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10. 王子、大変だよ、王子!

 ふぁー ふぁー ふぁー


 ……あー、ハイハイ、おっぱいでしゅかー。

 あー、うー。動きづらい……


 ふぁー うぁー うぁー


「ハイハイ、ごめんねー、またせちゃいましたねー」


 楓子を抱っこして運んでからベッドに寝かせた。私も横になり、横を向いておっぱいを出して楓子にくわえさせる。

 ……良かった、飲んでる飲んでる。


「今日は添い乳でも大丈夫でしゅかー。ママ思いの良い子ですねー。いい子いい子……」


 ……

 ……あ、いけない、寝てた。

 おっぱいから口を離して、楓子も寝てる。

 ……可愛い寝顔。


「あぁ、しまわなきゃ……」


 シャツを下ろして胸を隠す。風邪引くし。

 楓子もベビーベッドに移すか……


 ……ふっ ふぁー ふぁー


 抱き上げようとすると、びくっと体を動かしてから口をもぐもぐとさせながらちっちゃい手がおっぱいを探す。

 近くに無いと気づくと、また泣き声をあげ出した。


「はいはい、もう、今日だけよ。甘えん坊のかえでこは、可愛い良いこ。 ……大好きよー」


 またシャツをめくって胸を出す。添い乳をするとまたごくごくと飲みだした。

 いっぱい飲んでね。

 そして早く大きくなって、夜中の授乳が必要なくなってね……



  *****



 あー……

 おはようございます。

 朝です。そして病院です。ベッドサイドのベビーベッドには、楓子が寝ています。

 やっぱり日替わりふぁーーあ。

 えーっと、何時だ?

 ピピピピピ、と和文くんのスマホが鳴った。

 あぁ、7時か。


 ピピピピピ、ピピピピピ


 ……楓子起きちゃうから、早く止めてくれないかな?

 ぼーっと和文くんを見つめながらそんなことを思う。

 側にあった新聞を投げつけようかな、と考え出した頃になって、和文くんが起きてタイマーを止めた。


「おはよう、かずふみくん」

「おはよう」


 右腕で光をさえぎりながら和文くんが挨拶を返す。

 二度寝諦めて起きなさい。



  *****



 朝、さすがに今日は会社に行く和文くんを病室から送り出した。

 ついでに、家からエバシンとゲーム機を持ってくるようにと、攻略本を買ってきてもらえるように頼んだ。

 その後、楓子におっぱいあげたりあやしたり、テレビ見たりスマホいじったりしてたらお昼になった。

 そういえば、新聞が大量にベッドサイドにおいてあった。朝、和文くんに聞いたら、私、というか王子が読んだらしい。

 こっちの世界の新聞読んでわかるんだろうか?

 看護師さんに、前日の新聞を借りて部屋で読めないか聞いたところ、順番待ちになることもあるが構わないらしい。

 明日は購入ではなく借りて読んで貰おう。


 楓子におっぱいをあげ寝かしつけたら一緒に寝てた。

 起きたら、和文くんがいた。


「あぁ、起こしちゃった?」

「ううん。あれ? もうそんな時間?」

「いや、まだ二時半。会社は午後休にしてもらった。家に帰る前に、荷物まとめようと思って」


 そう言って和文くんが紙袋を掲げた。和文くんの着替えとかが入っているらしい。

 一応病院でも洗濯出来るけど、せっかくなので家でしてくる、って。


「あぁ、これだけ買って来たよ。『大丈夫』、のところでよかった?」

「うわっ、分厚! ありがとう、かずふみくん、大好き!」


 テレビの前のスペースにエバシンの攻略本を置いてくれた。あけるのはあとにしよう。

 楓子も起きてじたばたとしだしたので、二人で笑いながらあやした。

 楓子もたくさん笑った。赤ちゃんの笑い声って、なんでこんなに幸せになるんだろう?

 それとも、楓子だからかしら?

 うちの娘は私たちを幸せにする天才ね!



  *****



 和文くんは一度家に帰っていった。

 家のことを色々としてくるので、遅くなる予定らしい。一応、面会時間内には来るそうだが。

 ……いつにも増して優しいな。気も利くし。

 怪我するのもたまにはアリだな。

 さて、楓子も寝てるし、攻略本でも読みますか。私はこの本のビニールを破くのが結構得意だ。

 爪でー、ここをー、こうしてー、良し良し。


「どうしようかなー、あまりネタばれ見たくないけど、そんなこと言ってる場合でもないか。とりあえず、王子のところ見るか」


 えーっと、キャラページのー、王子のところはー、と、ここか。

 あ、サブNPCのところにエルリスさんとクラフト先生もいるな。二人とも王子シナリオの時だけの出演なのか。

 イベントスチルもあるのねー。

 ……えっ!?

 エルリスさん、王子の初恋の人なのっ!?

 って、3つ違いっ!? もっと上かと思った、だって落ち着いてるし大人っぽいし!

 あれでまだ未成年かよ、マジかー。私、負けてるじゃん。

 ……やっべ、スタイルも完全に負けてるわ。今度揉ませてくれないかなー?

 ほー、男女でやっぱりシナリオ違うんだ。ってことは?

 男女で裏表やってさらに真ルート2本? 1キャラにつき、6ルートあるんだ? すごいな、エバシン。

 こんなにテキストって突っ込めるもんなの?

 えーっと。

 女性なら、エルリスさんとの失恋を慰めてからの婚約ルート。

 男性なら、王子に協力してエルリスさんとくっつけるのか。

 ……第二王子がメイドと結婚していいの? あ、妾?

 王子ひどい奴だな。これだから王族ってやつは。

 あ、違うわ。元・侯爵の娘って書いてるな。なんだ、没落でもしたのかな?

 ドレスも美しいしお金かかってそうだし、復興したのかな? それとも別の貴族の養子にでもなったのかね?

 これは、さっさと攻略記事に行って詳細を読みますか。

 ……ん? あれ、なんか変な文字が目に付いたような?

 クラフト先生の『犯人』って何だ?

 えーっと……

 え? 砦が崩れたのって、クラフト先生の罠なの?

 黒幕は、エルリスさんの家族を罠にはめて没落させた伯爵? あ、このダンディなおっさんか。

 ってか、黒幕のおっさんかっこいいな。おっさんじゃないな、おじ様だな。

 ……

 ……いやいやいやいや。

 ……えっ?

 とりあえず、攻略記事に行って、もっと詳しい状況を……

 って、攻略記事薄いな!? いや、ページ数は多いんだけどさー。

 各選択肢の効果と結果。その後の分岐。

 あと、ベストルートの選択肢一覧しか載ってないよ! いや、そういうので十分だけど! 

 この記事だけじゃ背景まったくわかんないよっ!?

 あー、プレイするしかないのかー。早く和文くん持って来てくれないかなー?

 キャラ紹介とイベントスチルで想像するしかないか。

 ……無理だよ。

 まぁ、とりあえずは先生に気をつけるか。砦でまだなんかイベントあるのかなー?

 んー、森には入りそうな気がするなー? ここでもなんかあるのかな?

 選択肢からはわかんないなー、これ? 普通に戦闘はあるけど。

 おっ、なんか結構いいアイテムが手に入るっぽい。念のため、マップ覚えとこっと。

 攻略本、持っていけたら楽なんだけどなー。

 あ、王子にも読んでおくように書いておくか。

 ……自分のことが書かれてる本って、超嫌だな。

 あ、それに黒幕が、とか原因が、とか書かれてるけど、あっちの世界の王子もエルリスさん好きなのかな?

 好きなんだったら、コレ見て逆上しないかしら?

 ……うーん、悩むな。とはいえ、見てから判断してもらうか。

 早まるな、とは書いておくか。この可能性を考えつつ行動して、裏を取ってもらえるようお願いしよう。そんなんでいいかな?

 とりあえず、メモを残すか。王子が自分でなんとかするだろう。

 えーっと、書くものとメモ帳的なものは……

 あれ? なんだ、この手帳、見覚えないな?

 えーっと、あ、王子からのメモだ。

 一日の行動を記してくれてるのか、まめだな、王子。


「!!」


 王子、○ンジェリーナのモンブラン食べたのかっ!?

 ちくしょう、忘れてた! 和文くん、残り全部くれたのね、優しいな、もうっ!

 少しクリームが固めだったが美味しいな、ってそれ冷蔵庫から出してすぐに食べるからだよ!

 少し外に出しておいておけば丁度よくなったのにっ!!

 あ、王子、もうスマホの使い方教えてもらったんだ。

 おっと、そうじゃない。とりあえず、私からの伝言とメモを残しとかなきゃ。

 ……あ、王子の口調、調べてないや。まぁ、それはゲーム来てからでいいか。

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