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〈五話〉朧げ

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 新月であり曇り空で星明りもないというのに小高い丘の上は異様な明るさがあった。大きな屋敷が炎に包まれ上へ上へと紅蓮の炎が立ち上り妖艶に動き、火花を辺りに散らし暗闇を照らしている。そんな中、まだ火の手が来ていない屋敷の外に数人の人影があった。


 「お父様、私も残ります」


 「ティア、聞き分けのないことをいうな。私たちは十分に生きた・・・・ここで死んでもかまわない」


 「お父様のいう通り、ティアあなたは生きなきゃいけないのよ」


 「いやっ、分かりたくありません」


 ティアに何かを言い聞かせるよう両親の二人はいう。火の中を通って来たのか三人の着ている服はすす汚れてる。両親は見たこともない今まで見たこともないような笑みを浮かべており、それを見てティアは一層に不安になり強く首を左右に振り拒否する。二人は何も言わずしゃがみティアを強く抱きしめ髪を優しくなでる。


 「・・・・もうすぐここにも敵が来ます」


 「ああ、分かった」


 三人から少し離れた位置に、鎧を身に纏い剣を抜いて敵を警戒している騎士がいった。鏡のように顔が映るくらいに磨きあげられた鎧は、今は光を反射することはなく返り血で真っ赤に染まり、剣にもベットリと血油が着き剣先からポタポタと垂れている。


 「ティアを頼んだ」


 「・・・・はっ」


 「この子を最後まで頼みましたよ・・・・・これを持っていきなさい」


 騎士は自分のかはたまた敵の返り血がベットリと付いた顔を歪ませ答えた。そしてティアを抱きしめながら母親も立ち上がり、騎士の手を取り小さな袋を握らせる。騎士は中身を見ずまた確かめようともせず、静かに頷き袋を体と鎧の間に押し込む。


 「前にこれが欲しいと言っていたわね」そう言いながら、自分の付けていたネックレスを外しティアの首につける。大きな宝石がはめ込まれてあり海のような青く、深い吸い込まれそうな不思議な色をしている。


 「何か困った時は宝石を売ってお金にしなさい。その時は必ずバラバラに砕いて売るのよ

分かった?」

 

 母親がいつも大事にしていた宝石を自分の首に付けられたことに驚いた瞬間、騎士が素早くティアを抱き上げた。騎士はそのまま父親が連れてきた馬に飛び乗る。


 「いやっ離して! 離してよ!?」


 ティアはそういって暴れるが、子供の力などたかが知れている。いくら暴れようとも騎士はビクともしない。騎士はティアを馬の首と自分の間に座らせ紐で自分と痛いぐらいに結びつけたが、ティアは痛がらずに「離してっ! いや、行きたくない!」と泣き叫びながら届かない手を必死に両親に伸ばす。


 騎士は右手に剣を左手には手綱を強く握りしめ、再び自分の主人たちを見つめた。燃え盛る炎に照らされた二人は何も言わず微笑みながら静かに頷いた。はっ、と騎士はかけ声を出し、馬を強く前進させた。荒く上下に動く視界に映る両親にティアは届かない手を伸ばし再度叫ぶ。


 「降ろしてっ、お願い。お願いだから、降ろしてっ!?」


 「申しわけありませんが、それは聞けません」


 「どうしてよ・・・・どうして! このまま、このままじゃ、お母様もお父様も死んじゃうよ!?」


 「それがお二人の願いだからです、分かってください・・・・・」


 「でも、でも――――――」


 何か言おうとしたその時、暗闇の中から無慈悲で先端が鋭利な()()()ティアの口を封じるべく空気を切り裂きティアの体に命中した。最初ティアは違和感を覚え思わず体を見下ろすと、ちょうどお腹に深々と長い棒が、一本の矢が刺さっていた。そして自分の血がじわじわと外へと漏れ出し、服を赤く染めていた。


 見た瞬間、激痛がティアを襲い体感したことのない痛さに悶絶する。騎士が話しかけてきたがよく聞こえない。今まで全く眠くなかったにもも関わらず、睡魔に似た何かがティアを襲う。徐々に動きが遅くなり叫ぶどころか腕を動かしているのかさえ分からない。


 瞼が閉じる最後にティアが見たものは燃え上がる自分が育った家と、炎に照らされ両親に鈍い光を放つ剣が振り下ろされる場面だった。



 ここはどこ? そう声に出したつもりだったが、唇がかすかに動いただけだった。体の感覚があるかないかもわからない、まるで夢の中にいるかのようにいるようだ。ぼやけてハッキリとわからないが、視界に映る天井は見知った天井ではないことは分かった。


 鉛が流し込まれたように重い頭を動かし、隣を見ると窓がありそこから日光が差し込んでいて、陽の明かりと温かさが肌で感じられた。普段何ら思わず頬が緩む柔らかい光と暖かさは、今の時間が昼間という事実と自分のいる空間が夢ではなく現実ということを伝えていた。


 「(これは夢じゃない、じゃあお父様とお母様は・・・・・)」


 ティアはいつの間にか目の端から涙が流れ、涙が肌を伝う感覚が無情にも現実ということを裏付け、止めどなく涙があふれだす。どれくらい泣いていたのだろう? ふと気づくと涙がふき取られていることに気付いた。優しい手つきで涙を拭くのと同時に話しかけられていることに気付いた。


 「お――――かあ、さま?・・・・・」



更新が滞り申しわけありませんでした。次話は1~2週間以内には投稿したいと考えております。


少しストーリーに関係ある修正を行いました詳しくは[『平成が終わり平和も終わりを告げる』に関して(一)]に記載しています。

それと本編に関係する設定集的な作品や縦読み用の作品を投稿していますので、よろしければそちらもお読みいただければ幸いです。


5/9 題名を「目覚め」から変更


泣く子も黙る、という言葉(格言?)がありますよね。著者は最近までナクコモダマル、という何か人や組織という意味だと思っていました。いや、文字で見れば一目瞭然だけど言葉だけで聞くと分からない・・・・ですよね。



今話の評価:4/10

小修正

中修正 5/3 5/9

大修整 2/14



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