11. 王子めー、覚えてろよー
楓子が起きたので授乳中。
さっき寝たばかりなのに、今回は早いですねー。
さすがにこの状態で王子への手紙を書くのは無理だな。
うーん……
最初は自力でクリアしたいんだけど……
まぁいいか、非常事態だ。ゲーム無いし、なんか様子おかしいし、シンシアたんのページも読みますか!
えーっと、シンシアたん、シンシアたん、と。
……マジか。
女性主人公だとイージーなのに、男性主人公だと難易度トップなんだ。女性主人公しかしたことなかったから知らなかった。
しかし、難易度トップでも選択肢さえわかってれば関係ないよねー。つーか、難易度高いってどういうことだー?
えーっと。
……
……女性主人公だとプラス多いのに、男性主人公だとマイナス多いな。
ってか、必要条件とか必要選択肢多すぎない?
おいおい、これ別キャラとの共通イベントなの? 無茶言わないでよ、初見じゃ無理じゃん。
ってか、全選択肢正解が1個しかないんじゃないの、これ? 一個でもミスったら駄目なの?
あ、これ、パラメータ下がるじゃん。なのにこの選択肢が正解なの? これは鬼だわ。
うわ、出た、タイム切れ選択肢。これ勘弁して欲しいのよねー。って、女性主人公でタイム制限ある選択肢なんて見た記憶ないんだけど?
……違うわ。これ、タイム切れでも駄目じゃん、何、コレ、ゲージが赤の時に選択? わかるか。スタッフは男性主人公に恨みでもあるのか?
ひゃー、これは王子の好感度低いのもしゃーないわ。
ってか、なんでこんなに厳しいの? 冒頭で男性主人公は何をやったんだ?
えーっと、キャラページキャラページ、っと。
あー、うぁー
楓子がおっぱいから口を離してけりけりとしてきた。
おっと、飲み終えましたかー?
あー、あー
おっぱいを直そうとすると、コテンとおっぱいの方に口を寄せてまだ飲ませろ、と抗議してくる。
あ、集中してないから怒ったんですね? はい、すいません、おっぱいに集中します。
おっぱいを飲みながら、楓子がおっぱいをぺちぺちと叩いたりおなかをけりけりとしてくる。
「はい、集中しますので、楓子さんも集中して飲んでいただけないでしょうか?」
頭や耳の後ろを指で撫でると、嬉しそうに目で笑ってきた。
さらにこしょこしょと楓子と戯れると、おっぱいから口を離して楓子が笑い出した。
だー、あー、あきゃきゃきゃ、だきゃきゃきゃ
「ご機嫌ですねー、お客さん、ここがいいでしゅかー?」
あきゃきゃきゃ、あきゃきゃきゃ
楓子と遊び、昼寝をし、晩御飯を食べ、おっぱいをあげ、またうとうととして。
気づけば、和文くんがスマホを眺めていた。
「あ、起きた? おはよー、持って来たよ」
そう言って、テレビを指差す。
そちらを見てみると、テレビの横のスペースに袋が置いてあった。
「ありがとう、愛してる!」
袋の中を確認し、ゲーム機とエバシンを取り出す。
どれどれさっそく起動してみるかなー?
と思ったら楓子も起きて泣き出した。
あらあら、ごはんですかー。
*****
……駄目だ、眠い。
一日中ベッドで横になってるのに、なんでこんなに眠いんだろう?
体がおっぱい作ってるからか? おっぱい工場フル稼働だからか?
エバシン、起動させてオープニングだけ見直したけど、駄目だこれ。
とりあえず、王子への手紙を優先しよう。
あ、そういえば、王子に関して恥かいた。王子許すまじ。
ゲームの冒頭見てた時にあったんだけどさー。
「ねぇねぇ、かずふみくん。王子、銀髪碧眼って紹介されてるけど、CG見るとどうみても青色なんだよね。テキストのミスかな?」
実際に鏡で見たときも青い瞳だったもんなー。なんだよ、碧眼ってー。
「……碧眼でしょ? 青じゃない?」
「何言ってるの? 碧眼だよ? 碧の眼だよ?」
「あぁ、碧眼って書くけど、青色の目のことだよ。元々は西洋人風の目って意味だったかな? 違うか?」
「な、なんだってーっ!?」
ぐぐったら、本当に青い目のことだった、はずかちーっ!!
でも、一応緑色っぽいのをさすこともあるみたいだけど、青が一般的みたい。
そもそも碧って海の色? 確かに青で緑だな。難しいな、日本語。
「……あ、もしかして、信号の色をあおって言うの、ここから来てるの?」
「え? 違うと思うけど。それに、『あお』って発音してるから、やっぱりおかしくない? 『みどり』って発音してて青ならその可能性もあるけど」
ということで、完全敗北を喫しました。
おのれ王子ぃぃぃぃ!
少し目が覚めたので、この勢いで手紙を書いてしまおう。
とりあえず、今日のことで伝えることは無いかな? というか、とりあえず攻略本読め、でいいかな?
……なんで攻略本があるか説明したほうがいいかなー?
でも、なんでって言われても、私もわかんないしなー。そもそもなんで入れ替わってるの、ってことになるし。
とりあえず、良く似た設定、良く似た人で未来のことが書かれてるけど、全部は信じるな、って書いておくか。
可能性の一つとして、これを元に調べたり警戒したりしてください、でいいかな?
マジで、全部信じるなよ、と強調しておこっと。
……そうだよねー。王子がエルリスさんのこと本当に好きかもわからないしね。
あー、でもこれが本当だったら信憑性があがるのかな?
そこらへんも自分で判断してもらえるようにお願いしておこっと。
……投げっぱなしすぎるかな?
いやいや、さっきの青信号のこともあるし、多少突き放してもおあいこだ、うん。
*****
ふぁー ふぁー ふぁー
……あー、ハイハイ、おっぱいでしゅかー。
今あげますからねー。
ふぁー うぁー うぁー
「ハイハイ、ごめんねー、またせちゃいましたねー」
楓子を抱っこして運んでからベッドに寝かせた。私も横になり、横を向いておっぱいを出して楓子にくわえさせる。
「今回も添い乳で大丈夫でしゅかー。ママ思いの良い子ですねー。いい子いい子……」
……
……あ、いけない、寝かけてた。
おっぱいから口を離して、楓子も寝てる。
……可愛い寝顔。
「今、何時だろ?」
シャツを下ろして胸を隠しながら時計を見る。
2時、3時? あー、ぼーっとする。
楓子、結構もったんだなー。明け方にもう一回ぐらい飲みたがるかなー?
出来れば目が覚めるまで頑張って欲しいなー……
*****
おはようございます。
朝です。そして王子です。今、私は王子です。
あ、違うわ、俺、王子です。
「んー、気持ち良く眠れたー」
ベッドから上半身を起こしてノビをする。うーん、病院だと動けないから、王子の体も気分転換にはいいなー。
改めてベッドの縁に腰掛け、両足をばたばたと動かす。
いやー、動くっていいねー。
そういえば、痛みも無いな。王子の体は完治したのかな? やっぱり魔法って便利だなー。
医療に関しては現代よりもこっちのが優れてるねー。病気は知らない。
でも、病気も治せそうだな。
そんなことを考えていると、コンコンコン、と扉がノックされた。
「はーい」
「エルリスです。朝食をお持ちいたしました」
「はーい、どうぞー」
扉に向けて返事をすると、エルリスさんの声が聞こえたので入室を促す。
エルリスさんがワゴンを押して部屋に入ってきた。今日は一人だ。
あー、みんなを呼びにいってくれてるのかな? そういえば、もう動けそうだし、別にここで取らなくてもいいんじゃない?
「まだ横になっていてくださいますか? 外傷は治っておりますが、まだ本調子では無いはずですので」
エルリスさんはワゴンをベッドの横で止めると、ベッドに腰掛けたままだった私に一礼すると優しく寝かしにかかった。
大丈夫だろうとは思うけど、まぁ素直に従う。
寝かしつけが終わると、エルリスさんはベッドサイドで跪き、顔を寄せてくると囁くような声で尋ねて来た。
「今日は、カスミ様の方なのですね?」
10/30追記:
すいません、体調崩しておりまして。
11月の半ばぐらいから再開したいと思います。
12/03追記:
あれ? 11月どこ行った?
すいません、年末までに再開します。
あと、エルリスさんの名前間違えてたので直しました。なんか聞き覚えある気がしてたのですが、某7の花売りさんと一文字違いだった……