもそも電気ナマズって何? どっかの大学がレモン味のウナギ味の鯖味のナマズ味を作ったってのと関係あるんだっけ? いや、レモンかければいいじゃない。から揚げもかかっててもかかってなくても美味しいじゃない、だってからあげだもの」


 美味しいものは何したって美味しい。幸せは美味しいなのに美味しいが幸せにならないなんておかしいと思う。あれ、美味しいのは幸せよね、美味しいが戦いを産むのがおかしいのか、そういう話か?


「王子、王子?」


 そうよ、たけのこときのこも仲良く出来ると思うの、一度お互いのクッキーとクラッカーを交換してみるのはどうだろう?


「王子、大丈夫ですか? 王子?!」

「え、あれ?」


 いつの間にか、エルリスさんがベッドサイドにいた。今日は知らないメイドさんもいるな?


「ノックをしたのですが返事がありませんでしたので、申し訳ありませんが勝手に入らせていただきました。何か苦しそうでしたが、どこかお体の具合でも悪いのでしょうか?」

「あ、大丈夫です、大丈夫です。おはようございます」


 慌てて挨拶をする。とりあえず、考えるのは後にしよう。

 ふと見ると、エルリスさんが怪訝そうな顔をしていた。


「……おはようございます、王子。失礼ですが、私の名前はわかりますか?」

「え、エルリスさんですよね? あ、おはようございます、エルリスさん」

「……こちらの者はわかりますか?」

「え、初対面ですよね? ……あ、違う違う、えーっと、マロンさん?」


 エルリスさんの体がふらっと揺れた。え、倒れる?!

 と思ったらぐっと耐えた。


「あの、大丈夫ですか? 顔が青くなっていますが?」

「いえ、ご心配をおかけして申し訳ありません。ウィンデル、クレスト先生を呼んできてもらえますか?」

「はい、わかりました」


 もう一人のメイドさんが部屋を出て行った。えーっと……


「……王子、先生が来るまでにお体を拭いておきましょう」

「え、あ、はい」


 ほー、王子レベルになると毎朝メイドさんに体を拭いてもらうのか。

 あ、でも今怪我で療養中か。入院中は看護師さんに体拭いてもらうし、そんなもんか。

 お風呂は入れないだろうしな。お風呂は背中とか流してもらうのかな?

 そんなことを考えながらシャツを脱いでいると、エルリスさんが少し困惑したような顔をしていた。


「……あれ? あ、すいません、脱がせて貰った方がよかったのでしょうか?」

「……いえ、すいません。お手伝いいたします」


 ?? よくわからないけど、体を拭いてもらってたら先生が来た。



  *****



 今、私は部屋で一人、ベッドで横になっています。

 いやー、大変だった。

 メープルちゃん、自分のせいだとか言って泣いちゃうし。

 ゼファー、たまに素のしゃべりになるから、いっそ常に素の口調にしとけば? って提案したら、今する話題ですか、と嫌そうな顔で返されるし。

 リカルドくんはおどおどしてた。

 そういえば、シンシアたんはまだついていないらしい。結構遠いんだなここ。まったく記憶にないんだけどな、こんな砦。

 王子シナリオで来るんだろうか?

 あー、ゼファーかリカルドくんのシナリオの可能性もあるか。ゼファーは仲間の時の表シナリオ、リカルドくんは仲間じゃない時の裏シナリオしか進めてないしなー。それもフルで見てるかどうかわからないし。

 シンシアたんとクラン様メインでやってたからなー。

 とりあえず、どうしようかな? これ、また明日になったら帰れるんだろうか?

 めんどくさいなー、いつまで続くんだろ? そもそも、なんで入れ替わってるんだ?


 コンコンコン。


 ノックの音が聞こえたので、どうぞ、と返した。

 エルリスさんがワゴンを押しながら部屋に入ってきた。


「……王子、これを覚えていますか?」


 ドアを閉め、ベッドサイドまで来たエルリスさんが囁くような声でそう告げながら、手紙を見せてきた。左手の人差し指を縦にして唇に添えている。

 はて?

 とりあえず、こちらも小さな声で返すことにしよう。


「いえ、まったく?」

「そうですか。では、お渡しいたします。昨日、王子が私に預けて下さったものです。もしまた記憶喪失になったら、周りに気づかれぬよう、こっそりと渡して欲しい、と」


 そう言って、手紙とペーパーナイフを渡してくれた。

 そして、ベッドサイドの水差しの水を入れ替え、ドライフルーツとナッツの入ったお皿を置いて、一礼してからエルリスさんは出て行った。

 ふむ。

 蜜蝋がしてあるタイプだ、初めて見た。そういえば、こういうのってどうやってあけるんだろ?

 この蜜蝋をナイフで削るのかな?

 ……まぁいいや。手紙の隙間からペーパーナイフを差し込み、上の部分を切って開けた。

 出して読めればいいんですよ、読めれば。

 えーっと、なになにー?


『カスミ殿

 それとも、今回は別の方が私の中に入っているのだろうか?

 私もこの理由と原因がまったくわかっていない。

 なので申し訳ないが、カスミ殿が入っているとして話を進めさせていただく。

 これを読んでいるということは、また入れ替わりが起こってしまったのであろう。

 カスミ殿も気づいているだろうが、入れ替わりだ。

 砦から落ちて目を覚ました時、私はカスミ殿の中にいた。そして、カスミ殿は私の中にいたのだろう。

 カエデコとカスミの名前を私が口にしていたと聞き及んだので、そう推測した。


 繰り返しで申し訳ないが、この原因に今のところ心当たりが無い。

 もし、カスミ殿に心当たりがあるのならば教えていただきたい。

 ただ、この現象は呪術か召喚魔法の応用ではないかと考えている。とすれば、そちらの世界では難しいのではないかと推測する。

 何が原因か、そして誰が目論んだのかがわかっていないため、まだ表立って行動はしていない。エルリスにも話してはいない。

 申し訳ないが、カスミ殿も今しばらくは内密にしていただきたい。

 巻き込んで申し訳ないが、ご協力いただきたい。その代わり、私がカスミ殿の世界にいる間、カエデコの面倒はしっかりと受け持たせていただく。至らぬことも多いかと思うので、伝えたいことや知っておいた方が良いことなどがあれば残しておいて欲しい。

 手紙に残していただき、エルリスに渡しておいていただけないだろうか。

 エルリスは信用出来るが、私の中にカスミ殿が入っていることは内密にしていただけないだろうか。

 用件だけ伝えれば、対応してくれるだろう。

 また、もう一つお願いで申し訳ないが、出来れば私の振りをしていただけないだろうか?

 すまぬが、こちらで目を覚ました折に、普通に振舞ってしまった。皆には記憶が戻ったと思われている。

 また入れ替わることがあるかわからないが、しばらくは記憶が無い振りをしておくべきだったかと思う。大変申し訳ない。

 記憶が多少飛んでいる振りをすれば誤魔化せると思うが、口調を出来れば寄せていただきたい。

 別紙にこの砦にいる近しい者の情報と、私の口調について書き記しておいた。ご参考いただければと思う。


 次、入れ替わるのがいつになるか、本当に入れ替わるのかはわからない。出来ればこの手紙が必要ないことを願う。


 p.s.

 カエデコは可愛いな。

 カエデコに免じて、私が授乳せざるを得ないことをご容赦願いたい。』


 ……

 ほうほう、そうか。カエデコの可愛さがわかるか。良いやつだな、王子。

 つーか、昨日書いたのかな? 即日で必要になったね、すごいな、王子。

 んー、とりあえず読んでみるか。私は手紙の続きに目を通した。

 ……枚数、結構多いのね。

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